セレンディピティ日記

読んでいる本、見たドラマなどからちょっと脱線して思いついたことを記録します。

映画鑑賞:クリント・イーストウッド監督『ジャージー・ボーイズ』

2014-10-02 18:30:15 | 文化

アトピーのせいで何カ月も書いていなかった。おっと、これは言い過ぎかな。書き込んでいる今もアトピーなのだから。僕の場合は両手とも指の症状がひどい。指という感覚が鋭い部分が痛いのは集中力が落ち着かず、本を読むこともましてや文章を書くこともままならない。ではなぜ書き込むかと言うと、昨日、クリント・イーストウッドが監督をした『ジャージー・ボーイズ』を見てきたからだ。

あ!昨今の経済情勢からなんか書きたがっていると思っているのではと考えた人は残念でした。今さら経済情勢について得意げに何かを言う気にはならない。経済情勢の理解については「週刊ダイヤモンド」に毎週載っている野口悠紀雄さんのコラムを読むことをお勧めする。

さて俳優としての実績は脇においても、クリント・イーストウッドという人はなんと才能のある監督だろう。監督し始めてからいくつも作品を出したが、ジャンルがみんな違うがそれぞれにいい作品に仕上がっている。さすがリバタリアン。

映画はフランキー・ヴァリという歌手とその仲間のザ・フォーシーズンズというグループが世に出て成功して挫折する実話の物語。僕は「ザ・フォーシーズンズ」とかヒットナンバーとかの事前の情報にはピントこなくて、ただただクリント・イーストウッドが監督だという点が興味の中心だった。もともと音楽には詳しくない人生だったからね。ところが映画の前半に「シェリー」という曲が出てきた。あ、これは知っていると思った。でも僕は洋楽に親しんでいたわけではない。僕の学生時代より以前は、日本ではアメリカのヒットした曲を日本語の歌詞をつけて日本の歌手やグループが歌っていたのが流行っていた。フォークソングやグループサウンズが流行る前だから高校より前かな。「カレンダーガール」とか「ヘイ、ポーラ」(?)なんて曲もあった。そんなわけでこの「シェリー」も洋楽好きでなくても家にテレビがあれば普通に聞いたことがあるだろう。

でもそれ以上に驚いたのは、ザ・フォーシーズンズのメンバーのひとりが、それ以前にボーリング場で働きながら「シュシュ」という曲を作曲していたということ。なんとこの曲はタモリの深夜番組の「タモリ倶楽部」(だったと思う)の女性のお尻が並んで出てくるオープニングに使われている曲ではないか。あの曲の出自がわかった。

映画は1951年から始まる。ちなみにこの年は僕が生まれた年。そのころフランキー・ヴァリは床屋の見習い。歳は16歳ぐらい。こわもてでもないのに町のマフィアの親分に可愛いがられている。歌好きでうまい事は町のみんなが知っている。このころのアメリカの田舎町では大概同じ町で一生を過ごす。町から出るのは、軍隊に入る、でもこれは死んでしまう。ぶっそうでまさかだが朝鮮戦争を念頭に置いているのかな?二つ目はマフィアに入る。でもこれも死んでしまう。三つめは有名になる。フランキー・ヴァリは二つ目と三つめの間にいる。当時は大学へ行かない者はこんなものだろう。ヴァリは窃盗の手伝いみたいなこともするが、お目こぼしでつかまらなかった。主犯の友人は6カ月の刑務所暮らし。この町で犯罪者も警官も判事もみんな顔見知りみたいだ。やがてヴァリは町の酒場で歌っているグループに加わる。

この映画は、ヒットしたミュージカルの映画化らしい。なんかイーストウッドの独創性が薄れるような話だが、イーストウッドはフランキー・ヴァリや他のメンバーにあらためて当時の様子などを聞き取り調査して正確を期したらしい。このため2013年の日本公演はイーストウッドへの協力のため延期になったとのことである。

映画の中で登場人物がときどき映画を見ている観客に語りかけるが、これもミュージカルのなごりであろう。だからこの映画は実話が元だが、実録物みたいなリアリズム映画ではなく、楽しい映画である。

ところでこの文章を書いたのは以上のことを書きたかったからではない。それはこの映画に「Can't Take My Eyes Off You」(「君の瞳に恋してる」)が出てきたからだ。映画でこの曲がでてきたとき、あ、この曲はフランキー・ヴァリだったけ、と思い出した。再度いうが僕は洋楽にも音楽にもとくに趣味はない。だけどふと聞いたりまた口ずさんだりした曲が非常に気になることがある。そうした曲はアップルストアで買ったりAmazonでCDを買ったりする。そうしてiPhoneやiPadに取り込んで、保養施設で友人とマージャンをするときなどは流したりする。他のお客がいるときは嫌がられるからできないが、仲間うちだと「今日は音楽はないの?」だと言われと喜んで流す。「Can't Take My Eyes Off You 」はパソコンのiTunesの中にはFrankie Valli & the four Seasones のものとSheena Easton のものと The Boys Town Gang のものの3つが入っているが、iPhone とIPad には The Boys Town Gang だけが入っている。

ところで経済情勢について書かないといったけど、経済の本に面白いことが載っていたから書いちゃおう。今『国債パニック』という本が出ている。著者はゲーム理論の啓蒙書を早くから出している逢沢明氏だ。紙でも出ているが僕はKindleの電子版で買った。紙で買ってもすぐ自炊するから電子版で買ったほうが良い。たぶんメモリーも電子版の方が少ないはずだもの。

さて何が面白いかといえば、この本には日本財政は破綻しないという意見の人の考えを紹介している。ほら日本国債は日本国内でほとんど買われているから大丈夫というのだよ。逢沢さんは本のなかで、この大丈夫論者らしき文章を引用する。確かにあの人たちの議論だ。読み始めて、ふとこの引用のパラグラフには引用元が書いてない。もしそうした人の意見の要約なら、そうは言っていないと突っ込まれる。また引用だとしても一部を取り出しては正確ではないと突っ込まれる可能性がある、人ごとながら心配になった。僕は逢沢さんと同じ側にいるが論争の作法として不必要に突っ込まれ事は避けたほうがいいという意見だ。ところがパラグラフの後の文章を見て笑ってしまった。あの引用は内容的には現代のリフレ論者の意見そのものだが、じつは太平洋戦争直前にだされた大政翼賛会推薦の『隣組読本 戦費と国債』を現代表記に変えたものなのだ。 天が下に新しき事なし。つねに愚か者が欲望のため同じ過ちを繰り返す。もちろん戦時国債も大政翼賛会のお墨付きにもかかわらず破綻すべくして破綻した。我が家にも紙くずとなった戦時国債があったような気がする。