セレンディピティ日記

読んでいる本、見たドラマなどからちょっと脱線して思いついたことを記録します。

読書ノート:中川八洋「女性天皇は皇室廃絶」その3

2006-03-07 23:13:40 | 文化
さて中川氏の主張の内容の検討に移ろう。といっても2章までしか読んでないけど。
自分の陣営以外の者の善意を認めないという中川氏の共産主義者と共通する思考パターンはどうかと思うけど、氏の主張がはっきりとしていて徹底していて根拠も示している点は、異なる考え方や知らない知識が増えるので、楽しい。

ここまで読んだ氏の主張は、一つは、女性天皇は天皇制廃絶につながるということ。たしかに女帝の夫探しは困難だろうとおもうが、サポートの方法によれば不可能ともいえないと思うが、これ以上は断言できないと思う。つまり中川氏も断定しすぎだと思う。

二つ目は、旧皇族のすべての早急な復帰ということ。他の女性・女系天皇反対論者は、それもありうるとしながらも早急な結論は避けている。この点中川氏は徹底しているといえる。旧皇族の復帰に他の識者が逡巡しているのは国民的な理解が得にくいことだと思うが、その論拠に中川氏一つずつ論拠を挙げて反論する。

A.いったん臣籍降下したものが皇族に復帰できないのではないか。
これについては、中川氏はいくつかの歴史上の実例を挙げて反論する。これは中川氏に軍配。しかし中川氏は数十件あるだろうというが、天皇への即位を視野に入れた場合のみだという気がするのでそんなに多くはないと思うが。

B.旧皇族は天皇家から親族的にはるかに遠い縁になっている、つまり世間的な常識では他人ではないか。
これに対して中川氏は、終戦時に臣籍降下した旧皇族はすべて伏見宮家系で、現天皇家は伏見宮家系の傍流の閑院宮家系である。伏見宮家系は閑院宮家系と同等かそれ以上の家系であるから天皇になっても問題はない、という。
これで気が付くのは、中川氏は天皇という存在の個人的人格的側面を一切見ないし問題にしないという点である。歴史的にみても当然に天皇も人間であり、自分に近しいものに位を譲りたいと思いそれが乱や変というものを起こしてきた。今上天皇または皇太子が愛子内親王を即位させたいかは疑問だが、明治大正昭和と続いてきた流れを、それらの先帝達の子孫でないものに譲ることによって、途絶えさせることは忸怩たるものがあると思う。国民的感情は、普通の相続と同じように現当主の気持ちを重視するものだ。中川氏のようにあっちのほうがもともと本家だからかまわないというものではない。

C.旧皇族は50年以上民間人の生活をして生活習慣が違ってきている。
これにたいして中川氏は、旧皇族の家系には幼い子どもが何人もいる。今から皇族として生活すれば現皇太子の次の天皇即位が日程に上がるときには充分に皇族生活をしたことになるというもの。
ここでも、中川氏の特徴がでた。人間の人格的側面をまったく捨象してみない。今すべての旧皇族を皇族に戻すと、無職の人はいいだろうが、サラリーマンをいる人は当然に退職しなければならない。それが好きな仕事であっても。また皇族がふえてもそれにふさわしい職を与えることができるのか。皇族をすべて自衛隊員にするわけにはいかないだろう。また皇族にはその地位にふさわしい体面を保つため国家が多額の支出を強いられる。昔中国の王朝では皇族が増えすぎ国家の財政を圧迫したことがある。側室制度がない現代日本ではそんなに増えないにしても旧皇族で複数の男子をもつ家がいくつかあるから、一般国民とちがって所得制約がないから皇族が増えていく可能性もある。天皇制は安泰になるかもしれないが、現皇室と直接の血縁のない人たちにたいするそうした支出は理解がえられないだろう。

以上が旧皇族復帰について中川氏の主張の論拠と僕の意見を述べた。ただこのほかに気になるのは、中川氏がやたらと北朝からの歴史を強調する点だ。まるで日本で王朝の交替があったごとくの姿勢である。一見するとそれ以前は旧王朝と無視しているかのように思えるが、実はそうではないだろう。朱子学的大義名分イデオロギーに捉えられた者にとっては南朝こそが正当な皇統だ。中川氏も当然にそう考えているはずである。しかし現皇室は北朝系である。だから意図的に南朝に触れずに心の中で封印しているに違いない。もしあきらかな南朝の皇統を継ぐものが出現したのなら、臣八洋は真っ先に駆けつけて北朝討伐に乗り出すにちがいない。でもほとんどの国民は自分たちが生きて見てきた現皇室を支持するだろう。イデオロギーにとらわれた左右のものだけが人間を手段とし人格的側面をみなくなっていく。

読書ノート:中川八洋「女性天皇は皇室廃絶」その2

2006-03-06 23:39:53 | 文化
中川氏は、女性天皇は天皇制の廃絶につながるという。その理由は他の反対論者のいうようなY染色体などという理由ではない、ずばり女性天皇には夫の来てがいないからだということ。この点については中川氏のいう共産党系の学者と中川氏は認識で一致しているらしい。中川氏はだから反対し、天皇制廃絶主義者はそれに賛成するというわけだ。
中川氏は、女性天皇に賛成するものはすなわち、天皇制廃絶をねらっていると断定している。中にはあきらかな民族系学者で天皇制廃絶主義者とは言いにくい場合は学問的能力が低いと断定する。(能力の低い)民族系学者以外の者で明らかに共産党と肌合いが合うはずのない者はアナーキストか全共闘で、それ以外の者は共産党系ということになるらしい。
中川氏が女性天皇は天皇制廃絶につながるという意見を持つのはよい。しかし現在及び未来の文化社会的及び天皇家の親族的条件のもとで天皇制を安定的に存続させるために女性天皇そしてその後の女系天皇も考えている人もいるということは認められないのだろうか。中川氏の思考パターンは共産主義者の思考を鏡で映したようにそっくりだ。右と左が違うだけだ。
ところで中川氏のこの本は徳間書店から出版されている。なんか意味深だな。徳間書店は亡くなった徳間康快氏の出版社だけど、徳間康快氏は読売新聞の渡邉恒雄氏の共産党時代の友人で元共産党員。とすると中川氏は偽装した共産主義者で一連のファナティックな言動は保守陣営を混乱させ知識人を離反させる共産党の高等戦術か。そうだとしたらおもしろすぎる。冗談はさておき、徳間書店といえは、相対性理論は間違っているという本を何種類も執拗に出し続けているところだ。僕は相対性理論についてよく知らないけど、高級なトンデモ本の出版社ということになっている。編集者はこの本もトンデモ本のつもりで企画したのかな。
次回はまじめに、旧皇族の皇族復帰の主張を検討するつもり。

読書ノート:中川八洋「女性天皇は皇室廃絶」

2006-03-05 22:41:58 | 文化
本を読んでいて、面白いと思ったことなどを読み終えたら読書ノートとして書き残そうと思っているうちに、次の本を見つけてそれを読み始めてしまって、結局とっても興味深い本なんだけど読書ノートを書いていない本が何冊もある。つまり読み終えないで次々と他の本に入ってしまったということだ。でもさ、これは僕のブログは他の人が見るかもしれないことを想定していても、僕による僕のための読書ノートなのだから、完結した形で書かなくても、日々読みかけのところを記録してもいいわけだ。
そーんなわけで、まだ2章の途中(全8章)でページにしても全体の4分の1しか読んでないけどノートすることにする。
で中川八洋さん、この人の本はおもしろいなあ。エキセントリックで、アナクロニズム的な用語に特徴があり学者の本としては他の人の本では味わえないおかしさがある。でもその半面、主張がはっきりとしていて、その根拠をはっきりと述べている。僕は自分と違う意見を知るのは好きだで、中川氏のようにその論拠をはっきりと書いてあるのは好きだ。
でもそれは中川氏の学問上の主張の部分についてだけ。これが論敵自体を描写するにおいては「エエ!」という感じ。この人によると、小泉首相は天皇制廃止論者で、有識者会議は共産軍だそうだ。そして有識者会議が意見を聴取した8人の参考人のうち5人は共産党系だそうだ。宗教学者や元最高裁判事御も共産党系に分類される。とても本当には思えない。識者の分類でも、かなり違う気がする。
ユダヤ陰謀説というのが欧米ではあるけど、中川氏の者は共産党陰謀説というべきものか。共産主義の妖怪が徘徊しているらしい。
時間もおそいので、学問的部分については後日。