セレンディピティ日記

読んでいる本、見たドラマなどからちょっと脱線して思いついたことを記録します。

名古屋市選挙管理委会の審査結果がもたらすもの

2010-11-25 21:28:48 | 名古屋
僕の予想に反して、名古屋市選挙管理員会は市議会リコール署名を不成立と発表した。僕は11月9日に「自分の意思で確かに署名した人が十分いるのに、形式的に瑕疵があるのでと何万人もの署名を無効にしてリコール署名は不成立としたら市民の怒りは爆発する。そうなるは来年の統一地方選挙での跳ね返りがおおきくなって議会側に不利になる」と書いた。だから市議OBの多い市選挙委員会は審査期間の延長により住民投票とリコール選挙の日程を遅くしたことで満足してリコール署名は成立とさせるのがベターのはずである。

選挙管理員会はそれほど馬鹿なのか、と思った。しかし考えてみれば選挙管理員会が審査期間延長の理由としたのは「『受任者名』欄の空欄の数の署名簿が多すぎる。請求代表者以外で署名収集ができるのは受任者だが、受任者が集めたとしたら署名簿の『受任者名』欄に記入が必要」というもの。だから照会文書で自分が確かに署名したが「受任者に署名を求められた」と答えた22,900人分は「収集方法に問題がある」として建前上でも無効にせざるを得なかった。これは市議会と選挙管理委員会にとっては痛しかゆしだろう。不足書名分は12,004人分だから、有権者の意思としてはリコール署名の成立は確かだ。だから来年四月の市議会選挙での跳ね返りが怖いはずである。横井市議会議長は、テレビでのコメントでひたすら「河村さんがかわいそう」というばかりでなんとか市民の怒りの矛先をかわそうとしている。市議会自民党は「市民の意思を尊重して自主解散を目指す」とこれも逃げ腰である。

これに反して前の河村市長のブレーンでけんか分かれした後房雄名古屋大学院教授のブログはかなり悪意に満ちている。ざまあ見ろと言わんばかりに、「規定数に届かなかった以上不成立は当然のこと」と市民目線の政治学者らしからぬ発言だ。無効署名の数が多かったのは主として選管によって無効にされたというべきなのだが、後氏は収集者側の「組織的不正」と言っている。確かに無効署名のうち900余の署名は「署名していない」と回答したものでこれは当然に不正なものだが、これは収集者による不正ではない。一般風潮として署名には家族の名前も当然に書いてしまうことがある。職場にいたとき、よく私立の保育所や高校に子どもを預けている人から署名簿が回ってきた。また組合関連での署名もあった。そんなとき職場の人間は自分の名の他に家族の名前も書いていた。僕は個人の思想は尊重する主義なので自分の名前だけしか書かなかったし、内容によっては署名もしなかったけど。だから署名する人が案に家族の名前を書くことが多いのである。街頭署名の場合2人分続けて書いたなら収集者も気づくけど、別の日にまた通りかかって「そうだ河村ファンだが外出できない父の名前も書いておこう」と書いたのなら収集者はどうにもできない。だから後氏が「組織的不正」と発言するのは常軌を逸している。

元々ユーロ・コミュニズムにしろコミュニスト系列の後氏が、自由主義系列と思われる河村氏のブレーンになること自体が間違いだった。民主党系の学者だから民主党の代議士からの転身の河村市長のブレーンと大かた民主党首脳部か仲介して河村市長につけたのであろう。でもミスマッチだったので早晩袂を分かつ運命だった。小さな政府がいいと思っている自由主義者が、公務員の待遇がいいなら国民全員が公務員になればいいと思っているコミュニストと会う筈がないもの。ちなみに後氏は議員に市幹部をやらせる議院内閣制の地方版の推奨者らしいが、片山総務大臣が言うように議会と首長が癒着してチェック機能が働かなく危険がある。おそらくには民主集中制あるいはロシア革命のソビエトという議決機関が執行機関を兼ねるという発想があるのだろう。

ちょっと誤解のないように言っておくと、僕は公務員の給料が安ければいいと思っているわけでない。もちろん危険の多い全国の漁業従事者の平均年収が公務員のへいきん年収の半分ときくと公務員であることがつらくなるし、阿久根市長のいう「市内の新築の家をたてているのは公務員だけ」という発言についても正しい社会の在り方ではないと思うが、僕の考えは2009年4月16日に「市職員の給料考」書いたように高い安いが問題ではない。そのとき書いたのは「したがって市職員の給与についてそれが世間の被雇用者全体の水準より高いならば、それだけの効用を市民に返せていることが絶対必要条件だ。」ということだ。

ところで後氏は今度民主党が擁立して県知事選挙にでる元愛知県総務部長の御園氏のブレーンになるそうだ。保守的な愛知県政の中枢にいたがご都合主義的に今回民主党にすり寄った御園氏と後氏のコンビは会うのだろうか。御園氏のうしろ(後)についたのは守護霊か疫病神なのか。

きのうハリー・ポッターを見に映画館にいったところ、ロビーで中高年の婦人2人が大村候補の話をしていた。河村市長が応援するから大村候補に投票しようかしらと言う話。市職員の間と市民間の間では様子が全く違うので市職員は状況を誤りやすい。支持団体の構成員の多数が河村支持になっている公明党や後援会からの反応がある自民党はすでに政治のリアリティに気がつき始めている。民主党も遅ればせながら不安になってきているが対応能力が低い。一番政治リアリティに乏しいのは政治学者の後教授であろう。

そんなわけで、民主党の対応能力の低さからみて、そして今回の選挙管理委員会の決定が河村陣営の大村氏にエネルギーを与えることを考えると、愛知県知事選の当落予想は、本命大村、対抗重徳、穴御園、以下は前回通りとしよう。