映画を見に市の中心街に行くと当然のように何軒か書店に寄る。すると何冊か興味深い本が見つかってしまう。無職で失業保険もなく(公務員には失業保険はない)年金もまだでない身でこう頻繁に出費するのはいかがなものか、と言うことになるのだがその本の内容によっては希少性が推測されるわが余生の世界観や生き方がかわる可能性もあると思えば買わないではいられない。
昨日買った本で面白い本があった。東洋経済新報社の『なぜ政府は信頼できないのか 寓話で学ぶ経済の仕組み』だ。アメリカのピーター・D・シフとアンドリュー・シフという投資アドバイザーが著者で原題は『HOW AN ECONOMY GROWS AND WHY IT CRASHES』だ。「経済はどのように成長して、なぜ破綻するか」というのだろう。著者のピーター氏は2008年の経済危機を予言したことで有名だが、実はこの本はその素材を25年以上前の父親のアーウィン・A・シフ氏の『How an Economy Grows and Why It Doesn't』から取っている。この父親の本はオーストリア学派経済学のカルト的入門書になったそうである。ちなみに反所得税の闘士であるアーウィン氏は80歳をこえた現在も連邦刑務所に収監されている。ようするに条文上では自衛隊が違憲と見えるように、所得税はアメリカ合衆国憲法の条文上では違憲に見えるのだ。25年前の本が「・・なぜ成長しないのか」で、この本が「なぜ破綻するか」なのは、時代の反映であるとともに2008年危機を予測した息子のピーター氏の自負もあるだろう。
であるからしてこの『なぜ政府は信頼できないのか』も日本におけるオーストリア学派経済学の一般向啓蒙書に加えられることになる。そうそうこの間示した本とこの本の他にセルジョ・リコッサ『超ブルジョアがこの世を救う』(中央公論新社)もオーストリア学派だと思う。内容はそれらしいのだが本文にも訳者あとがきオーストリア学派のことは見当たらない。しかしWikipediaを見ると、イタリア語だがどうやらリコッサ氏はイタリアの経済学事典にはオーストリア学派に分類されているらしい。勿論イタリア語は読めないがそれらしい単語をつなげるとそう読める。
『なぜ政府は信頼できないのか』は昨日買って、今日の午前中に3分の1まで読んだ。明日には読み終えるので、それからまとめて読書ノートを書けばよいと思われるかもしれないが、今書いてしまうのは他にもいい本を見つけたから。その本はアダム・ファーガソン『ハイパーインフレの悪夢』(新潮社)だ。
『なぜ政府は信頼できないのか』を読むと、ケインズ派を始めとする現代の経済学の主要な流れが健全な経済感覚からはなれた異様なことを主張していることがわかる。彼らは収入の少ない若者が見栄での自動車を買わなくなったのはデフレを進めると非難する。でも健全な庶民感覚からすれば若者の行動がマクロ的にもミクロ的にも正しいと思う。東日本大震災で被災地以外の人が自粛するのはよくないと多くの経済学者が言うけど、自粛して余ったお金を銀行に預金すれば復興資金の原資になるのではないのだろうか。ようするに人びとは本能的に正しい行動を知っているのだ。
そうそうデフレを不景気と同一視して毛嫌いする経済学者がいるが、この本では生産性が上がれば価格が下がるのは当たり前と書いてある。近代でも長い期間社会が経済的に発展しながら商品の値段を下げてきた歴史がある。いま祖父の世代に聴くと昔は物価が安かったというが、祖父の世代がさらにその祖父の世代に聴いたら昔は物価が高くて庶民に買えない物が一杯あったというだろう。ちなみに水野和夫さんか長谷川慶太郎さんによると、世界が戦争経済ぎみだとインフレで平和だとデフレになる。その理屈はよくわかる。
え!無駄な支出はマクロ的にもミクロ的にも意味がないというお前がこの間iPadを見せびらかしていたって?そうだった。いくらぐらいと聞かれてケースも入れて5万円以上したと言ったっけ。そして勤めているときは月給の額を考慮して決めるが、今は預金残高を考慮しているのでわりと気軽に買ってしまう、と言ったっけ。それも真実だけど、本当は能力の衰亡を含む余命を考慮しているのだ。この文もiPad上のPagesで書いているからまんざら無駄な出費でもない。
かわって『ハイパーインフレの悪夢』の方はサブタイトルは「ドイツ『国家破綻の歴史』は警告する」のように第一次世界大戦後のドイツのハイパーインフレーションの記録だ。イギリスの歴史家が駐ドイツイギリス大使館などの当時の報告書も参考にして1975年に出版したものが、近年にアメリカの有名な投資家が推奨したためまた再版されたものの翻訳だ。サブタイトルから読み取れる本の内容にも興味をもったが、一番目をひいたのは、帯に池上彰氏が「ドイツの経験は反面教師として役に立つはずです」と書いていることだ。さらに帯には「日本が背負う多額の震災復興資金。財政秩序と金融節度が限度を越えたとき、貨幣は価値を失い、国は死ぬー。」と書いてある。これがこの本を今日本で出版する意義てあろう。さらに表紙を見ると池上彰氏が解説を書いているではないか。とすると、僕の推測では池上彰氏がこの本の翻訳出版を出版社に強く勧めたのだろう。
震災復興資金の捻出をめぐってリフレ派がこれを機に国債の日銀直接引き受けなどでお札をジャバジャバ印刷してインフレを起こそうと画策している。リフレ派の主張は日本はデフレだからお札ジャバジャバでもハイパーインフレにはならなくてちょうどいいインフレになるという。元官僚の高橋氏(国の役所の埋葬金の指摘で有名だが、後にゴルフ場更衣室での腕時計で有名)はテレビで「ハイパーインフレにならないが、なりそうになってもお金の発行を停めれはハイパーインフレにはならない」と言った。これを聞いていて僕は「札の発行を停めれば経済活動が停止するから停めれなくていろんな国がハイパーインフレになったのだろうが、誰か突っこめ!」と思ったが誰も突っこまなかった。
ところでリフレ派は、昔とちがって経済学理論が発達して人間の英知が進んでいて経済を調整できるという。そしてインフレ目標こそが最新の経済学の成果という。ところでハイパーインフレ発生直前のドイツのある起業家の言葉がこの本の池上さんの解説に載っている。「インフレは完全雇用を保証する手段であり、望ましいどころか、思いやりのる政府が取り得る唯一の政策だ。」
何だ!こりゃ!リフレ派の「最新の経済理論」と一緒じゃないか。「天が下に新しきことなし」(旧約聖書)だね。リフレ派はインフレに反対するのは失業者など貧しい人への思いやりに欠けると、このドイツの起業家と同じように反リフレ派を非難する。これは左翼の陰謀を警告する上念氏もマルクス主義者で数理経済学者の松尾匡氏もおなじ。上念氏は消費税は国債の発行の邪魔だと思い、消費税は不況にして多くの企業を倒産させて政府系金融機関に所有(国有化)させるという左翼の陰謀という。風が吹けば桶屋が儲かるという理屈だが、旧国鉄を見ても分かるように借金に悩む国が赤字を垂れ流す企業を抱え込みたがるか、と思ったが、国の借金はどんなに増えても問題ないとする真性国家社会主義者と思われる(でも左翼ぎらい)上念氏には自然な論理なのだろう。
昨日買った本で面白い本があった。東洋経済新報社の『なぜ政府は信頼できないのか 寓話で学ぶ経済の仕組み』だ。アメリカのピーター・D・シフとアンドリュー・シフという投資アドバイザーが著者で原題は『HOW AN ECONOMY GROWS AND WHY IT CRASHES』だ。「経済はどのように成長して、なぜ破綻するか」というのだろう。著者のピーター氏は2008年の経済危機を予言したことで有名だが、実はこの本はその素材を25年以上前の父親のアーウィン・A・シフ氏の『How an Economy Grows and Why It Doesn't』から取っている。この父親の本はオーストリア学派経済学のカルト的入門書になったそうである。ちなみに反所得税の闘士であるアーウィン氏は80歳をこえた現在も連邦刑務所に収監されている。ようするに条文上では自衛隊が違憲と見えるように、所得税はアメリカ合衆国憲法の条文上では違憲に見えるのだ。25年前の本が「・・なぜ成長しないのか」で、この本が「なぜ破綻するか」なのは、時代の反映であるとともに2008年危機を予測した息子のピーター氏の自負もあるだろう。
であるからしてこの『なぜ政府は信頼できないのか』も日本におけるオーストリア学派経済学の一般向啓蒙書に加えられることになる。そうそうこの間示した本とこの本の他にセルジョ・リコッサ『超ブルジョアがこの世を救う』(中央公論新社)もオーストリア学派だと思う。内容はそれらしいのだが本文にも訳者あとがきオーストリア学派のことは見当たらない。しかしWikipediaを見ると、イタリア語だがどうやらリコッサ氏はイタリアの経済学事典にはオーストリア学派に分類されているらしい。勿論イタリア語は読めないがそれらしい単語をつなげるとそう読める。
『なぜ政府は信頼できないのか』は昨日買って、今日の午前中に3分の1まで読んだ。明日には読み終えるので、それからまとめて読書ノートを書けばよいと思われるかもしれないが、今書いてしまうのは他にもいい本を見つけたから。その本はアダム・ファーガソン『ハイパーインフレの悪夢』(新潮社)だ。
『なぜ政府は信頼できないのか』を読むと、ケインズ派を始めとする現代の経済学の主要な流れが健全な経済感覚からはなれた異様なことを主張していることがわかる。彼らは収入の少ない若者が見栄での自動車を買わなくなったのはデフレを進めると非難する。でも健全な庶民感覚からすれば若者の行動がマクロ的にもミクロ的にも正しいと思う。東日本大震災で被災地以外の人が自粛するのはよくないと多くの経済学者が言うけど、自粛して余ったお金を銀行に預金すれば復興資金の原資になるのではないのだろうか。ようするに人びとは本能的に正しい行動を知っているのだ。
そうそうデフレを不景気と同一視して毛嫌いする経済学者がいるが、この本では生産性が上がれば価格が下がるのは当たり前と書いてある。近代でも長い期間社会が経済的に発展しながら商品の値段を下げてきた歴史がある。いま祖父の世代に聴くと昔は物価が安かったというが、祖父の世代がさらにその祖父の世代に聴いたら昔は物価が高くて庶民に買えない物が一杯あったというだろう。ちなみに水野和夫さんか長谷川慶太郎さんによると、世界が戦争経済ぎみだとインフレで平和だとデフレになる。その理屈はよくわかる。
え!無駄な支出はマクロ的にもミクロ的にも意味がないというお前がこの間iPadを見せびらかしていたって?そうだった。いくらぐらいと聞かれてケースも入れて5万円以上したと言ったっけ。そして勤めているときは月給の額を考慮して決めるが、今は預金残高を考慮しているのでわりと気軽に買ってしまう、と言ったっけ。それも真実だけど、本当は能力の衰亡を含む余命を考慮しているのだ。この文もiPad上のPagesで書いているからまんざら無駄な出費でもない。
かわって『ハイパーインフレの悪夢』の方はサブタイトルは「ドイツ『国家破綻の歴史』は警告する」のように第一次世界大戦後のドイツのハイパーインフレーションの記録だ。イギリスの歴史家が駐ドイツイギリス大使館などの当時の報告書も参考にして1975年に出版したものが、近年にアメリカの有名な投資家が推奨したためまた再版されたものの翻訳だ。サブタイトルから読み取れる本の内容にも興味をもったが、一番目をひいたのは、帯に池上彰氏が「ドイツの経験は反面教師として役に立つはずです」と書いていることだ。さらに帯には「日本が背負う多額の震災復興資金。財政秩序と金融節度が限度を越えたとき、貨幣は価値を失い、国は死ぬー。」と書いてある。これがこの本を今日本で出版する意義てあろう。さらに表紙を見ると池上彰氏が解説を書いているではないか。とすると、僕の推測では池上彰氏がこの本の翻訳出版を出版社に強く勧めたのだろう。
震災復興資金の捻出をめぐってリフレ派がこれを機に国債の日銀直接引き受けなどでお札をジャバジャバ印刷してインフレを起こそうと画策している。リフレ派の主張は日本はデフレだからお札ジャバジャバでもハイパーインフレにはならなくてちょうどいいインフレになるという。元官僚の高橋氏(国の役所の埋葬金の指摘で有名だが、後にゴルフ場更衣室での腕時計で有名)はテレビで「ハイパーインフレにならないが、なりそうになってもお金の発行を停めれはハイパーインフレにはならない」と言った。これを聞いていて僕は「札の発行を停めれば経済活動が停止するから停めれなくていろんな国がハイパーインフレになったのだろうが、誰か突っこめ!」と思ったが誰も突っこまなかった。
ところでリフレ派は、昔とちがって経済学理論が発達して人間の英知が進んでいて経済を調整できるという。そしてインフレ目標こそが最新の経済学の成果という。ところでハイパーインフレ発生直前のドイツのある起業家の言葉がこの本の池上さんの解説に載っている。「インフレは完全雇用を保証する手段であり、望ましいどころか、思いやりのる政府が取り得る唯一の政策だ。」
何だ!こりゃ!リフレ派の「最新の経済理論」と一緒じゃないか。「天が下に新しきことなし」(旧約聖書)だね。リフレ派はインフレに反対するのは失業者など貧しい人への思いやりに欠けると、このドイツの起業家と同じように反リフレ派を非難する。これは左翼の陰謀を警告する上念氏もマルクス主義者で数理経済学者の松尾匡氏もおなじ。上念氏は消費税は国債の発行の邪魔だと思い、消費税は不況にして多くの企業を倒産させて政府系金融機関に所有(国有化)させるという左翼の陰謀という。風が吹けば桶屋が儲かるという理屈だが、旧国鉄を見ても分かるように借金に悩む国が赤字を垂れ流す企業を抱え込みたがるか、と思ったが、国の借金はどんなに増えても問題ないとする真性国家社会主義者と思われる(でも左翼ぎらい)上念氏には自然な論理なのだろう。