マスコミや野党が「閣僚の定額給付金受け取り問題」で大騒ぎするのは理解できないと二回にわたって書いてきたけれど、実はちょっと見方を変えると簡単に理解できる。
単に麻生総理が嫌いで叩きたいという願望の表れ、「ためにする批判」だと思えばなにも不思議なことはない。とはいえ、こういう説明はあまりにも便利すぎて何も説明していないのに等しい。「ためにする批判」であっても、視聴者・読者・有権者が「なるほどそうか」と思ってくれないと効果が出ない。「こじつけの批判だろ」と見透かされては逆効果だ。
だがネットで検索するかぎり、「閣僚の定額給付金受け取り問題」に対して「つまらないことで騒ぐな」と怒っている人のほうが少なく、「麻生総理はぶれている、これじゃダメだ」と乗せられている人のほうが多いようだ。となると、やはり日本人の多くが政治家個人の立ち居振る舞いを「政策の是非」と区別できない(しない)傾向を持っていると見たほうがいいだろう。
あらためて言うまでもないが、「麻生総理や閣僚が定額給付金を受け取るかどうか」は「定額給付金という政策の是非」とはまったく関係ない。前にも書いたとおり、定額給付金の目的は「低所得者の援助」と「景気刺激」である。閣僚には世間で一般的に低所得者と認められる人はいないし、景気刺激に効果があるのは「給付金を受け取ること」ではなく「とにかくお金を使うこと」だ。
そんな当たり前のことを理解できず(あるいは理解しようとせず)「受け取る、受け取らない」で迷走だの閣内不一致だのと騒ぐ野党とマスコミ(そしてそれを真に受ける人たち)はどうかしている。
「平均以上の収入のある人(閣僚は全員そうだ)が定額給付金を受け取るのも受け取らないのも勝手」
「ただし定額給付金の趣旨に賛成なら積極的に消費拡大に貢献すること」
こういう理にかなった考え方がなぜできないのだろう。
閣僚に質問するなら、「あなたは定額補助金を受け取りますか」ではなく、「あなたは消費拡大のために何をしますか」だ。「車を買い換えた」とか「家をリフォームする予定だ」とか「家族を旅行に行かせた」という答えが返ってくれば定額給付金の趣旨にかなっている。だが「なにもしていない」「生活防衛のため支出を切り詰めた」という答えだったら、「あなたは景気回復のため国庫に負担をかけても、自分の財布を開く気はないのか」「無責任で身勝手じゃないか」と責めればいい。
マスコミと野党が定額給付金を消費ではなく「受け取る・受け取らない」の問題にしてしまったのは、麻生総理のバー通い批判がそもそもの原因だ。あれもまったく馬鹿げた騒ぎだったが、あの一件のせいで「この不景気のさなか、個人消費を楽しむのは後ろ暗いこと」というネガティブな印象を世に広めてしまった。合成の誤謬をマスコミと野党が扇動したのだから罪は重い。
定額給付金という政策を批判するのはけっこうだが、この不況のさなかデフレムードを煽るのは本当にやめてほしい。ワイドショーが「楽な自殺のやり方」を特集するのと同じくらい社会的に有害だ。
定額給付金を「受け取る、受け取らない」の問題として見るのは予防接種の(誤った)アナロジーで捉えているからかもしれない。
新しい伝染病が広い範囲で発生しそうだとする。政府はすべての国民に予防接種を呼びかける。だが、ワクチンの有効性に疑問があり、副作用のリスクも否定できない。「有害無益だ」と批判する研究者もいる。
こういう場合は、政治家が率先して予防接種を受けて副作用のリスクを自分自身で負担することが求められる。「国民はリスクを背負って予防接種してくれ、自分はそのメリット(伝染病の拡大防止)だけ享受したい」という無責任な態度は認められない。
だが、定額給付金とワクチンの予防接種はぜんぜん違う。
有効性について議論が分かれる点は似ているが、「接種」を受けた人に副作用が表れる心配はない。お金は誰にとっても有益であり、よほどの大金(宝くじの高額当選者のように)ならともかく、たかが1万2千円で身を持ち崩す人などいない。定額補助金は受け取るものにとって純粋な便宜であって、貰うのも貰わないのも個人の自由だ。ただし、定額補助金の趣旨に賛成する政治家であれば、受け取らなくても身銭を切って景気拡大に貢献することが求められる。
もうちょっと気楽な話として、「デパ地下の試食」でたとえてみる。
麻生食品が一流デパートの地下に出店し、販売拡大のために試食品を提供する。
そのとき「麻生食品の社員は率先して試食を利用しろ」などと要求する客はいない。試食品は見込み客のためのものであり、社員に食べさせるものではない。よほど出来の悪い商品でない限り、わざわざ社員がサクラになる必要などない。麻生食品はデパ地下に出店できるレベルなのだから、その商品が充分なおいしさを備えていることは間違いない。「お金は誰にとっても役に立つ」というのと同じくらい自明だ。
「定額給付金を閣僚は全員受け取れ」とか「受け取るか受け取らないかはっきりさせろ」というのは、「麻生食品」社員に試食品を受け取れと要求するのと同じくらい馬鹿げている。
ここで「船場吉兆」の事件を思い出す人がいるかもしれないが、定額給付金が偽装(贋札)である可能性を心配する必要はない。商品はまっとうなものであり、客は「価格に見合っているのか」判断して自分自身で買うかどうか決めればいい。
単に麻生総理が嫌いで叩きたいという願望の表れ、「ためにする批判」だと思えばなにも不思議なことはない。とはいえ、こういう説明はあまりにも便利すぎて何も説明していないのに等しい。「ためにする批判」であっても、視聴者・読者・有権者が「なるほどそうか」と思ってくれないと効果が出ない。「こじつけの批判だろ」と見透かされては逆効果だ。
だがネットで検索するかぎり、「閣僚の定額給付金受け取り問題」に対して「つまらないことで騒ぐな」と怒っている人のほうが少なく、「麻生総理はぶれている、これじゃダメだ」と乗せられている人のほうが多いようだ。となると、やはり日本人の多くが政治家個人の立ち居振る舞いを「政策の是非」と区別できない(しない)傾向を持っていると見たほうがいいだろう。
あらためて言うまでもないが、「麻生総理や閣僚が定額給付金を受け取るかどうか」は「定額給付金という政策の是非」とはまったく関係ない。前にも書いたとおり、定額給付金の目的は「低所得者の援助」と「景気刺激」である。閣僚には世間で一般的に低所得者と認められる人はいないし、景気刺激に効果があるのは「給付金を受け取ること」ではなく「とにかくお金を使うこと」だ。
そんな当たり前のことを理解できず(あるいは理解しようとせず)「受け取る、受け取らない」で迷走だの閣内不一致だのと騒ぐ野党とマスコミ(そしてそれを真に受ける人たち)はどうかしている。
「平均以上の収入のある人(閣僚は全員そうだ)が定額給付金を受け取るのも受け取らないのも勝手」
「ただし定額給付金の趣旨に賛成なら積極的に消費拡大に貢献すること」
こういう理にかなった考え方がなぜできないのだろう。
閣僚に質問するなら、「あなたは定額補助金を受け取りますか」ではなく、「あなたは消費拡大のために何をしますか」だ。「車を買い換えた」とか「家をリフォームする予定だ」とか「家族を旅行に行かせた」という答えが返ってくれば定額給付金の趣旨にかなっている。だが「なにもしていない」「生活防衛のため支出を切り詰めた」という答えだったら、「あなたは景気回復のため国庫に負担をかけても、自分の財布を開く気はないのか」「無責任で身勝手じゃないか」と責めればいい。
マスコミと野党が定額給付金を消費ではなく「受け取る・受け取らない」の問題にしてしまったのは、麻生総理のバー通い批判がそもそもの原因だ。あれもまったく馬鹿げた騒ぎだったが、あの一件のせいで「この不景気のさなか、個人消費を楽しむのは後ろ暗いこと」というネガティブな印象を世に広めてしまった。合成の誤謬をマスコミと野党が扇動したのだから罪は重い。
定額給付金という政策を批判するのはけっこうだが、この不況のさなかデフレムードを煽るのは本当にやめてほしい。ワイドショーが「楽な自殺のやり方」を特集するのと同じくらい社会的に有害だ。
定額給付金を「受け取る、受け取らない」の問題として見るのは予防接種の(誤った)アナロジーで捉えているからかもしれない。
新しい伝染病が広い範囲で発生しそうだとする。政府はすべての国民に予防接種を呼びかける。だが、ワクチンの有効性に疑問があり、副作用のリスクも否定できない。「有害無益だ」と批判する研究者もいる。
こういう場合は、政治家が率先して予防接種を受けて副作用のリスクを自分自身で負担することが求められる。「国民はリスクを背負って予防接種してくれ、自分はそのメリット(伝染病の拡大防止)だけ享受したい」という無責任な態度は認められない。
だが、定額給付金とワクチンの予防接種はぜんぜん違う。
有効性について議論が分かれる点は似ているが、「接種」を受けた人に副作用が表れる心配はない。お金は誰にとっても有益であり、よほどの大金(宝くじの高額当選者のように)ならともかく、たかが1万2千円で身を持ち崩す人などいない。定額補助金は受け取るものにとって純粋な便宜であって、貰うのも貰わないのも個人の自由だ。ただし、定額補助金の趣旨に賛成する政治家であれば、受け取らなくても身銭を切って景気拡大に貢献することが求められる。
もうちょっと気楽な話として、「デパ地下の試食」でたとえてみる。
麻生食品が一流デパートの地下に出店し、販売拡大のために試食品を提供する。
そのとき「麻生食品の社員は率先して試食を利用しろ」などと要求する客はいない。試食品は見込み客のためのものであり、社員に食べさせるものではない。よほど出来の悪い商品でない限り、わざわざ社員がサクラになる必要などない。麻生食品はデパ地下に出店できるレベルなのだから、その商品が充分なおいしさを備えていることは間違いない。「お金は誰にとっても役に立つ」というのと同じくらい自明だ。
「定額給付金を閣僚は全員受け取れ」とか「受け取るか受け取らないかはっきりさせろ」というのは、「麻生食品」社員に試食品を受け取れと要求するのと同じくらい馬鹿げている。
ここで「船場吉兆」の事件を思い出す人がいるかもしれないが、定額給付金が偽装(贋札)である可能性を心配する必要はない。商品はまっとうなものであり、客は「価格に見合っているのか」判断して自分自身で買うかどうか決めればいい。