小泉総理が靖国神社に参拝した。
テレビの大騒ぎを見ていると、まるで総理が靖国で「A級戦犯」を称え先の戦争を正当化し中韓を弾劾する大演説をするのか?と思ってしまうが、もちろんそんなことはなくこれまでと同じように静かに参拝して風のように去っただけである。
深刻そうな顔を作りつつ実は嬉しそうなレポーターやキャスターの顔を見ていると
カルガモ親子や
タマちゃん騒ぎを思い出す。興奮しているのはマスコミとそれに煽られた人ばかりで、本人(本鳥・本動物)は付きまとわれて迷惑している。
以前から思っていたことだが、「靖国問題」の大半はマスコミが作り上げた空騒ぎでしかない。
ただでさえうるさいマスコミがさらに大騒ぎするから「8月15日」の参拝はやめたほうがいいのに、と思っていたけれど、実際に総理が参拝する姿を見るとその気持ちは薄れてしまった。大騒ぎするのは反対する勢力ばかりであり小泉さんは静かに慰霊したいだけなのだ。
これは例年のことだが、神社内でマスコミ対応しないのは良かった。もし中曽根総理の85年参拝のように靖国の境内で「日本国総理として参拝しました」と得意げに語ったり、石原都知事のように「つまらんことを聞くな」と攻撃的な態度を示したりすれば「参拝に邪念があるのではないか」と疑ってしまう。お参りは静かに個人的にするのがいい。
みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会なるものがあるが、なぜ「みんな」で連れ立って参拝しなければならないのかわからないし何だか威圧的な印象を受けるので私は嫌いだ。小泉さんは以前は在籍していたらしいが団体で参拝したことはないという。彼らしい「変人」ぶりに共感する。
参拝後に官邸で行われた記者会見がとてもよかった。
(
こちらで動画と会見内容の書き起こしを見ることができる)
「不戦の誓い」「犠牲者に対する敬意と感謝」「日中・日韓友好論」「参拝しないことを首脳会談の条件にするのはよろしくない」「違いを乗り越えた未来志向」「『A級戦犯』のために行っているのではない」「神道奨励でも戦争美化でもない」「心の自由」「批判する人はよく考えてほしい」「考えは自由だ」
借り物ではない自分の考えを率直に語り、居丈高になることもなかった。批判的な記者に囲まれた全国放送の生中継でこういうことができる政治家は残念ながら少ない。
靖国参拝を問題視する人たちの意見を3つに分類して丁寧に答えている。小泉総理の考えに同意するのもしないのも自由だが、これだけ噛んで含めるように説明されてなお「わかりにくい」とか「説明不足」と言うものがあれば(たくさんいそうだが)、その人の理解力は平均以下であり、はっきり言って馬鹿だ。
去年の10月に「
小泉首相は来年8月15日に靖国神社に参拝しない」したけれど見事に外れてしまった。
言い訳するのもみっともないが、口を拭って逃げたとも思われたくないので少しだけ言い訳を書く。
10月のエントリでは「参拝しない」理由として以下の四点を挙げている。
● 首相就任以来、次第に「8月15日」へのこだわりが薄れた
今日の会見で小泉総理は「8月15日を避けてもいつも批判・反発する。そしてなんとかこの問題を大きく取り上げようとする勢力。変わらないですね。いつ行っても同じです。」と言っている。8月15日を選ばせたのは本人のこだわりというより批判する勢力への反発のほうが大きいように思える。
● 9月に行われる総裁選への悪影響を避ける
ここまで安倍氏が総裁選レースで独走するとは思ってもみなかった。これでは小泉総理が8月15日に靖国参拝してもしなくても大した影響はない。反小泉勢力は福田氏のようなデコイに引っかからず強力な統一候補を立てるだろうと予想していたが、買いかぶっていた。
● あくまで「慰霊のための参拝」であり「靖国史観の肯定」「中韓への挑発」と誤解されることを避ける
小泉総理は自分が「靖国史観」を肯定せず日中・日韓友好論者であることに疑いなく、国民に向けて真剣に説明すれば(郵政解散のときのように)理解されると考えたのだろう。記者会見を見たあとでは私も小泉総理の言葉の力を信じたい。
● 8月15日の靖国神社は混雑し今年のように参道を歩いて参拝するのは危険
6月の
最高裁判決で「神社への参拝行為は他人の信仰生活に対して圧迫、干渉を加えるような性格のものではなく、損害賠償の対象となるような法的利益の侵害があったとはいえない」とされ、今後「違憲判決」が出る可能性がなくなった。参拝が違憲とされる可能性が残っていたら、たぶん今回のように昇殿することは避けただろうし、だとすると8月15日に参拝するのは困難だったろう。
予想は外れたが、やはり私は総理大臣の靖国参拝は8月15日を避けるべきだと思っている。ただでさえ暑い夏をさらに熱くする(本人の望んだことではないけれど)のはよろしくない。靖国神社の側も「8月15日には特に意味はない、例大祭の参拝が望ましい」と言っている。次期総理と目される安倍氏はマスコミに騒がれることなく四月の例大祭に参拝していたけれど、できれば総理になってもそのやり方を続けてほしい。