玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

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「定額給付金反対世論」に13年前を思い出す

2009年01月12日 | 政治・外交
マスコミ各社の世論調査が発表された。

asahi.com(朝日新聞社):給付金に反対63% 内閣支持19% 朝日新聞世論調査 - 政治
内閣不支持7割超、給付金に反対78%…読売世論調査 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
【本社・FNN合同世論調査】麻生内閣「支持率は危険水域」初の10%台に (1/2ページ) - MSN産経ニュース

麻生内閣の支持率についてはともかく(それにしても下がりすぎとは思うが。私は麻生内閣支持である)、定額給付金がこれほどまでに不評なのは合点がいかない。産経・FNNの調査によると、
 通常国会で焦点となっている定額給付金については、「ばらまき」で好ましくないと答えた人が75・1%。給付金の財源2兆円についても「ほかの政策に回すべきだ」と答えた人は79・8%にのぼった。

 だが実際に給付が決定すれば、84・8%が「受け取ろうと思う」と答え、受け取ろうと思わないと考えている人は11・4%にとどまった。

というのがただいまの「民意」だそうで、だとしたらずいぶんとご都合主義だなというか、あるいは「反対」世論の正体は「違和感をぬぐえない」程度のことなのかと思ったりする。仮に定額給付金が実施されるとして、本気で反対している人は敢然と受け取りを拒否なさればいい。そのお金は無駄にならず各自治体が使ってくれるのだから惜しむ必要はない。「定額給付金は天下の愚策、でもくれるなら何でも貰うよ(損したくないからね)」という人がいたら私はちょっぴり軽蔑する。

特に根拠はないけれど、私には「定額給付金」反対の世論は合理的・政治的というよりも感情的・道徳的なものに思えてならない。「民意」というよりは「定額給付金の悪口ブーム」という感じだ。
私自身は定額給付金という政策に入れ込んでいるわけじゃないので、どこがそんなに素晴らしいのか、効果があるのかないのかうまく説明することはできないけれど、景気刺激策・低所得者への補助として各国で似たようなことが行われているのは知っている。

イタリアが9兆6800億円の景気対策 年金生活者らに給付金 NIKKEI NET(日経ネット)
豪政府、クリスマスの消費てこ入れに給付金を支給 | ワールド | Reuters
米国、所得税の「戻し減税」始まる 景気刺激なるか 国際ニュース : AFPBB News
asahi.com(朝日新聞社):バラマキ1.8兆円、ドイツでも「消費券」検討 - 金融危機



してみると、大規模な景気後退局面で政府が国民に「バラマキ」をするのは「天下の愚策」というほどのナンセンスではなさそうだ。堅実な国民性で定評のあるドイツでも真剣に検討されているのだから、ただの人気取りとか浮かれた無駄遣いと決め付けるのは気が早い。どうも7割とか8割の反対世論は一過性のブームの臭いがする。
世間の空気は一定の方向にワッと走り出しすと勢いがつくので、今さら「定額給付金はそんなに悪くない」「無碍に反対するのはどうかな」と言っても遅いかもしれない。だが国民の本音は案外「実際に給付が決定すれば、84・8%が『受け取ろうと思う』と答え」のほうにあるような気もする。頭はマスコミの煽りに吹き上げられ、口では周りの人に合わせて「定額給付金なんて最低」と言っていても心の奥では「何に使おうか」と胸算用している。

「言っていること」よりも「やっている(やろうとする)こと」のほうが本音をあらわす、という場合は少なくない。
たとえば2005年にライブドアがニッポン放送を買収しようとしたとき、多くの「ライブドア支持者」「ホリエモン信者」が熱気を吹き上げていたものだ。当ブログもそのとばっちりを受けた。だが、彼らのうちで本当に身銭を切ってライブドアの株を買ったり入社試験を受けた人はほとんどいなかったようである。「彼らは本心ではライブドアを、ホリエモンを信じていなかった」と言っても抗議されることはあるまい。今となっては「ホリエモン人気って何だったんだろう」といぶかしむばかりだ。

民意が合理的な判断より感情や道徳論に引っ張られて「反対ブーム」を起こした例がある。
96年の住専問題がそれだ。

 まず住専問題をおさらいしてみましょう。1995年にクローズアップされた問題で、住宅金融専門会社がバブルの崩壊によって経営を悪化させ、親会社の金融機関の経営をも揺さぶるほどの問題になったことに対し、政府が公的資金を投入することで金融システムを安定化させようとしたものです。

 金融不安は1995年当時、既に深刻化しており、1994年の東京協和、安全の2信組に始まって、1995年に入ってもコスモ信組、兵庫銀行、木津信組が次々と経営破たんしました。大蔵省、日銀はあまりの事態に従来のような護送船団方式の救済をあきらめ、金融システムを安定化すべく、預金保険機構による援助に加え、30年ぶりに日銀特融も行いましたが破綻の度合いがあまりに大きいために損失を穴埋めできなくなったため、税金を使うという案が浮上した、という背景がありました。

 当時の野党は、「住専の乱脈経営の穴埋めに国民の血税を使うな!」といういわゆるモラルハザードの問題を指摘して猛反発しました。当時私は大学3年だったのですが、クラスメイトに創価学会員がいて、彼が反対のビラを配っていたのが印象深かったです。

 結局、自社さの村山連立政権は野党や世論の反発を押し切って、1996年度予算では6850億円が支出されました。


つれづれコラム: 住専問題は今?


当時の世論は今の「定額給付金反対」と同じくらい、いやずっと強く「住専反対」で固まっていた。それこそ天下の愚策、大金の無駄遣い、国民への裏切りよばわりされて国会は大混乱した。
当時の私は(今もそうだが)経済のことはぜんぜんわからないので「ほほー、大騒ぎだな」とぼんやり眺めていただけだが、「政府がこれほどこだわるのは何か理由があるんじゃないか」「反対する人たちはちょっと感情的すぎやしないか」と思ったことを覚えている。
あれから10年以上経ち、いつのまにか当時の住専処理・公的資金導入は「適切な政策だった」ということになっているらしい。
ちゃんと調べたわけではないけれど、サブプライム破綻関連のニュースで日本の例が引き合いに出されるときは決まって「迅速な公的資金導入」が教訓とされ、「住専に金をつぎ込んだのは無駄だった」という話は聞かれない。時間によって答えが出た、といっていいだろう。それは結構なのだが、あのころ目を吊り上げて反対を叫んでいた人たちが反省したという話は聞いたことがない。

住専処理が嚆矢となって、その後日本では金融機関に対する公的資金注入や国営化が相次いだ。それらの手立てが効果をあげて日本経済は何とか(去年までは)安定した。もしも96年当時の政府が「民意」に従って住専処理をあきらめていたら、たぶんもっと混乱が長続きしていただろう。
私はいまだに経済のことがよくわからないので、定額給付金問題についても「ほほー、大騒ぎだな」と眺めるだけだ。だが、反対する人たちの語調や表情を見ていると、どうしても「住専処理に反対した人たち」の姿を思い出さずにはいられない。
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7 コメント

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Unknown (imotan@hatena)
2009-01-13 15:31:57
なるほどーと思いました。
政策に興味があるのですが、昔のことを知らないので勉強になります。
Unknown (Unknown)
2009-01-15 11:33:29
定額給付金反対です。
低所得者の部類に入る者ですが、わずかな給付金を貰ったとて「じゃあちょっと贅沢して盛大に使いましょう」なんて思いません。
貰ったとして日々の生活費に充てるだけ。
又は先々のため温存するだけ。
だから所得の多くない人の大半は「やめろ。意味がない。」と思っているのでは?
首相が高所得の人も貰って盛大に消費しろなんて言ってます。これを聞いて、「頭がおかしい人なんじゃないか」と思いました。お金持ちにお金を配るほど日本はお金持ちですか?借金大国のはずですが。
ただのブームと仰っていたので感覚の違う方とは思いますが、参考までにコメント入れさせていただきました。
世論の数字に現れていることを理解出来ないからと言って「悪口ブーム」で片付けるのはいかがなものでしょう。
Unknown (倉田)
2009-01-16 22:19:00
上記の方、意味がないと思える根拠がよく分かりません
なぜ低所得者の多くの人は意味がないと考えているのでしょうか
意味がないのではなく、効果が薄いと思われるので他のことに使って欲しい、なら理解できますが
乱暴に言ってしまえば低所得者の人にこの政策はさほどの意味を持ちません、直接的には
副次的、また社会に与える将来的な効果は別にありますけれど

低所得者は日々の生活費に充てれば宜しいのです。生活支援として受け取れば宜しい
わずかと思われるなら貯金などせずに使い切ってしまえば宜しい
収入外からのお金ですのでこの1万2千円がなければ死ぬ、という人も少ないでしょう
だが当然そのような人ばかりではないわけです、当たり前の話です。余裕のある人もたくさんいます
「お金持ちに~」というのも、政策の趣旨、要旨を理解していないだけで
要するに政府の言うことを聞きそれを実行に移すかどうかの問題なんです
お金持ちかどうかは関係ないんですね、実際は誰でもいいのです。使い方、使われ方も問題ではありません
消費されるか否かなんです、資本主義社会の血液であるお金の巡りを良くする
そういう目的のためのお金、政策なわけです。その意を汲むかどうかなんです
これを理解していればわずかなお金、という言い方はできなくなるはずです
多くの日本国民が使えば莫大な金額なのですから

あなたにお金をあげます、ではないのです
国民の財布を通過すれば効率的に色々なところに流通するのでそういう手段を取っているだけです
別に公共事業でもいいのですよ、でもそれでは速効性がありませんし使われ方が偏るでしょう
このお金を使うことによって助かる産業があるかもしれません、倒産を免れる企業があるかもしれません
どうか社会のために、経済を活性化するために使ってください。あなたが好きな産業に投資してください、なのです
日本経済はほんの少し立て直します。ほんの少しですけどね

私などは収奪機関である国家がお金を返してくれるなど本来あり得ないことなのでありがたく受け取ります
そして低所得者にも関わらず日本経済を助ける一粒になればと思い使います
なぜか?私にくれたお金ではないからですね。社会に向けられたお金だからです
自分で稼いだお金ならともかくその政策給付金を貯金に回すことなどできません。私は社会の一員でありますから
ちょっとだけ 公>私 になっているだけの話なんです。この1万2千円は私の人生を左右しませんので

麻生首相は高所得者は受け取らない、それが矜持だと言いました。違いますね。まったく誤っています
政策を正しく理解すればすべての人が受け取るべきなのです
そして生活が苦しくても使うことこそが矜持だと私は考えます
定額給付金 見直して~ (ひろま)
2009-01-18 18:05:23
私は「定額給付金は天下の愚策、でもくれるなら何でも貰うよ(損したくないからね)」という小市民です。

「資本主義社会の血液であるお金の巡りを良くする」
そんな、ポンプのように単純にうまくいくとはあまり思えない。
人って血が通った生きものですから。

こんなに借金だらけなのは家計では考えられない~~
本気で子どもたちのこと考えてるのかなあ?
男性の感覚ってふしぎだぁ
ご自身はどうなのですか (kamm)
2009-01-18 19:50:23
>彼らのうちで本当に身銭を切ってライブドアの株を買ったり入社試験を受けた人はほとんどいなかったようである。
>「彼らは本心ではライブドアを、ホリエモンを信じていなかった」と言っても抗議されることはあるまい。

エントリーの趣旨には賛成ですが、こういう姑息な貶しはやめましょうよ。
玄倉川さんは麻生内閣支持とのことですが、自民党員になったり献金をしたりしたのですか?
わたしは硬直したマスコミ業界に風穴をあけてくれるのではないかとライブドアに期待していましたよ。
Unknown (Unknown)
2009-01-22 11:23:06
「上記の」者です。レス拝見し、麻生さん同様ずれている感を受けました。
そうですね。いささか言葉足らずでした。
「効果が薄いから他に使って欲しい」は多くの人が定額給付金に反対する理由のひとつ(私も含め)です。


>低所得者の人にこの政策はさほどの意味を持ちません。

とのことですが、彷徨い続ける麻生首相の言葉を顧みれば、首を傾げざるをえません。
この制度がどういう意味を持ちなぜ必要なのか、国民は首尾一貫した説明を受けていません。

この制度についての発言は変遷しているし、自分は貰うのか?さえ明らかにできない麻生さん。
国民は「一体何が言いたいの?どうしたいの?」という思いが強いのです。
政策に不信感を募らせるのは当たり前ではないでしょうか。
その不信感が、管理人様の仰る「ブーム」と呼ばれるのだとしたら、ブームの火付け役は無能な首相と連立与党ですよね。

ついでに、住専のときとは桁もちがいますし、その目的も違うので同列に扱うのもどうかと思います。
共通点は、大多数の国民に反対されたってことだけですよね。

2兆円という規模ですから、費用対効果の面も疑問が残ります。最もロスが少ない方法が本当に「定額給付金」だという議論は十分にされたんでしょうか。
使い道は個々に委ねられている以上、国民の声を無視して「エイヤッ」と実施する類のものではないと思ういます。

管理人様の持論が「政策を正しく理解した物」であるなら、国民に広く理解されると良いですね。
この政策に単に「理由付け」するためのものではないことを祈ります。
賛同します (ARU)
2009-03-04 15:46:06
基本的に定額給付金は賛成です。
今はとにかく経済の悪化で即効性が必要だと思います。
よく反対意見で違うことに使えばというのがありますが、即効性がある政策って他にいい案を出してる人をみかけたことがありません。
減税なんかはそれこそ即効性はないですし、低所得者にはあまり恩恵もありません。

消費税増税で反対してる人もいますが、それがなくてもどうせ景気が回復してきたら増税になります。
なら、もらえるうちにもらったほうがよいです。

1年間でGDPを0.1%しか引き上げないから意味がないという意見もありますが、
経営が危ない企業が一時の効果で倒産を免れて、その雇用されてる人達が助かるかもしれません。
なければまた働けない人が増えるかもしれません。
そうなれば、ますます景気が悪化してしまいます。
新たな失業者を出さない為にも、この瞬間的な経済効果が今の日本には必要と思います。
失業者が減ればそれだけお金が流通するのです。

そして反対が多いといいますが、世論というのはどうしても反対意見が目立ちます。
賛成してる人は、それこそ早く出てくれって感じで賛成意見を出したりする人は少ないので目立ってないだけです。
私の職場は20人ほどで少ないですが、反対してる人なんか1人もいません。
出たら何買おうとか話していたりします。
ネットの反応みても、きちんと考えて発言している人もいますが、大半がマスコミに踊らされて、感情で反対だと言ってるような気がします。

そして反対して他のことに使えっていう人がいますが、世の為になりそうだと自分で思うことに使うという考えはないのでしょうか?
それこそ政府に任せて他の無駄な事業とかに使われるより、ましだと思いませんか?

ちなみに自民党信者ではありません。
意味のないことやってたり今の政府は嫌いです。
ただ、この定額給付金については価値があると思いますので、コメントさせていただきました。

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