玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

「代理出産」禁止を支持する

2008年03月08日 | 代理出産問題
「代理出産を法律で禁止すべき」とする日本学術会議の最終報告書に安心した。
現実的に考えるとあまりにも問題が多すぎて原則禁止以外ありえない。
産婦人科医の方が起こりうる(実例が増えれば確実に起きる)問題点を具体的に書いてくださっているのでぜひ読んでほしい。

代理母に関するトラブルシューティング|ポンコツ研究日記~悩める産婦人科医のブログ~

そもそも「代理出産」とはマスコミ好みの美談にできるような甘い代物ではない。
依頼者の「強い欲望」と代理母の「身体的・精神的リスク」そして全国民が負担する社会的コストがぶつかりあうキナ臭い話である。依頼者の願望ばかり伝える情緒的な報道は狼の仔を子犬と偽って売りつけるようなものだ。それを知らない、あるいは危険から目を背けた情緒的な「代理出産」賛成・容認論には意味がない。
鴨下委員長をはじめとして誠実に「代理出産」の問題を検討し倫理的・社会的に適切な報告書をまとめてくれた学者の方々に感謝する。

「代理出産」営利目的には刑罰を…学術会議が最終報告書 : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 代理出産の是非を検討してきた日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長=鴨下重彦・東京大名誉教授)は7日、代理出産を「生殖補助医療法(仮称)」で禁止し、営利目的で代理出産を行った場合は依頼者を含めて刑罰の対象とすべきだとする最終報告書をまとめた。

 過去にも法制化を求める厚生労働省の報告書が出されたことがあり、学界の総意といえる今回の報告書を受けた具体化への動きが、今後の焦点となる。

 受精卵を第三者に託して出産を依頼する「代理出産」の実施については、依頼を受けた代理母や生まれた子供の身体的・精神的負担が大きいと判断し、外国で代理出産を行っている現状に歯止めをかけるため、新たな法律で禁止すべきだと決めた。

 特に、金銭の授受などが絡む営利目的で代理出産が行われた場合は、依頼者と仲介者、医師の3者を刑罰の対象とした。出産を請け負った代理母は、「妊娠・出産を負担した被害者」などの理由で対象から外した。

 一方、現時点では代理出産に関する医学的情報が不足しているため、公的機関の厳重な管理のもとで代理出産を試行することは、例外的に考慮されてよいと指摘した。産婦人科医や小児科医、法律家、心理カウンセラーなどで構成する機関が、〈1〉依頼する女性に子宮がない〈2〉代理母が他からの強制を受けていない――など、厳しい条件のもとで試行する場合に限る。試行で問題が出た場合には、その時点で全面禁止にする。

 また、海外などで実施された場合の親子関係については、代理母を法的な母とするが、依頼夫婦と養子縁組することは認める。

 この問題に関し舛添厚労相は同日、「立法府で早めに議論することが必要。各国会議員が、自分の哲学に基づいて、考えをまとめる時期にきている」と話し、法制化に向けた早期の国会での議論が必要との認識を示した。

 同検討委は、法相と厚労相の要請を受け、代理出産の是非を中心に昨年1月から計17回にわたり審議を行ってきた。

(2008年3月7日23時35分 読売新聞)


国会議員の方々は「学術会議はなぜ世論(過半数が容認)に逆らう原則禁止を結論としたのか」真剣に考えてほしい。倫理的・医学的・社会的問題が大きすぎるからだ。
いわゆる「代理出産」(私は寄生出産と呼ぶ)は「子供を産めない女性がかわいそう」「当事者が同意していればいいじゃないか」といった安っぽい情緒だけで認められるようなことではない。仮に認めるとしても「代理出産を認めることによって生じる新たな犠牲者」の存在を覚悟し、社会的コストを冷静に計算した上でなければならない。気分を良くさせる「美談」ばかり見ていたら現実に裏切られるのは目に見えている。
自民党の野田聖子議員(私はこの人が大嫌いだ)は「どこが問題なんでしょうか!? 誰に迷惑をかけるわけでもないのに」などとお気楽なことを言っている。なんという無責任、想像力の欠如だろう。野田氏のような人が政治家として、不妊治療を受ける女性の代表面して大きな影響力を持っているのが恐ろしい。

想像力が足りない、あるいは自分に都合のいい想像しかしない人は信用できない。そういう人がいくら「大丈夫、問題ない」と言っても半分に割り引いて聞いたほうがいい。私にとっては「Because It's There」春霞氏がそういう人である。

Because It's There 代理出産に関する、近時の解説記事を紹介~読売新聞「生命を問う」(4月22日連載開始)より
すでに代理出産を認める結論は決定事項のようです。そうなると、日本学術会議は、代理出産を肯定する論理の提示と実施要綱を決定することが役割となるのでしょう。本来は、白紙の状態で議論してもらうはずだったのですが、政府によって結論が決められているのですから、学者の存在意義とはなんだろうかと空しい感じにもさせられます。

このような政府の意向は、代理出産否定派の方にとっては残念でしょう(苦笑)が、代理出産賛成の立場としては、実施条件にもよりますが少しは安心できるものといえそうです。

春霞氏は「日本学術会議は、代理出産を肯定する論理の提示と実施要綱を決定することが役割となるのでしょう」と都合のいい想像をして「学者の存在意義とはなんだろうか」とお節介を焼いたり「苦笑」したりしていたが、今回の最終報告書という現実に裏切られた。自業自得である。私は苦笑はしない、嘲笑する。
私も以前は「春霞氏は頭のよさそうな人だから断言にはそれなりの根拠があるのだろう」「特別な情報を知りうる立場にあるのかな」と一目置いていたが、完全に見損なっていた。今の私の評価は「春霞氏は都合のいい情報だけを信じて広める人」である。もちろんそんな人の主張する「自己決定権による代理出産容認論」も信用に値しない。


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1 コメント

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Unknown (DH)
2008-03-29 23:37:29
こんばんは。

>「春霞氏は頭のよさそうな人だから断言にはそれなりの根拠があるのだろう」「特別な情報を知りうる立場にあるのかな」と一目置いていたが・・・

実は私も当初はそう思っていた部分がありました。でも、代理母の問題に限らず、この方は御自分の考えと異なる意見や事実を絶対に受け入れようとはしない人であるとわかってからは、一切コメントなどするのを諦めました。こちらの言うことに少しでも批判的な内容が含まれていると、ほとんど全否定に近い答えが返ってくるので虚しいと言うか・・(苦笑)

このような人物が法の専門家であるとは驚きですね。
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