黒古一夫BLOG

文学と徒然なる日常を綴ったBLOG

どこかがおかしい

2009-05-02 07:03:00 | 近況
 人にはそれぞれ「好み」というのがあるから、他人の嗜好にとやかく言っても仕方がないことだが、どうも「100年に一度の大不況」とか「平成の大不況」に対応する「景気・不況対策」などという見映えのいい(格好いい)言葉=政策が罷り通っている間に、基本的と言っていい「大事なこと」が蔑ろにされ、気が付いたら「こんなはずではなかった」という状況を迎えるようになるのではないか、と危惧している。「郵政改革」に象徴される諸「改革」が、結果的に「改革」に価しない弱者切り捨ての愚作であったのと同じように、である。あの「小泉マジック」に踊らされ、「郵政選挙」において与党に1票を投じた人の如何に多くの人がいま臍をかんでいるか?
 「不況」「不況」の大合唱の中で、同じようなことが起こらないとは限らない。
 そんな危惧を抱くのも、しばらく前から気になっていたのだが、コメントしようと思っている間に、別な原稿書きや「村上龍論」の著者校やらで忙しくなってしまって黙っていたら、あれよあれよという間に、このまま放置しておけばとんでもないことになるのではないかと思うようなことが、いくつか出来したからである。
 まず、その①、このことについては前にも「仮想敵国」というキーワードを使っ て書いたことだが、北朝鮮の「人工衛星・ミサイル打ち上げ実験」という壮大な パフォーマンスが挙行されたことを受けて、自民党の山本一太などという「跳ね 上がり屋」ばかりでなく、民主党などからも北朝鮮を仮想敵国とする「先制敵基 地攻撃論」が声だかに叫ばれるようになって、「日本国憲法」(前文・第9条) の精神はどうなっているのか、僕も戦後生まれだけれど、実際の戦争は「WAR G AME」とは違うんだぞ、と思いたくなるような事態が進行していた、ということ がある。この「先制敵基地攻撃論」を唱えている政治家が「若手」(もちろん、 若手だけでなく若手に悪乗りして持論を展開する老獪な連中もいないわけではな い)であることを考えると、「歴史教育」(特に近現代史)を怠ってきた(ある いは、意図的に学習させてこなかった)ツケが回ってきているのではないか、と 思わざるを得なかった。先の東京オリンピック招致に関して、戦前の朝鮮植民地 政策は「公平だった」と発言した石原慎太郎東京都知事のような人間も、自民党(民主党)の若手政治家たちと同じ文脈から派生してきたことを、僕らはもっと真 剣に考えるべきではないか、と思った。
その②、もう既に国会を通って、ソマリア沖の「海賊対策」という形で自衛艦が 「海外派兵」されているが、これなどもアフガン戦争・イラク戦争への自衛隊出動 と同じように、明らかに「憲法違反」にもかかわらず、国会でもろくな議論が行 われなかったのと同様に、マスコミ・ジャーナリズムも含めて何故こうも「音無 しの構え」なのか。「国益」(貿易に従事している船舶を守る)という「大義」 の前には国権の根底を支えるはずの憲法も、その存在意義が認められないという のか。本当におかしくないか。自衛隊の海外派兵という点では、歴代の内閣が 「憲法違反」だと言い続けてきた「集団的自衛権の行使」に関して、麻生首相はそ れが可能かどうか検討するように指示を出したという。小泉純一郎―安倍晋三― (間に福田康夫を挟んで)麻生太郎、こう並べてくると、自民党総裁(内閣総理 大臣)は、この10年ほど「タカ派」(ネオ・ナショナリスト、ネオ・ファシス ト的な思想の持ち主)が続いてきている。小泉人気などがそうであるように、時 の政治は「国民(意識)の鏡」と言われることを考えると、国民の側にそのよう な人物を歓迎する風潮があるのかも知れないが、これは相当まずいのではない  か、と思えてならない。
その③、アメリカのオバマ大統領が「核廃絶」の演説を行い、世界に向かって 「核」を無くそう、と呼びかけたにもかかわらず、日頃は「緊密な日米同盟」を謳 っている人々(政治家たち)は、何故かオバマに同調するような発言を表立って する人がいないのは、どういうことなのか。このことは、彼らの本音が「核保  有」を認め、「核武装」をも辞さないということの現れなのか。もしそうだとし たら、例え北朝鮮の「核実験」「核ミサイル装備」などに触発されたとしたもの であっても、「ヒロシマ・ナガサキ」の体験を持つ日本の在り方に対する根源的 な「否定」であること、このことは肝に銘じておかなければならないのではない か。
その④、麻生内閣の支持率が10パーセント台から20パ-セント台の後半にまで 持ち直してきたという。これも不思議である。1万2000円(2万円)の特別 給付金をもらったからか。それとも、渋滞しか誘発しない「期間限定」(2年  間)の「高速道路料金1000円」が功を奏したのか、それとも小沢民主党党首 の「献金問題」によって、棚からぼた餅人気を得たのか知らないが、「年金問  題」や「不況対策」、「福祉・教育」「公務員改革」、「税金の無駄遣い」、  等々、麻生政権になって「改善」されたものは何一つなく彼が行ったのは「不況 対策」という名の「借金財政」の容認だけだ、と僕は思っているのだけど、それ なのに何故麻生内閣の支持率が上がるのか。僕には分からない。彼は今度の補正 予算で国立の「アニメ・漫画・映画図書館」を117億円掛けて作るということ だが、あくまでも「経営者」(麻生財閥の総帥)の感覚で政治をやろうとしてい るようだが、いい加減にして欲しい、と思うのは僕だけだろうか。

 と、ここまで書いてきて、このようなことに腹を立てている自分が嫌になってきた。なので、もう止めるが、僕らは自分の城に閉じ籠もることなく、アンテナをピ―ンと張って、世の中(政治や経済、その他)の動きを監視しなければいけないのではないか、と改めて思った。そして、それこそ「炭坑のカナリア」としての役割を持つはずの文学者の責務なのではないか、とも思った。



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