牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

気がかりな中国わら

2010-05-12 22:58:19 | 牛の病気


依然猛威を振るいつつある宮崎県内で発症中の口蹄疫である。
4月20日の公式発表以来3週間が経過した段階で70例を超し、予想だにしなかった経過である。
これは、初度の対応と畜産関係者の口蹄疫への認識の甘さ、つまりは危機意識の欠如に他ならない。
自らの家畜は自らで死守する意識が欠如していることの結果である。
10年前の経験が全く生かされていないことになる。
今更蛇足ではあるが、今回の感染については、空気感染が考えられ、その直接の原因は人による感染が最も高いと考えられる。
口蹄疫のキャリアを保有する関係者が他の牧場関係者と接触したり、対策会議を行うなどは感染のばらまき行為である。
家族などの出入りや公衆での接触、郵便配達や宅急便もその媒介になりかねない。
獣医師や家保、行政やJA関係者の出入りも無関係ではない。
飼料や畜産資材の納入業者もしかりであり、来場時にトラックの消毒を完全に行なっても、運転者は場内にて作業したり場員と接触し、次の牧場で同様な行為をすることで、感染を助長することとなる。
これらの誰でも思いつくような対策が、実際の行為としてはなおざりにされているのではないかと案じられる。
家保などの行政機関は、発症後ではなく日頃から、これらのマニュアルを提示しておくべきである。
この春、韓国で口蹄疫が発症した時点で、プレスリリースされていたはずであり、当方ではその時点で消毒等の対応を行ったが、それに伴って具体策のマニュアルも交付すべきではなかったろうか。
危機管理を徹底していただきたいものである。

10年前の口蹄疫の発症経路について、政府は中国産の麦わらではないかと発表した。
その根拠は明白にはされないままであり、「何で麦わらなのだ」と稲わらなら確率は低いがあり得ないこともなかろうと判断したものである。
その後、害虫問題もあり口蹄疫のことも含めて中国産稲わらは加熱処理が義務化されている。
これらの情報からか、JA等では中国産稲わらの扱いを中止したと噂を聞いた。
また、肥育関係者の中には、今回のことから中国わらを疑い国産稲わらに変更した例もあると聞いた。
中国産稲わらは、中国東北地区から輸入しているが、この一帯での口蹄疫の発症時例は情報になく、加熱することで安全性は確保されると、同わらの輸入解禁時に農水省は発表している。
気がかりではあるが、1,000頭からの肥育牛用の稲わらは、国産稲わらへと簡単には変更できかねている。
過去にウイートやバーリーストローでは、牛の健康や肥育成績上苦慮したことがあり、当分は冷静に中国産稲わらに固執する予定である。