牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

一人当たりの肥育頭数を考える

2009-02-13 00:04:39 | 予防治療


肥育場における労働量は、牛舎の収容能力や棟数、立地が傾斜地であるか否か、飼料給餌が人力なのか自動給餌機なのかなど、様々な条件によって、それぞれに異なるためにその適正人数は異なってくる。
これらに長けた経営者らは、それらの条件を網羅した上で、畜舎の建築に取りかかる。
例えば、70 ~100頭規模の牛舎で1,000頭飼養するケースと、200頭規模で2,000頭飼養する場合では、配置人数は両方とも同人数での管理は可能である。
200頭規模で各舎に自動給餌機が設置され、削蹄や牛床の入れ替え、導入や出荷牛の出し入れ運搬などを外部発注した場合は、3,000頭までは、6~7名でも管理は可能であろう。
当方の場合は前者であり、15棟に1,000~1,200頭を収容し、その全ての管理は、自前で行い、自動給餌機等は一切使用していなく、実質9名で管理することは前述した。
飼育効率を判断する場合、畜主がその成果を結果的に満足して始めて、効率良しと判断すべきであり、上記2例の場合、肥育成績に一長一短あると考えている。
通常、規模拡大するために、自動化や別注方式で人員を抑える経営を考慮するケースが多々ある。
この場合、肥育のノウハウを熟知した上でなければ、漸次問題が発生する。
枝肉相場が好調であれば問題はないが、その80%が4等級以下である現実と相場を考慮に入れれば、後は如何に事故率を下げるかに掛かっている。
とくに、現況では、死亡や疾患牛のままの出荷など事故率が経営の致命傷に繋がるケースがあるからである。
この様な対策として、舎内通路を50~60cm高尚にして房内の牛を見易くしているケースもある。
一方、当方では、肥育牛の事故率1%以下を本来の目標としているが、ここ7年間の平均事故率は0.5%未満を推移している。
作業の全てを手作業で行う場合は、一人で約130頭余りを管理するため、牛の顔を見ながらの給餌等の管理により、早期発見早期治療を行うことで、事故率が他に比し少ない原因であろうと判断している。
要は、一人当たり130頭管理するか、350頭管理するかであり、肥育牛1頭当たりの年間人件費を1万円にするか、2.5万円で配置するかである。
事故率や肥育成績に差がなければ、当然この前者の方が適正配置といえる。
問題は、物財費が掛かる牛ほどそれに比例して収益性があればよいが、現実はそれをものにするには厳しい現実がある。
この現実も、日頃の牛の体調が左右していることは否めない事実であり、それだけに牛の顔色を見届ける肥育経営こそが肝要であると考えている。


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4 コメント

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従事者のセンス(能力) (お邪魔・牛男)
2009-02-13 20:40:33
多頭化するほど、従事者のレベルが下がる。日給計算の牧場は特にその傾向がある。意欲を出させる為に好成績と無事故を推進して結果を出した人には賞与を出す様にしてます。コスト削減は大切ですが、人件費を下げると成績も下がるような気がします。天気・気温・月齢ステージを考えて、給餌量をコントロール出来る人は中々いない。
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牛の顔 (Piyo)
2009-02-13 20:52:51
(・ω・)/
小規模牧場の利点として、牛達の個性を把握出来る事が挙げられるでしょうか。
角の形状や体型で少々遠くからでも発情している牛の特定が容易に出来ます。
以前、
尻の形を見て間違えた牛が親子だった時、
少しは牛を見る目がついてきたかと嬉しくなったものです。
角がそっくりな親子、形は違うけど細くて黒い左右均等な角の姉妹など、
血縁関係のある牛はどこかしら共通点がある様に思います。
その意味でも出来るだけ除角はしたくないですね。

さて、
今日はセリに2頭上場しました。
どちらも日齢/体重はなんとか1.0と、
うちの平均からするとやや小柄でした。
県有×県有もなんとか平均以上。
北仁/平茂勝/安平はもう少し良かったけど、
予想より少し下回りました。
TV撮影(放映されなかったけど…)の時に私の頭を舐めてくれた可愛い奴でした。

(´∀`)/
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お邪魔・牛男さんへ (kuroiusi)
2009-02-14 17:40:46
貴重な体験談を有難うございます。
こちらでは、全員正社員です。
様々な記録をしていますが、導入牛・育成・仕上げと畜舎が移動するため、それらの記録も取っています。
週に10頭程度を2回に分けて出荷しますが、出荷牛の諸々の肥育結果を表にして、全員に見せています。
導入時は誰が、仕上げは誰が管理したかはすぐ判ります。
肥育日数に1頭1日当たりの物財費・人件費などを掛けて、単純な差益を計上します。
全員が、それらを見て、自らの成績を真摯に受け止めています。
当然僅かですが、報奨金制度や賞与もあります。
従業員らは、関わった牛を全て把握しています。
これらの表を提示できるのは、毎日のコミュニケーションがうまくいっている裏付けがあるからでもあります。
お陰で、年々肥育成績は向上していますが、昨秋から差益は良くありません。


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piyoさんへ (kuroiusi)
2009-02-14 17:50:07
市況を拝見しました。
厳しい状況が続いております。
それでも、piyoさんのは日頃の管理が結果に出ているようで、何よりでした。

piyoさんが飼い牛の特徴をあげられていますが、眼の中にそれらの牛の姿が見えてくるように理解できます。
明朝も彼らがpiyoさんを信頼して待ち受けてくれていることでしょう。
piyoさんちの牛たちは、環境に恵まれ飼い主に恵まれ幸せな牛たちですね。
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