☕コーヒーブレイク

時が過ぎていく。
ときには、その日の風まかせ。
ほっとひと息しませんか。

小さな珈琲店のママ

2015-03-07 18:18:24 | 日記
今から30年ぐらい前になる。当時名古屋市に住んでいて、家の側に
小さな喫茶店があった。

この店は、年の頃70歳前後のママさんがひとりで店を切り盛りしていた。
私は休日にこの店で、モーニングコーヒーを飲むのが習慣のように
なっていた。

椅子にかけ、コーヒーを注文すると、コーヒーといっしょに厚切り
トーストとゆで卵がセットになって出てくる。
当時この店のコーヒーは250円だったかなぁ、しかも午前中はこの
サービスがあり、新聞を読みながらゆっくりするのが楽しみであった。

やや重みのある、白いカップで出てくるコーヒーの味は濃いめであった。
古くて小さい店で目立たないこともあり、いつも客はまばらで、居ない
時もあった。

ママさんは「いらっしゃい」の一声だけで愛想もないが、コーヒーは
丁寧に入れてくれた。
ただ黙っての無駄のない立振る舞いを見ていると、なぜか落ち着き
時間がゆっくり流れていくようであった。

噂話で「あの店のママさんは無愛想で変わってる人」とか、耳にした
こともあった。しかし、私はママさんの心根の優しさを知っていた。

時々店から出てきて、小さい子どもたちが遊んでいると、腰を屈めて
同じ目線で何やら語りかけているところを何度か見ていた。

或る日、私の5歳の息子と3歳の娘が「店のおばちゃんにもらったよ。」
と嬉しそうに菓子袋を持ってきた。

後日、お礼を言うと「べつに~」と、いつものように愛想のない声が
返ってきた。
私はこの無愛想で媚びないママが好きだった。