(ゆやのながふじ 静岡県磐田市池田 国・県指定天然記念物)
池田の町並みの一角には、時宗摂取山行興寺があり、境内には樹齢800年(国指定分1株、県指定分5株)という長藤が枝を伸ばしている。この長藤を植えたのは平安時代末期の歌人でもあった熊野(ゆや)御前という。熊野御前は池田荘の荘官であった藤原重徳が、紀州熊野権現に子授けの願をかけ誕生した娘である。熊野御前は、遠江国司として着任した平宗盛の侍妾として京に上がったが、その後熊野御前の母が病気となり、宗盛を説得して郷里の池田に帰った。やがて母も宗盛も亡くなり、この地に念仏道場を建て十一面観音を信仰した。その熊野御前も三十三歳で亡くなり、正応三年(1290)念仏道場を寺として開山して今に至っている。手植えの長藤の下には、熊野御前とその母の墓が並んでいる。
行興寺の背後は、貞永年間に創建した真言宗遍照山西法寺が存在したが、現在は廃寺となっている。旧境内地が「豊田熊野記念公園」となっており、凡そ300坪の藤棚が設けられている。その一角には熊野伝統芸能館が併設され、熊野御前の物語を伝える謡曲「熊野」等の能が行われる。
この後は、香りの公園へと向かった。