それなりの ノタリ

地域活動がそれなりにやることがあって、かと言って、多忙というほどでもなく、ノタリの生活。

【共喰い】~~田中 慎弥

2012年07月22日 | 再開(読書)

先日、24年度上半期の芥川賞、直木賞の受賞者発表があったばかりだが、
今回は、平成23年度下半期の芥川龍之介賞を受賞した作品。
この単行本は今年の1月末に発刊になったが、もともとは去年の10月に
【すばる】という月刊誌で発表されたものだそうだ。

作者の田中 慎弥の略歴には以下の通りの説明がある。

昭和47年山口県生まれ。2005年新潮新人賞、2008年川端康成文学賞、
同年に三島由紀夫賞を受賞している。39歳だが、32歳の頃から頭角を
現している人のようだ。 でもボクは、この作家を知らなかった。
去年の芥川賞受賞のインタビューで「変な人だなぁ」と感じたくらいか。

 
どこか分からないが、山口県(だろう)の、とある田舎の猟師町が舞台のようだ。
タイトルの【共喰い】という言葉は一度も小説に出てこない。
なんとなくその雰囲気は漂っているが、誰と誰、何と何が共喰いなのか。。。

薄手の小説なので、感動も思索も感じないうちに終わってしまう。
もっと長編にして、作家の意図する構図をはっきり訴えた方が良いのでは、と思う。
それとも、ボクが歳のせいで、感受性まで枯渇するようになったんだろうか?
それじゃ本も読めないでしょ。楽しみが減る一方になる。怖い怖い!


風景描写はなるほどと思うが、芥川賞は一般に純文学と言われる。
しかし、登場人物の生き様はドロドロしていて、腐った魚の臭いまで漂ってくるように感じる。
グロテスクなイメージで、あまりいい気分になれない作品だった。

 それより、この単行本には【第三紀層の魚】という短編も収められている。
舞台はたぶん、関門海峡に面した下関市で、主人公は健気で釣りの好きな
小学生高学年の男の子。

曽祖父、祖母、母に対する優しさなどが描かれるが、
こっちの方が芥川賞に相応しいのではないかと思うほどに、純粋な気持ちが
伝わってくる作品だ。コチという名の魚、チヌ(クロダイ)という名の魚が周囲に登場
する話だ。印象に残るいい話であった。