あるお寺から修理を依頼されたお位牌。
数本あるうちの3本は写真のような形で「触れなば落ちなん」というよりも
「触れなば崩れん」という風情。
さらに修理を請け負ったものの、上部に入れられたらしい
家紋や文字の判読がかなり困難な状態。
最も文字がわかりにくかったのが写真のお位牌。
でも「修理」するからには修復後に文字までちゃんと復元しなくちゃ
話にならない。確認あるのみ!!!というわけで
ためつすがめつ位牌を囲んでしばしの評定。
上部の家紋はどうやら「葵の御紋」らしい。
(そもそも、なんでこんな片田舎に「葵の御紋」のお位牌が!?!?)
と、悩むスタッフ。
さらに、中央にやや大きく彫られた文字は「○○大権現」と読める。
他の9つの文字列は全て「○○院殿」。
でも○○部分の文字が判読しにくい。
!?!?!?
葵の御紋に大権現、とくればこれはひょっとして歴代将軍の
戒名を刻んだお位牌なのでは?????
ありました、ありました。
徳川家康の「東照大権現」に始まって
2代秀忠が「台徳院殿贈正一位大相国公」(位牌の右端上)
3代家光が「大猷院殿贈正一位大相国公」(上右から2番目)
この調子で10代家治まで。
やはり歴代将軍の戒名を刻んだお位牌のようです。
一緒にお預りしたお位牌の中に「浦氏歴代之霊位」というものもありました。
浦氏は江戸時代、この近辺の領主だった家だそうです。
おそらく浦氏は自分の菩提寺に
先祖代々の位牌だけでなく、主君(毛利氏)のそのまた主君である
徳川歴代将軍のお位牌までつくって、供養していた、ということでしょう。
この位牌をつくったときの浦家当主の実直な人柄が
思われます。
ひょうたんから駒。
意外なところで思わぬ歴史のお勉強、となったのでありました。