こころとからだがかたちんば

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音盤日誌:タキシードムーン「タイム・トゥ・ルーズ - ブラインド」1982年

2020-10-22 20:00:00 | 音楽帳


10月も下旬に入った。
ついに日没時間が17時00分を割り出し、早々にたそがれがせまってくる。17時過ぎ間もなくは、空に沈んだ太陽が残した光。七色の残照は雲と空を染めなす。
落ちていく太陽の一方では、三日月が低い位置から現れ 輝きを次第に増してくる。

夕方どきに室内に戻り、取り出してターンテーブルに乗せたのはタキシードムーンのレコード。これを聴くと、自分の音楽ルーツ、というか心のありかはヨーロッパなんだと再認識する。
ベルギーのクレプスキュールレーベルから出た12インチ「TIME TO LOSE - BLIND」。ところどころかすれてボロボロに傷んだジャケット。アルバムや曲により表情がかなり異なるバンドのある一枚。



A面
1/Time To Lose
2/Music #2
B面
1/Blind

・A面「Time to Lose」はスティーヴン・ブラウンのハモンドオルガン、ブレイン・L・レニンガーのヴァイオリン、両方が循環するミニマルな演奏を提示する。この上に、ウィンストン・トンのヴォーカルが絡む。途中から、校内放送的なエコーかかった語りがさらに乗っかる。後半はうっすらコーラスが聴こえ、ベースのドヨーンという音が部分的に響く。
文字化すると面倒臭そうに思えるが、私個人にはスッとこころに入ってくる。

オルガンとヴァイオリンの繰り返し描く音には少し明るい光が見えるきざしもするが、陽の差し具合は極めてにぶい。というか、演奏には昼間を感じない。この感じは、ソフト・ヴァーディクトやロスト・ジョッキーらの曲にも底通する。鬱と夢を共に抱えた者によくおとずれる一時的躁状態、みたいな感じだ。



・A面2曲目「Music #2」は、1曲目のざわつきと真逆、シンプルにピアノとヴァイオリンが美しいメロディを奏でる。憂いを帯びた静寂と響き。他2曲と異なり、この曲だけはインストゥルメンタル。サンフランシスコで結成された、というバンドだが、この曲が描く音像は明らかなヨーロッパ。模倣ではない真性のヨーロッパ。

・B面「Blind」は、ガラスをこすれてこもったようなエフェクト音、ノイズ、オルガン、シンセ、そこに、スティーヴン・ブラウンが風呂場で調子はずれのハナウタを歌ってるかのようなヴォーカル。それぞれの音はバラバラな印象で、折り重なるわけでもなく散乱している。そこにサックスが絡んでくる。聴く人によっては痛々しくも狂おしく聴こえることだろう。だが、狂気じみている(かのような)ぎこちないこの音に程良く違和感無い調和を感じる。

このレコードを室内で聴いていると、時代に無理して合わせず、追いかけず、世間に媚びずにいたら、平穏に生きられるのに、とバカなことを思う。


■Tuxedomoon 「Music #2 」'82■

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