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青弓社の新刊『クラシック知性主義』『クラシック野獣主義』に関連して、様々な推薦図書

2013年06月05日 16時14分00秒 | 雑文


 昨日のこのブログで、青弓社の今月の新刊『クラシック知性主義』と『クラシック野獣主義』についてご紹介しましたが、その最終ゲラ校正に併せて「執筆者のみなさまへ」として、面白い依頼がありました。
 この姉妹篇2点を出版したら、書店で関連書のフェアを展開するように各書店と交渉中、とかで、書店にプレゼンするために、「これは読んでおくべきだ」という推薦図書を少なくとも5点、できれば10点くらいあげてください、というものでした。もちろん出版社不問、和書・翻訳書不問、自著を入れてもかまわない、ということでした。

 このご依頼に、私は以下のような回答をしました。

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きょうの気分で思い付いたものに過ぎません。ちょっとこだわっているテーマにからんでいるだけです。「知」は「考察の基礎資料的な本」。「野」は「発想のヒントになる本」が私の基準。


《「知性主義」向け推奨図書》
●団伊玖磨『私の日本音楽史――異文化との出会い』(NHK出版)
●竹内貴久雄『ギターと出会った日本人たち――近代日本の西洋音楽受容史』(ヤマハミュージックメディア)
●小泉文夫『音のなかの文化』(青土社)
●佐川吉男『チェコの音楽』(芸術現代社)
●芳賀直子『バレエ・リュス――その魅力のすべて』(国書刊行会)

《「野獣主義」向け推奨図書》
●岩田誠『脳と音楽』(メディカル・ビュー社)
●チャールズ・ローゼン『ピアノ・ノート』(みすず書房)
●レッグ&シュワルツコップ回想録『レコードうらおもて』(音楽之友社)
●ロバート・チェスターマン『マエストロたちとの対話』(洋泉社)
●菅野沖彦『新・レコード演奏家論』(ステレオサウンド)
●竹内貴久雄『クラシック幻盤 偏執譜』(ヤマハミュージックメディア)
●シャルル・ミュンシュ『指揮者という仕事』(春秋社)
●吉田秀和『批評草子』(音楽之友社)
●山本茂『神童』(文芸春秋)
●和田旦『音と言葉のはざまで』(芸立出版)

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 以上のように、軽く流しただけだったのですが、友人の喜多見慧氏(彼は『知性主義』に一本寄稿しています。)が割と真面目にお相手しています。私の著書も入れてくれたので、「読んでね」とメールしてきたものです。面白かったので、彼の了解を得て、私のブログに掲載します。

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◎「知性主義」および「野獣主義」への共通推薦図書

1.雑誌「アルテス」(アルテスパブリッシング)創刊号における高橋悠治の「震災後の音楽などない」発言≪高橋悠治の真骨頂。胸のすく、あまりにもまっとうな発言。どうしてどうして彼の胸の激しい炎は消えていない≫

2.永井荷風の「ふらんす物語」(岩波文庫他)の、特に「付録」の音楽に関する記述≪畢竟、異文化との対峙、という視点で、日本の音楽評論は結局これを越えていない。海外での生演奏の体験回数を誇るだけの最近の書き手の楽天主義への、はるか過去からの大いなる皮肉≫

3.村上龍「コインロッカー・ベイビーズ」(講談社文庫)における「トロイメライ」に関する記述≪音楽が先入観によってしかなりたたない、という、音楽関係者が誰一人指摘し得なかった驚くべき鋭い指摘。もう一人の世界的に受けに入っている村上某の自分だけ判っているつもりのクラシック音楽に関するくだらない記述とは別次元。ジャズに対するブラジル音楽の優位についての文章でも判るように、この人はそうとう音楽の本質に肉薄していると思う。小説は漫画的だが≫

4.吉田秀和「たとえ世界が不条理だったとしても――新・音楽展望2000‐2004 」(朝日新聞社 )および「永遠の故郷」4部作(集英社)≪必ずしも吉田の著作の全てを肯定するものではないが、書けなくなった自分と、出発点に戻った方法論の再構築への真摯さ。音楽評論とは自らを語ることという意味で≫

5.長岡鉄男「ディスク漫談2 キメラの時代」≪私はオーディオでは決して長岡信者ではありません。が、「音楽については素人」を公言した彼の耳の確かさは大したものだと思います≫

6.竹内貴久雄「ギターと出会った日本人たち―近代日本の西洋音楽受容史」(ヤマハミュージックメディア)≪文献に対する徹底した視点と、一方、持論を展開するときの牽強付会を恐れぬ大胆さと勇気≫

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 青弓社さん。書店さんの関心が高まって、関連書フェアが開催されるといいですね。

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