廣松渉は『相対性理論の哲学』のなかで、次のように述べている。「アインシュタインには、弁証法的な否定性の論理や対話性の論理が欠けていることなどを指摘するまでもなく、これは体系構成法の外面的形式に関する一面に限られる。」これは貴重な見解に思えた。廣松渉の弁証法とわたしの弁証法を対照して展開できるのではないかと思えたのである。
『相対性理論の哲学』の優れた点は、アインシュタインの「原理」とカッシーラーの「函数」を結びつけたことである。しかし、かれは「函数」をアインシュタインの2つの原理(相対性原理と光速度一定の原理)ではなく、ローレンツ変換に見た。ローレンツ変換に「函数」を見る廣松弁証法を通して、2つの原理に「函数」を見る弁証法を展望する。
「相対性理論のなかの廣松弁証法――その生成と消滅」をまとめたので、案内する。
目次は次のようである。
はじめに
1 原始函数の整型と充当 ――弁証法の体系構成法
2 廣松弁証法の生成
3 廣松弁証法の消滅
4 弁証法の消滅と生成
参考文献
アインシュタイン/内山龍雄訳『相対性理論』岩波文庫1988
マルクス/向坂逸郎訳『資本論(1)』岩波文庫 1969
廣松渉『弁証法の論理』青土社 1980
廣松渉・勝守真『相対性理論の哲学』勁草書房 1986
カッシーラー/山本義隆訳『実体概念と函数概念』みすず書房1979
金子務編『未知への旅立ち』小学館 1991
湯川監修『アインシュタイン選集』3 共立出版 1971
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