対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

アインシュタインの下向と上向

2008-12-07 | アインシュタイン

 わたしは、アインシュタインの思考図式(G・ホルトンの図示)に、下向と上向を位置づけた。(「1905年における光の粒子性と波動性について」参照)

    アインシュタインの思考図式

 ここで、EJA過程(上昇する曲線)が下向である。Eは経験、Jは飛躍、Aは公理を表している。AS過程(下降する直線)が上向である。Aは公理、Sは命題を表している。

 下向と上向は、マルクスのことばである。アインシュタインは、「プロシャ科学アカデミーにおける就任講演」(1914 )のなかで、「課題の第一の部分と第二の部分」と言っている。わたしには、「下向」と「課題の第一の部分」、「上向」と「課題の第二の部分」は正確に対応しているように思える。

 理論家の方法としては、彼が種々の結論をそこから演繹してくる一般的前提、いわゆる原理をその基礎として用いることが当然必要になります。したがって理論家の仕事は次の二つの部分に分かれます。彼が第一にしなければならないのはこの原理を発見することであり、次には原理から出てくる種々の結論を展開しなければなりません。ここにあげた課題の第二の部分を果たすためには彼は学校において立派な準備を受けています。したがって、ある分野の、あるいは複雑に関連しあった現象に対して課題の第一の部分が一旦解決された暁には、十分な勤勉さと理解力をもってすれば成果には事欠かないでしょう。ところで課題の第一の部分、すなわち演繹に際して基礎として役に立つはずの原理を確立するということは、全く別の種類の仕事なのであります。この場合、目標に到達するのに、教えてもらえるような、組織だって応用すればよいという方法はなんら存在しません。むしろ研究者は経験的事実の厖大な複合体の中で正確な定式化を許すある種の一般的な特徴をつかむことによって、この一般的原理の本性を徐々にかぎつけなければなりません。一旦この種の定式化に成功したとなりますと、そこで種々の結果が展開されてくることになります。そしてそれが、原理が獲ちとられた経験領域をはるかに越えて、思いもかけない現象間の関連を与ることになるのがしばしばです。(『アインシュタイン選集3』所収)


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