対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

アブダクションは第三次性か

2024-05-29 | アブダクション
米盛祐二『パースの記号学』(勁草書房)は五年ほど前に挫折したが、こんど改めて読み直してみると、だいぶわかるようになってきた。読み直すきっかけは『言語の本質』でパースの記号論が取り上げられていて、「アイコン(イコン)」と「アブダクション」が焦点になっていたことだった。

振り返ってみると、以前わからなかったのは、現象学のカテゴリー1次性・2次性・3次性の理解が不十分だったことだと思う。

パースのアイコン(類似記号)は記号の表(3×3=9)の真ん中の列(第2次性、対象との関係における記号)の一番上(第1次性)に位置づく。そして、その列には指標記号(インデックス)、象徴記号(シンボル)が続く。

その右側の列(第3次性、解釈内容との関係における記号)には上から、「名辞」、「命題」、「論証」が並ぶ。3次性と3次性が交差する欄(右下)に「論証」が位置しているが、「アブダクション」はこの表には載っていない。

「論証」のなかに、演繹・帰納・アブダクションが位置づく。「演繹・帰納・アブダクション」と「1次性・2次性・3次性」の関係が問題になるが、定説はないようである(はっきりしていない)。パースは、1アブダクション・2演繹・3帰納と考えたが、米盛祐二は異論を提起し、1演繹・2帰納・3アブダクションと想定している。いいかえればアブダクションをパースは論証(推論)の第1次性と想定しているが、米盛は第3次性と想定している。中山正和も第3次性と想定していた。

こちらはパースの考えでいいのではないかと思っているが、もう少し検討が必要である。