怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「生物学的文明論」本川達雄・「生命のからくり」中屋敷均

2018-07-28 08:56:03 | 
文系スカスカ脳でも生物学は数式があまり出てこないし、身近な話題から入ることがあって、一般向けの本は比較的手に取るようにしている。
池田清彦のように、面白いけど「ホンマでっか」という話は半分エンターテイメントとして読んでいるのですが、今回の2冊はちゃんとした人がちゃんとしたことを書いてあります。

「生物学的文明論」の著者の本川達雄は、ベストセラー「ゾウの時間、ネズミの時間」の著者というとわかる人も多いはず。この本の方が文明論というだけあって範囲が広くて読みやすく書いてあります。もちろんゾウの時間、ネズミの時間に書いてあることにも触れています。心臓時計は15億回で止まるそうですが、ハツカネズミの心臓1拍は0.1秒。ヒトは1秒で、ゾウは3秒です。ハツカネズミの寿命は2~3年、ゾウは70年近いのですが、一生に心臓が打つ数はどちらも同じ15億回。これは哺乳類と鳥類について調べてみてもほぼ同じ。体重と時間にかかわる現象はそのほとんどが体重の4分の1乗に比例するそうです。ところで体重当たりのエネルギー消費量は、体重の4分の1乗に反比例。ここからエネルギー消費量に寿命という時間をかけてみると30億ジュールと計算されます。これはゾウもネズミも同じです。
それでは人はどうなのか。実は心拍数15億回だと40歳で寿命ということになってしまいます。人生80年と言われ、私もすでに65歳になろうとしているので寿命は尽きている…まあ、江戸時代はそうだったし、人の寿命は本来40歳代と言われれば、老眼は始まるし髪の毛も白くなったり薄くなったり。閉経にもなる。自然界には老いた動物は原則としていない。老いて衰えれば生き残るのが難しいのです。生物学的に言えば生殖活動が終わったものは速やかに消え去らなくてはいけないのです。
では40歳以降の生きている意味は?生殖活動に直接参加できなくても子や孫を育てるのに援助をして生存率を上げることができるのなら老いた世代が生きている生物的意義はある。
う~ん、おばあちゃんは役に立つけどおじいちゃんは金つるにしかならないような気も…
まあ、意義はともかくこの長寿は医学の進歩と衛生的な環境、豊かな生活の賜物で、ある意味技術が作り出した人口生命体!
妙に説得力はありますが、生きていてすいませんという気になってしまいます。子供たちに早く孫の顔を見せろというプレッシャーをかけることぐらいしか生物的は意味はないかも。
ところでヒトの年齢別エネルギー消費量を見てみると体重当たりエネルギー消費量では赤ん坊は非常に大きく20歳過ぎると緩やかに減ってくる。老人のエネルギー消費量は子どもの2.5分の1。老人の時間は子どもの2.5倍ゆっくりだということです。エネルギーをいっぱい使って色々なことをやると、後から振り返ると出来事がいっぱい詰まっていて長く感じる。エネルギーをあまり使わなければ少しのことしか行わないので振り替えればスカスカで時は短く感じる…歳を取ると時のたつのが早く感じるわけです。
時間のことばかりを触れましたが、この本にはもっとたくさんの興味深い議論が出ています。
生物と水の関係、生命は海から生まれたと言われていますが、水というものの特別な性質によります。詳しいことは読んでいただくとして地球外生物の有無は水が存在するかどうかで大きく左右され、火星に水があるのかなどと議論も生命の可能性に大きくかかわっているからです。生物の形についていえば基本は円柱形。平たい部分もある(木の葉とかトンボの翅とか)のですが、それには表面積が広いとよいから。一方人工物は四角くて硬いものが多い。体の設計原理と人工物の設計原理はあまりにも違っているのです。
ところでヒトも含めて恒温動物は休んでいる時にも体を温めてエネルギーを使っているので、食べ物から得たエネルギーのほとんどは熱として消えて行ってしまいます。吸収したエネルギーの97.5%は維持費として使われ、消えてなくなっています。体の成長や子孫という形で肉に変わるのはたったの2.5%だけ。
一方変温動物は食べ物から得たエネルギーの30%が肉になるとか。
10トンの草の山があるとすると、体重500キロの牛2頭に食べさせたとすると牛は草の山を14か月かかって食べ切って、その時の体重増加は200キロ。この草を体重2キロのウサギ500羽に食べさせてもできる肉の量は恒温動物ならみな同じで200キロですが、ウサギの場合は3か月しかかかりません。効率というか回転率なら断然ウサギです。
変温動物ならどうかと言うと10トンの草を体重1グラムのイナゴ100万匹に食べさせると9か月かかって食べ尽くして200万匹になるので2000キロの肉ができる!変温動物なら10倍も収量が上がる。これから食糧難の時代には昆虫食というものにも真剣に考えなくてはいけないかも。今でも東南アジアでは結構食べているみたいなので、昆虫食が人類を救うかも。
本川さんは実は専門は「ナマコ」の研究。ナマコの研究から見えてくることとか、サンゴ礁と生物多様性の仕組みとか興味深いことがたくさん出てくるのですが、ここでもう2千字を超えています。あとはぜひ読んでみてください。
ちょっと長くなったので「生命のからくり」については次に書きます。

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