怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「地球外生物 我々は孤独か」長沼毅 井田茂

2017-08-17 07:11:47 | 
久しぶりの岩波新書です。学生時代は新書と言えば岩波新書だったのですが、今では悠か彼方のこと。テーマが固いのと字が小さいので最近は手に取ることも少なくなったのですが、この本はそれなりに読みやすく理解できる範囲では知的好奇心を刺激されました。

長沼毅は生物学者、以前「死なないやつら」をレビューしたような記憶です。井田茂は天文学者で、専門は惑星系形成とか。
ところでこの本にも書いてありますが、天文学、惑星科学、物理学の研究者たちは、広い宇宙には「バクテリアなどの生命体は当然いるだろう」と思っていて、生物学者は「どこを探してもいるわけがない」と思っているとか。
地球が生まれて45億年余り、最初の生命体が出現したのは40億年前と言われています。この地球上の生物は同じような遺伝子を持っていて同じような遺伝暗号のシステムを使っているので単一の系統すなわち共通の祖先から発しているということは生物学会で意見が一致している。では最初の生命はどうやってできたのか。標準的な考えは無機物から有機物ができ、それが組み合わさって生命分子ができるというもの。条件さえ揃えば必ず声明は誕生するという「必然派」と生命は奇跡的に一回だけ誕生したという「偶然派」があって、天文学者のほとんどは必然派、生物学者は偶然派か両者の折衷派とか。
ところでどこで生命は生まれたのかというと、原始の海で無機物から有機物が合成され、そこからアミノ酸、塩基、リン酸などができ、それらが長くつながってたんぱく質や、DNAなどの核酸ができて生命に至ったという説と海底の火山周辺にある熱水噴出孔の鉱物の表面だと言う「パイライト仮説」、さらには火星から隕石に乗ってやってきたという説もあります。そんなに荒唐無稽な説でもなく40億年前の原始地球よりも当時の火星のほうが生命誕生に都合のいい環境だったとか。宇宙空間を飛んでくるのに生きていけるのかというと隕石の中心部にいれば何とかなりそうみたいです。今でもクマムシは乾燥した状態なら宇宙線でも低温でも凌いでしまうみたいですしね。
そこから誕生した生命体、バクテリアやアーキアがどのように進化してその過程はどの程度必然だったかということについて縷々書いてあります。バクテリアによって酸素が大量に大気や海洋に放出されたのならやがて酸素を消費する生物が出現し、酸素呼吸で大量のエネルギーを得る反面ラジカルが遺伝子を傷つけることから守るために、それは多細胞で神経系を持ち、有性生殖をおこなう生物が生まれるチャンスは十分にあることまでは言えるのですが、ヒトのように言語を持ち、高度な知性が発達したのは偶然の産物なのかわかっていません。
太陽系の惑星についてもいろいろ観測が進んで生命体の有無について調査されていますが、太古の火星では十分な大気もあって水もあったとみられています。生命誕生の有機物、熱源、液体という3条件はそろっていたかもしれませんが、現在の火星の状態では生命の存在はちょっと否定的みたいで痕跡も見つかっていません。
ハピタブルゾーンからは外れるのですが、潮汐加熱で内部海を作っていると思われる木星の衛星エウロパ、ガニメデではミネラルや酸素までも供給されている可能性もあるのですが有機物は見つかっていません。土星の衛星エンケドラでは全体が氷に覆われていますが、潮汐加熱が効いていて氷火山があり探査機の調査の結果、液体の水、有機物、熱源という条件がそろっていることが分かっています。知的生物は無理ですが生命誕生の手掛かりが分かるかもしれません。
ところで以前は地球のような惑星を持つ恒星はほとんどないと言われていたような気がするのですが、観測技術が進んだ今では銀河系の恒星の半分上に地球型惑星(岩石惑星)が存在することが分かってきたとか。その中で恒星からの距離とか大気の状態とか水の有無とかの条件から生命を宿しうる「ハピタブル惑星」は100億以上あるというのです。これだけあるとバクテリアぐらいはどこかにいるのではと思うのは当然でしょう。でもその生命のしるしをどうやって見つけるかというとこれまた大変なこと。
ただし、生命が誕生したとしてもそこから知的生命が誕生するのはほとんど奇跡としか言えない。知的生命がいるのかと電波を出していますが、もう50年余りの努力にもかかわらず一度たりともシグナルを受信していません。宇宙誕生からの時間の中で私たち人類がこうやって高度な文明を持ったのはほんの一瞬にすぎない。銀河系の中の星も全く同じ時間軸で生成した訳でもないので、仮に高度に発達した知的生命があったとしても宇宙的時間の中で共時的に存在するというのは奇跡としか言えない、ありえないと言ったほうがいいかも。

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