怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「偽りの保守・安倍晋三の正体」

2017-08-19 07:21:46 | 
宮城谷昌光の中国古代の春秋戦国時代を舞台にした小説の主人公、孟嘗君とか重耳、そして華元などの生きざまは、根本に道理があり礼がある。覇を求め私利に従うものは局面局面ではうまく立ち回っても徳がなく正道を外れていつの日にか滅びる。新自由主義が席巻する現代の感覚からするとまどろっこしいのだが、あの時代は天からの命を焦らず待つことも大事な才能みたいです。宮城谷の小説は校正する人も戸惑うようなやたらと難しい漢字が出てきて、ほとんどスルーしつつ大体の感覚で読んでいるとそのうちに宮城谷ワールドに浸ってくるんで読みだしたら一気に読まないと苦しいですね。
ところで今回取り上げたいのは「偽りの保守・安倍晋三」。宮城谷の小説の主人公と比べるのはいささか不公平ですが、覇道を求め私利を図り如何にも徳がないように感じられる。

岸井と佐高の対談なのでおよそそのトーンは察しが付くのだが、語られているのは戦後の保守政治家の懐の深さ。安倍のことはさておき、いくつかのエピソードには刮目します。
第二次佐藤内閣の官房長官だった保利は、全共闘各派の委員長連中を官房長官公邸に連日呼んで後藤田警察庁長官とも会わせている。もちろん両者とも極秘だったのだろうが岸井は当時の秘書官から聞いている。
丸山眞男は安保反対のデモの後自宅まで遠いので途中のある三木武夫の家に必ず寄って夜通し話し合っていたとか。三木は占領軍が次の首相はお前だという場面があったのだが、占領軍の意向で次の首相が決まるのは日本の民主主義にとってだめだと断っている。
佐高がさんざん批判した小渕恵三だがあるパーティ会場で一緒になると握手を求められて「批判する人も必要だから」と言われている。田中角栄は自分の評伝を、角栄番の記者の中で一番角栄にそっぽを向いていた人間を指名して書かせている。安倍は国会審議でもよくキレていたが「あいつだけは許さない」とか「あいつは今偉そうにしているけど、絶対に蹴落としてやる」としょっちゅう言っているそうだが、批判するものを許さず徹底的に叩こうとする人、安倍だけでなく習近平でもプーチンでもトランプも同類項なのだろうが、いかにも人間としての深みを感じない。
角栄の人心収攬術はすごくて運転手に心づけを渡すときに細心の心配りをしたとか、人の心の機微を掴んでいたというエピソードには事欠かない。佐高も評価するダーティーなハトということか。
中曽根についていえばダーティーなタカ。佐藤孝行と藤波孝生を金のろ過装置として人身御供にすることでのうのうと居座っておれたのは不沈空母にする、もっとアメリカ製品を買いましょうなどと露骨にアメリカに追従していたからと思うのですが、その中曽根にしても後藤田という煙たい存在を官房長官として使っていた。
ところで派閥の弊害がひどくて、それを解消すべきだと政治改革にまい進して結局小選挙区制になってしまったのだが、今になって派閥の効用の大きさにも気づかされる。
冷戦下社会党に政権を渡すわけにもいかず派閥による疑似政権交代を行うことによって国の進路を微妙に修正してきた。派閥は新人議員の育成機関でもあり政治が極端に行くことなくバランスを取っていた。
小泉純一郎は小選挙区制は総裁や幹事長の権限を肥大化させて独裁になるから反対。派閥はそれを防ぐと言っていた。ところで郵政選挙の時に刺客を送り込み、まさに自分が批判した独裁政治になるようなことをしていると岸井が言うと「目の前にこんないい制度があるんだ。使わない馬鹿がいるか」と言ったとか。小泉らしいというか…
直接の安倍のエピソードよりも多彩な保守政治家のエピソードと評価ばかりになってしまっているけど、同世代だからかもしれないけど人間的な深みがなくて安倍には語るべきエピソードがあまりないのではと感じる。得意げに話すアベノミクスについてもどこまで理解しているのだろうか。日本会議にはよくわからないままうまく取り込まれているのではないだろうか。為政者は追従ばかり言ってくるものに囲まれているということを心して肝に銘じておかなくてはいけないのだろうが、お友達ばかり集めてどうするでしょう。今回の内閣改造の目玉というべき河野太郎と野田聖子がどこまでそういった存在感を出すことができるのか。
フランスのルパン率いる国民戦線は日本では極右政党と言われていますが、彼らの理想は今の日本。移民に門戸を閉ざし、国籍は血統主義。よそ者に不寛容で愛国主義。実際に国民戦線幹部は言っているそうですが、そうなると今の安倍政権は極右政権?
それにしても対抗すべき勢力の情けなさですね。自民党内のリベラルは壊滅状態で民進党はいまだに鳩山、菅、野田首相のトラウマから脱していない。ポピュリズムの新興勢力が何をしたいかわからないまま一定の支持を集めている。
どうなる、この日本。

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