怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

岩村暢子「日本人には二種類いる」

2020-12-12 13:03:43 | 
このブログでも紹介した養老先生との対談を読んで、興味を持ったので岩村暢子さんの本を読んでみました。

色々なデータを駆使して非常に説得力のある議論なのですが、それによると1960年以降に生まれた人とそれ以前では、大きな断絶があって育てられ方とか考え方、行動原理が違うと。
それでは1960年に何があったのか?こういうマクロの話なので例外は多々あり当然ながら厳密に1960年1年でガラッと変わった訳ではないのですが、色々な指標が転回点であることを示しています。
出産場所ですが、50年台までは自宅がほとんどだったのですが、60年には施設出産とほぼ半々になり、以後圧倒的に施設出産になります。私は54年生まれですが病院生まれです。商家で自宅で産む場所もなかったこともあったのでしょうが、それはちょっと先進的。ちなみに恋愛結婚も増えています。働く人の内サラリーマンが5割を超えたのも60年。公団住宅が本格的に普及してくるのも60年くらいから。家庭の熱源が薪や木炭から電気プロパンガスに替わり水道普及率が5割を超えたのも60年。三種の神器とか3Cとか騒がれて家庭にすごい勢いで家庭用耐久消費財が普及してくるのも60年前後です。
そんな60年生まれの子どもは、おばあちゃんの経験より育児書を参考に、各種ベビー用品に囲まれ育てられる。権威主義的姿勢で大人の望む型に子どもをはめ込んでいくのではなく子ども一人一人の違いを個性として認め子ども自身の心を重んじる子ども中心の育児が推奨される。団地住まいは基本核家族で母親は専業主婦として家庭教育を担うことを期待されていく。
食べ物も60年頃から粉ミルクと離乳食が普及してくる。国産ベビーフードが初めて発売されたのは60年、それまでは2~3歳まで母乳中心でおかゆか重湯を与えていたと言われるとホンマかいなと思ってしまいます。
そんな60年以降生まれに合わせて、社会はどんどん変わっていきます。
ファミリーレジャー時代が幕開き、全国各地に子ども連れで楽しめるレジャー施設が出来てきます。カメラも普及し、レジャー支出の中で外食費も大きな割合を占めるようになってきます。
そんな60年以降生まれは生まれた時からテレビっ子。おやつも飴やせんべいからケーキとかチョコレートの洋菓子類が出て来てスナック菓子へと転換していきます。コカ・コーラとかファンタが出てくるのは58年とか。遊びもめんこ、おはじきからプラモ、ミニカー、プラスチックブロック、キャラクター模型と関連グッズ、着せ替え人形と大きく変わってきます。学習机とかランドセルが本格的に普及するのは60年生まれが入学するころ。それまでは勉強するのは茶の間のちゃぶ台だったと言われるとそうかもしれない。
子どものお稽古事が人気を集め拡大していったのも60年代。家庭料理は洋食化推進の中で肉や肉加工品、油脂をたくさん摂るためにメニューが変わり、味付けも油脂系調味料を使うようになってきた。レタス、キュウリ、トマトなどの洋野菜が増え、果物でもバナナ、イチゴ、レモンなどが家庭の日常の食生活に登場してくる。ラーメンとかカレーのインスタント食品が爆発的に普及しだし、60年以降の人は生まれた時からインスタント食品を食べていた。こんな食体験が加工食品への嗜好になっているかも。
食卓の会話はテレビ中心になり、家族の関係やコミュニケーションにも影響を与えるようになる。
朝食の欠食も60年代半ばから顕在化し、暮らしの中で年中行事が衰退し始め、古くからの行事食が廃れ始めてきた。核家族の中の中心的存在であるわが子の「誕生会」や子どもの喜ぶクリスマス会の方が重視されるようになってきた。家事や家業を子どもに手伝わせることはなくなり、代わりに子どもたちはアルバイトをしている。
縷々書いていくと確かに60年以降生まれが成長していくに従い大きく社会が変わり、その傾向が今も連綿と続いている。
54年生まれの私としては、その変化を子どものうちに垣間見た部分もあって、腑に落ちないながらも理解できる部分と理解できない部分が混在しているのですが、読んでいて非常に面白い論でした。
一緒に写っているのは、内田樹の「サル化する世界」。最初に題名の解説をしていますが、朝三暮四のサルのように物事を刹那的にしかとらえられないように世界がなっているということ。ブログや文春オンラインに書いたものをまとめているので、結構既読感があったのですが、改めてまとめて読むと知的好奇心を刺激されると言うか自らの蒙昧に目を開かされます。AI時代の教育論が一番印象に残りましたが、この教育がどうあるべきか深い憂慮とともに考えさせられます。本来長期的に考えなくてはいけない制度を、短期的な「当期利益至上主義」で設計していくことの恐ろしさは実感します。
2冊とも読みやすくて、呆然と世間を眺めていた私のものの考え方を揺さぶられました。お勧めします。

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