8月8日に日向灘沖でマグニチュード7.1の地震が発生。
それに伴い南海トラフ地震情報が出され発生可能性が相対的に高まると1週間の注意が出された。
間が悪いことに丁度8月のお盆前の書き入れ時で、旅館・ホテルのキャンセルとか海水浴場の臨時閉鎖、夏祭りの中止とか大きな影響が出た。
しかし今後30年以内に70~80%の確率で南海トラフ地震が起こると言うので、それに対する準備としてはいい機会だったともいわれている。でもこの注意情報でどれだけの経済損失が生じたのか。あまり外ればかりだとオオカミ少年になりかねない。
では本当に南海トラフ地震は今後30年で70~80%の確率で起こるのか?
この数字は別の地域では使われていない特別な計算式を使っていて、全国の地震と同じ基準で算出すると20%程度だと言う。
ホンマかいなと思うのだが、どうも南海トラフ地震の確率計算は突っ込みどころ満載みたい。
この本はそのおかしなところを調べて、地震科学よりも防災行政の要請、防災予算の獲得が重視されてきた実態を明らかにしている。

私は以前職場でいつ起こってもおかしくないと言われていた東海地震の前兆現象が確認され「予知」がされた場合の防災計画を想定しろとか言われて途方に暮れた経験があります。いつの間にか予知とか言われなくなって「予測」になったみたいですが、東海地震が起こる前に阪神淡路大地震が起き、東日本大震災が起こり、熊本、能登と地震が起こっている現実を見ると地震学者が言って来たことは何なのかと思ってしまう。
プレートのせめぎあう日本列島は不幸なことに断層は既知、未知含めてあちこちにあり、突然活断層として動くことは全国何処でもあり得る。人間の一生の時間、文明の織りなした歴史の時間と地球規模での地殻変動では時間軸が全く違う。数万年に一度の地殻変動もあり得るのだが、データとして確認できるのは高々数千年。予測可能性の信頼度についてはちょっとね~と思っている。
この本に戻ると、最初は地震学者の一人からの「南海トラフ地震の確率だけえこひいきされていて、水増しされている」という告発から中日新聞記者の著者による取材が始まった。
南海トラフ地震は「時間予測モデル」という計算モデルを使っているのだが、全国の地震で使っている計算式は「単純平均モデル」。
島崎邦彦東大名誉教授の発表した時間予測モデルは、次の地震が起こるまでの時間と地盤の隆起量は比例すると言う仮説で、実例として過去の隆起の記録が残っている高知県の室津港、千葉県の南房総、鹿児島県の喜界島をあげている。中でも室津港でのデータはモデルの理論にぴったりで、ここから南海トラフ地震の発生確率が算出されている。
室津港1か所のデータで静岡から九州沖までに及ぶ南海トラフ地震の発生時期を予測していいのか?モデルデータは宝永地震・安政地震・昭和南海地震の3つだけではデータが圧倒的に不足しているのではないのか。どうも地震学者の間ではこれまで通りの時間予測モデルの採用には疑問の声が上がっていて、せめて他の地震と同じ単純平均モデルと併記すべきと議論していたみたいです。
でも結局は南海トラフ地震の発生確率は今まで通り時間予測モデルを使って行われました。
この辺の経緯はさすが新聞記者の著者が情報公開制度を使い、関係者に取材して、明らかにしています。
発生確率が下がれば、安心情報と捉えられ防災・減災にとってマイナスになる。予算の獲得だって難しくなる。予算がつかず困るのは地震学者たちも同様で、地震科学よりも防災行政の論理が優先されたと言っていい。
ところで取材を進めていくとこの時間予測モデルで使われた数値にもいろいろ問題があることが分かってくる。
島崎氏のモデルでは室津港の沈降速度は年13ミリペースなのだが、国土地理院の測量した室戸岬の沈降速度は年5~7ミリ。モデルでは2034年に隆起した分すべてが沈降するのだが、国土地理院のデータでは21世紀末以降。
さらに室津港のデータの出典は江戸時代の役人の残した古文書に記されていた室津港の水深から計算したもの。しかし江戸時代の測量技術でそんなに精度の高いデータが得られるのか。舟の上から竹竿をさしてみたり、縄を落として調べたのか?
ここから記者の根性と言うか室津港の元データを徹底的に調べていきます。
いろいろな協力者がいて運よく江戸時代の記録にたどり着くのですが、そこには年号は不明で水深の測量方法の記述はない。誤差が大きく10センチ単位の精度で防災政策の根拠に出来るような代物ではないことが分かる。
さらに室津港では江戸時代より絶えずしゅんせつ工事が行われていて、人工的に掘り下げられてもいた。そうなると水深データは掘り下げた後のもの?
こうなってくると時間予測モデルは完全に破綻していると言えるのだが、既に広く喧伝されていて、確か養老孟司先生も2038年には南海トラフ地震が起きるので日本は大変なことになる。まあ、僕は多分生きていないけどなんて言っていたことがある様な。
予知などできないのにあたかもできるようなふりをして地震ムラの存在感を誇示して国民を脅して国土強靭化計画などの予算をつけて行くのがいいのか。
いつどこで起きるか分からない巨大地震なら日本に原発を作るのはあまりにも無謀に思うのですが、その面では日本に確率はともかく地殻変動が起きないところはないと地震学会は発言すべきではないのか。
新聞記者の書いたものなので非常に分かりやすく、記者の特権かいろいろな人に話を聞き、突撃レポートをしているので、読みごたえがありいろいろ考えさせられました。
それに伴い南海トラフ地震情報が出され発生可能性が相対的に高まると1週間の注意が出された。
間が悪いことに丁度8月のお盆前の書き入れ時で、旅館・ホテルのキャンセルとか海水浴場の臨時閉鎖、夏祭りの中止とか大きな影響が出た。
しかし今後30年以内に70~80%の確率で南海トラフ地震が起こると言うので、それに対する準備としてはいい機会だったともいわれている。でもこの注意情報でどれだけの経済損失が生じたのか。あまり外ればかりだとオオカミ少年になりかねない。
では本当に南海トラフ地震は今後30年で70~80%の確率で起こるのか?
この数字は別の地域では使われていない特別な計算式を使っていて、全国の地震と同じ基準で算出すると20%程度だと言う。
ホンマかいなと思うのだが、どうも南海トラフ地震の確率計算は突っ込みどころ満載みたい。
この本はそのおかしなところを調べて、地震科学よりも防災行政の要請、防災予算の獲得が重視されてきた実態を明らかにしている。

私は以前職場でいつ起こってもおかしくないと言われていた東海地震の前兆現象が確認され「予知」がされた場合の防災計画を想定しろとか言われて途方に暮れた経験があります。いつの間にか予知とか言われなくなって「予測」になったみたいですが、東海地震が起こる前に阪神淡路大地震が起き、東日本大震災が起こり、熊本、能登と地震が起こっている現実を見ると地震学者が言って来たことは何なのかと思ってしまう。
プレートのせめぎあう日本列島は不幸なことに断層は既知、未知含めてあちこちにあり、突然活断層として動くことは全国何処でもあり得る。人間の一生の時間、文明の織りなした歴史の時間と地球規模での地殻変動では時間軸が全く違う。数万年に一度の地殻変動もあり得るのだが、データとして確認できるのは高々数千年。予測可能性の信頼度についてはちょっとね~と思っている。
この本に戻ると、最初は地震学者の一人からの「南海トラフ地震の確率だけえこひいきされていて、水増しされている」という告発から中日新聞記者の著者による取材が始まった。
南海トラフ地震は「時間予測モデル」という計算モデルを使っているのだが、全国の地震で使っている計算式は「単純平均モデル」。
島崎邦彦東大名誉教授の発表した時間予測モデルは、次の地震が起こるまでの時間と地盤の隆起量は比例すると言う仮説で、実例として過去の隆起の記録が残っている高知県の室津港、千葉県の南房総、鹿児島県の喜界島をあげている。中でも室津港でのデータはモデルの理論にぴったりで、ここから南海トラフ地震の発生確率が算出されている。
室津港1か所のデータで静岡から九州沖までに及ぶ南海トラフ地震の発生時期を予測していいのか?モデルデータは宝永地震・安政地震・昭和南海地震の3つだけではデータが圧倒的に不足しているのではないのか。どうも地震学者の間ではこれまで通りの時間予測モデルの採用には疑問の声が上がっていて、せめて他の地震と同じ単純平均モデルと併記すべきと議論していたみたいです。
でも結局は南海トラフ地震の発生確率は今まで通り時間予測モデルを使って行われました。
この辺の経緯はさすが新聞記者の著者が情報公開制度を使い、関係者に取材して、明らかにしています。
発生確率が下がれば、安心情報と捉えられ防災・減災にとってマイナスになる。予算の獲得だって難しくなる。予算がつかず困るのは地震学者たちも同様で、地震科学よりも防災行政の論理が優先されたと言っていい。
ところで取材を進めていくとこの時間予測モデルで使われた数値にもいろいろ問題があることが分かってくる。
島崎氏のモデルでは室津港の沈降速度は年13ミリペースなのだが、国土地理院の測量した室戸岬の沈降速度は年5~7ミリ。モデルでは2034年に隆起した分すべてが沈降するのだが、国土地理院のデータでは21世紀末以降。
さらに室津港のデータの出典は江戸時代の役人の残した古文書に記されていた室津港の水深から計算したもの。しかし江戸時代の測量技術でそんなに精度の高いデータが得られるのか。舟の上から竹竿をさしてみたり、縄を落として調べたのか?
ここから記者の根性と言うか室津港の元データを徹底的に調べていきます。
いろいろな協力者がいて運よく江戸時代の記録にたどり着くのですが、そこには年号は不明で水深の測量方法の記述はない。誤差が大きく10センチ単位の精度で防災政策の根拠に出来るような代物ではないことが分かる。
さらに室津港では江戸時代より絶えずしゅんせつ工事が行われていて、人工的に掘り下げられてもいた。そうなると水深データは掘り下げた後のもの?
こうなってくると時間予測モデルは完全に破綻していると言えるのだが、既に広く喧伝されていて、確か養老孟司先生も2038年には南海トラフ地震が起きるので日本は大変なことになる。まあ、僕は多分生きていないけどなんて言っていたことがある様な。
予知などできないのにあたかもできるようなふりをして地震ムラの存在感を誇示して国民を脅して国土強靭化計画などの予算をつけて行くのがいいのか。
いつどこで起きるか分からない巨大地震なら日本に原発を作るのはあまりにも無謀に思うのですが、その面では日本に確率はともかく地殻変動が起きないところはないと地震学会は発言すべきではないのか。
新聞記者の書いたものなので非常に分かりやすく、記者の特権かいろいろな人に話を聞き、突撃レポートをしているので、読みごたえがありいろいろ考えさせられました。