怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

池井戸潤「ノーサイドゲーム」

2024-09-14 17:52:23 | 
人気の「半沢直樹」シリーズの著者の池井戸潤ですが、この小説では銀行ではなくトキワ自動車の経営戦略室次長の君嶋隼人が主人公。
小説のテイストは舞台が自動車会社と替わっても「半崎直樹」シリーズとほぼ同じで痛快な大団円。
それだけに安心して一気に読み切ることが出来ました。

今回の敵役は、まずは営業本部長の滝川。営業本部の推進するカザマ商事買収案件。法外な買収費用に異を唱える君島ですが、結果その買収案件は退けられたのだが、君嶋は横浜工場総務部長に異動、事実上の左遷となる。
横浜工場総務部長は当て職でラグビーチーム・トキワ自動車アストロズのゼネラルマネージャーとなる。
しかしそのアストロズは成績は低迷し、年間15億余の経費は取締役会の中でも営業本部長の滝川から問題視されていた。
君嶋はラグビーに関しては全くの素人なのだが、アストロズをいかに再生させて行くのか。
まず君嶋が取り組んだのは、ファンを増やしていくために地域密着で地域社会に支持され親しまれるチーム作り。ジュニアチームを作り、親子ラグビー教室や病院訪問やイベントでボランティア活動を行っていく。そうして毎回3千人そこそこの観客を増やしていこうとするのだが、蹴球協会にはマーケティング的な視点が全くない。2015年ワールドカップ以降リーグの観客動員数は減少の一途。協会はアマチュアスポーツだと言う建前なので伝統を遵守し、企業が金を出せばいいと採算を最優先して興行する気など全くない。
君嶋はそんな協会を変えていかなくてはと改革案を提案するのだが、会長の富永に一蹴されてしまう。
一方アストロズは監督が変わり変身を遂げようとしている。大学で3連覇した柴門監督が今まで牛耳っていたОBの反感を買い解任されて、ちょうどいいタイミングでアストロズに招聘。相撲部屋での出げいことか課題を明確にして対策を練り、高いレベルの攻撃ラグビーを作ろうとする。
シーズンが始まると柴門の指揮のもと好調を維持して、勝ち進む。結果シーズン総合順位3位となり、観客動員数も7千人と倍増。それでも収支改善できたのは5500万円。依然取締役会では厳しい意見がある中,何とか予算を通している。
そこに並行してカザマ商事買収案件が再燃。今度は買収金額を下げてなのだが、この案件にはある隠されたからくり、データの改ざんがあった。
偶然そのからくりに一端を知り、その顛末をかつての上司の脇坂に報告。脇坂はそれを題材に滝川を追い落とすことになっていく。
ただ、そこにはさらに隠された暗闘があって、滝川自身も上手く泳がされただけで、その裏には影で糸を引いていた真の悪役がいるのですが、最後にお約束の鉄槌の倍返しになっていきます。それは読んでのお楽しみ。
アストロズは新たなシーズンは新旧選手の入れ替えも上手く行って快進撃。宿敵日本モーター・サイクロンズとの決勝戦。ラグビーには詳しくない私でも迫力ある展開のスリングな描写は手に汗握る。ここは一気に読むしかない。
蹴球協会の中でも、さすがに現状のままではまずいと言う機運も生じてきたのか最後に理事会でのクーデターともいうべきどん伝返しが用意されている。
いろいろあるのだが最後はうまく回収されてお約束のカタルシスで、胸がすっとします。
それにしてもこの本では日本蹴球協会ですが、日本ラグビー協会は本当に改革されているのか。森喜朗が未だ隠然たる影響力があるようではなんだかな~なんですけど、どうなっているんでしょうか。それはラグビー協会だけでなくて日本の政治も同じなんですかね。
ところでこの「ノーサイドゲーム」はTBSの日曜21時の枠でドラマ化されているのですけど私は見ていません。ラグビーの場面は役者さんは大変だったんでしょうけど、見ているとまた違った読後感だったのか。でもネタバレがあっては興味半減だったかな。
コメント
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