怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

森 望「寿命遺伝子」

2023-10-22 18:32:42 | 
新書などで分かりやすいかと思ったのですが、bluebacksはなかなか難しい。文系頭の私には読み終えるのに一苦労しました。

日本人の平均寿命は生活環境・栄養状態の改善、乳幼児志望の減少も相まって80歳を超え、90歳間近に。世界一の長寿国と言えます。100歳超えの人が8万人以上とか。
ところで最長寿者はほぼ一定であまり伸びていない。
以前奄美大島の泉重千代さんが120歳まで生きたとされるのだが、その後戸籍の記録に疑義が出て今では亡くなった時の年齢が105歳程度だったと推計されているとか。当然ながらギネスブックの記録も取り消されたそうです。
世界最高記録としてフランスのジャンヌ・カルマンさんが122歳で亡くなったとされていましたが、この記録も疑義があって娘と入れ替わったなどとも言われ世界最高齢記録は幻となっています。
どうも人間の寿命には120歳の越えられない壁がありそうです。
双子の老化研究などによって人間の寿命に影響する度合いは概ね「遺伝3割、環境7割」だそうです。
環境は改善することが可能ですが、遺伝子レベルでは対処法があるのでしょうか。そもそも寿命に影響する遺伝子とは?
最近の遺伝子研究の進展てかなりのことが分かってきたのですが、この遺伝子が長寿に関係するかどうかを人間によって実験することはできない。ただ、遺伝子レベルであれば人間もマウスも重なる部分は多い。さらに言えばショウジョウバエとか線虫とか酵母菌でも同じような遺伝子を操作して実験をすることによって人間にもその影響を類推できる。
因みに酵母菌は真核生物であり、出芽酵母について言えば不等分裂をして母細胞は平均25回ほど娘細胞を生むとそれ以上分裂しなくなり寿命と考えられる。
線虫は寿命はほぼ2週間なので60日の観察で生存曲線を描くことが出来る。線虫の遺伝子を傷つけて長生きしている虫だけを拾い出し長寿ミュータントを探し出す。そのミュータントの遺伝子を解析して長寿遺伝子を探し出す。気の遠くなるような試行錯誤と地道な作業の繰り返しなのでしょうけどそうやって突破口が開かれていきました。
それが哺乳類でも確かめられるかというと、ここではマウスが実験動物となります。マウスの寿命は3年程度。老若の比較にも寿命測定にも時間がかかるのですが、ヒトへの応用には欠かせない作業です。
今のところおよそ12種類の寿命遺伝子が認められていて、その発見の経緯と実態を取りまとめたのがこの本です。
ところで寿命遺伝子が見つかっても、その遺伝子がどういうたんぱく質をつくり、それがどういう働きをして寿命に影響するのかを解明するのには大変な努力が必要で科学者の間でし烈な競争が行われています。その機序は、今でも完全に解明されたわけではありません。遺伝子が発動する時期も大切な要素で、発生時に発動するとその時点で生まれることが出来なくなるものもあります。そこから作られる酵素が単純に作用するのではなくてドミノ倒しのように連鎖して効果が出るものもあって、どうも寿命遺伝子が解明されれば寿命を決める因果関係が分かるわけではなく、そろそろ脳細胞の賞味期限が切れかけている私には何が何やら…寿命遺伝子の研究とその作用の解明によって人類の寿命が延びるのも夢ではないのでしょうけど、人類の不老長寿という見果てぬ夢を実現するには、まだまだクリアーしなければ関門は多そうです。
詳しく知りたい人は是非読んでいただきたいのですが、思うに遺伝子的に寿命がプログラムされていると言うことは、種の命にとっては個の命が適切な時期に消えるのが前提条件ではないでしょうか?人類にとっては個の寿命を延ばせばいいものでもないとも思うのですが、煩悩多き私としては個の命も出来るだけ伸ばしてほしいものです。
コメント
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