翁邦雄さんと言えば日銀出身で金融政策のプロ。
それがどうして移民とAI?
この底流にある問題意識は、人口が減少していく中での、日本の行く末。
それにしても専門の金融では、アベノミクスによる日銀の異次元の金融緩和によって戻るに戻れない所へ来ていて、ちょっとなるようになれという感じなのか。アベノミクスの評価についてははっきりと書いていませんが、異次元緩和を始めた時にはインフレ目標2%を確実に実現すると言って幾年月。効果を乏しく目標はいまだ実現されていませんが、黒田総裁は方針を変えていません。多分アメリカの景気につられてという面があるのですが不況に至っておらず景気が維持されているので問題が噴出していないことで適温相場になっているから不満が出ていないということなのでしょう。アベノミクスは効果の面ではほとんど評価に値しないかもしれませんが、そこが安倍首相の運のいいところでアメリカの長期好況と世界経済の成長によって日本経済も低速ながら上昇気流にあったので、これでいいのだとなっているのでしょう。
まあ、そんなことはさておき、人口減の中で日本経済はどうなっていくのでしょうか。
人口予測は出生率と死亡率によって決まってきますが、生産年齢人口(15歳から64歳)についていえば、戦争とかスペイン風邪の大流行でもない限り死亡率はほとんど変動しないし小さな値です。出生率が変動しても生産年齢人口に影響を及ぼすのが15年後と言うことになればその予測はかなり確度の高いものと言わざるを得ない。仮にみんなが子供を産み育てる社会になっても、そのことで働く人が増えるのは大学卒業まで考えると20年以上先にならないと働く人は増えないのです。
そこで重要になってくるのが移民。政府は移民という言葉は使いたくないのでしょうが国際的に見ればいろいろな名目で日本へ来て働いている外国人は移民と同じようなもの。彼らは当然ながら働き盛りで、既に日本の外国人入国超過数は2017年で年間14万7千人となっており、さらに増え続けていくのならば日本の総人口減少、高齢化率の上昇はかなり緩和されていく。ここに移民問題が注目される論点がある。
では移民をどう考えていくかだが、移民の質という問題がまずある。望ましいのは生産性上昇につながる高度人材の受け入れなのだろうが、各国と取り合いになり、正直日本の報酬、文化、言語の下では量的には大きな期待はできないのだろう。現実にはほとんどの外国人労働者が日本人のやりたがらないような仕事に技能実習生のような名目で働いている。その効果は外国人労働者と日本人労働者が代替的であれば賃金抑制的となる。多くの中小零細企業は技能実習生を安い賃金で雇用することに寄って何とか存続している。一方で外国人労働者及びその家族に対しても社会福祉制度を適用していくと財政的にはそのコストが問題になる可能性もある。
当然ながら外国人労働者は無色透明でその国に溶け込むわけではなく、ドイツの経験を見ても同化策は失敗している。イスラム原理主義と極右の台頭は社会の対立を拡大し、メルケルは多文化アプローチの失敗を認めざるを得なくなっている。
では日本の現状はどうなんだろう。外国人労働者は2009年には約45%が中国から来ていたのだが、2018年には数としては増えているのですが全体の26%に落ちている。代わりに大きく増えたのはベトナムで22%、ネパールの6%で、これは町のコンビニなどで働いている人を見ても実感できる。そう言えばカレーの店で働いているのはネパール人というところも多いような。治安を見てみると外国人犯罪が特に増えて治安が悪くなったというデーターはない。国際結婚では以前はフィリピン妻が多かったのが大きく減少している。これは興行名目での入国資格が制限されてきたことにもよるみたい。そう言えばひところ隆盛だったフィリピンパブもちょっと下火になっているのか。残念ながら私は全く縁がないのでわかりません。ベトナムは宗教的にも緩い仏教徒が多く日本人の多くと親和的であり、稲作文化も近しいものがあるので相性がいいのだろうか。
今までの議論と真逆なのだがAI技術の進展は、人間の仕事がAIに置き換わり、人手不足の時代から大失業時代になっていくのではという議論がある。果たしてAI化の進展によって既存の仕事はAIに代替されていくのだろうか。AIがどれぐらいの仕事を代替するのかはいろいろな予測があるのだが、それによって社会が変われば新しい職業が発生する可能性が高く、日本の生産年齢人口の減少の効果の方が大きいのだろう。需要超過の緩和がせいぜいで供給超過にまでなるとは思えないというのが翁先生の見立て。AI東大入試プロジェクトの結果からも偏差値60未満の能力でこなせる今のホワイトカラーのこなしている仕事はかなりの部分が置き換わるのではないかと思うのだが、不定形なタクスをこなす高度な人間の仕事は代替不可能であろうし、実際に最後の1マイルを届けるのは代替可能であっても人間の方がはるかにコスト的に安くできそうです。そうなると労働の二極分解が進み、格差問題が大きな課題となるのですけど。
全体に教科書的ですが、バランスよく論点が述べられていて、移民問題、AI問題を概観するには最適な本なんでしょう。
それがどうして移民とAI?
この底流にある問題意識は、人口が減少していく中での、日本の行く末。
それにしても専門の金融では、アベノミクスによる日銀の異次元の金融緩和によって戻るに戻れない所へ来ていて、ちょっとなるようになれという感じなのか。アベノミクスの評価についてははっきりと書いていませんが、異次元緩和を始めた時にはインフレ目標2%を確実に実現すると言って幾年月。効果を乏しく目標はいまだ実現されていませんが、黒田総裁は方針を変えていません。多分アメリカの景気につられてという面があるのですが不況に至っておらず景気が維持されているので問題が噴出していないことで適温相場になっているから不満が出ていないということなのでしょう。アベノミクスは効果の面ではほとんど評価に値しないかもしれませんが、そこが安倍首相の運のいいところでアメリカの長期好況と世界経済の成長によって日本経済も低速ながら上昇気流にあったので、これでいいのだとなっているのでしょう。
まあ、そんなことはさておき、人口減の中で日本経済はどうなっていくのでしょうか。
人口予測は出生率と死亡率によって決まってきますが、生産年齢人口(15歳から64歳)についていえば、戦争とかスペイン風邪の大流行でもない限り死亡率はほとんど変動しないし小さな値です。出生率が変動しても生産年齢人口に影響を及ぼすのが15年後と言うことになればその予測はかなり確度の高いものと言わざるを得ない。仮にみんなが子供を産み育てる社会になっても、そのことで働く人が増えるのは大学卒業まで考えると20年以上先にならないと働く人は増えないのです。
そこで重要になってくるのが移民。政府は移民という言葉は使いたくないのでしょうが国際的に見ればいろいろな名目で日本へ来て働いている外国人は移民と同じようなもの。彼らは当然ながら働き盛りで、既に日本の外国人入国超過数は2017年で年間14万7千人となっており、さらに増え続けていくのならば日本の総人口減少、高齢化率の上昇はかなり緩和されていく。ここに移民問題が注目される論点がある。
では移民をどう考えていくかだが、移民の質という問題がまずある。望ましいのは生産性上昇につながる高度人材の受け入れなのだろうが、各国と取り合いになり、正直日本の報酬、文化、言語の下では量的には大きな期待はできないのだろう。現実にはほとんどの外国人労働者が日本人のやりたがらないような仕事に技能実習生のような名目で働いている。その効果は外国人労働者と日本人労働者が代替的であれば賃金抑制的となる。多くの中小零細企業は技能実習生を安い賃金で雇用することに寄って何とか存続している。一方で外国人労働者及びその家族に対しても社会福祉制度を適用していくと財政的にはそのコストが問題になる可能性もある。
当然ながら外国人労働者は無色透明でその国に溶け込むわけではなく、ドイツの経験を見ても同化策は失敗している。イスラム原理主義と極右の台頭は社会の対立を拡大し、メルケルは多文化アプローチの失敗を認めざるを得なくなっている。
では日本の現状はどうなんだろう。外国人労働者は2009年には約45%が中国から来ていたのだが、2018年には数としては増えているのですが全体の26%に落ちている。代わりに大きく増えたのはベトナムで22%、ネパールの6%で、これは町のコンビニなどで働いている人を見ても実感できる。そう言えばカレーの店で働いているのはネパール人というところも多いような。治安を見てみると外国人犯罪が特に増えて治安が悪くなったというデーターはない。国際結婚では以前はフィリピン妻が多かったのが大きく減少している。これは興行名目での入国資格が制限されてきたことにもよるみたい。そう言えばひところ隆盛だったフィリピンパブもちょっと下火になっているのか。残念ながら私は全く縁がないのでわかりません。ベトナムは宗教的にも緩い仏教徒が多く日本人の多くと親和的であり、稲作文化も近しいものがあるので相性がいいのだろうか。
今までの議論と真逆なのだがAI技術の進展は、人間の仕事がAIに置き換わり、人手不足の時代から大失業時代になっていくのではという議論がある。果たしてAI化の進展によって既存の仕事はAIに代替されていくのだろうか。AIがどれぐらいの仕事を代替するのかはいろいろな予測があるのだが、それによって社会が変われば新しい職業が発生する可能性が高く、日本の生産年齢人口の減少の効果の方が大きいのだろう。需要超過の緩和がせいぜいで供給超過にまでなるとは思えないというのが翁先生の見立て。AI東大入試プロジェクトの結果からも偏差値60未満の能力でこなせる今のホワイトカラーのこなしている仕事はかなりの部分が置き換わるのではないかと思うのだが、不定形なタクスをこなす高度な人間の仕事は代替不可能であろうし、実際に最後の1マイルを届けるのは代替可能であっても人間の方がはるかにコスト的に安くできそうです。そうなると労働の二極分解が進み、格差問題が大きな課題となるのですけど。
全体に教科書的ですが、バランスよく論点が述べられていて、移民問題、AI問題を概観するには最適な本なんでしょう。