今週の1冊は「原因と結果」の経済学。
もう1冊有川浩の自衛隊ものラブコメも面白かったですし、ちょっと自衛隊にヨイショしすぎと思いつつ結構こういう胸きゅんとするようなもの好きなんですけど、内容を事細かに書いていくようなものではない。読みだすとやめられないので是非読んでください。
中室牧子と言えば「学力の経済学」が評判になった教育経済学者。まだ読んでいないのですが、内容は結構通説をデータによってひっくり返していると言うのでセンセーショナルだったとか。
この本は表題の通り、「原因」と「結果」をどう解釈していくかを論じたもの。もっともらしく二つも事柄を関係があるものとして原因と結果を判断している論が多いのですが、「因果関係がある」と「相関関係がある」を混同している場合も多い。結果、誤った判断をしてしまう。
ここで例を挙げているのは
・メタボ健診を受けていると長生きできるか
・テレビを見せると子どもの学力は下がるのか
・偏差値の高い大学に行けば収入は上がるのか
いずれもなり立ちそうなのですが、データをもとにした研究によると否定されている。
まず、因果関係を確認するためには3つのチェックポイントがある。
1.「全くの偶然」ではないか
よくあることですが、2つの事柄をグラフにプロットするとぴったり一致することがあります。ここでは「地球温暖化進むと海賊の数が減る」というグラフを出していますが、その他にもそういう例は多々あります。まずは偶然かどうか疑うってことです。
2.「第3の変数」は存在していないか
専門用語では「交絡因子」というのだそうですが、これが存在しているかどうか疑ってみることも必要です。「体力がある子供は学力が高い」というデータの陰には「親の教育熱心さ」という交絡因子があるかもしれない。そうだとすると無理やる体力だけつけても学力は上がらない。
3.逆の因果関係は存在していないか。
これはよくあることですが、どちらが原因でどちらが結果かよく検討しないと結論が反対になる。
ではこの3つが存在しないことをどう証明すればいいかというと仮に○○をしなかったらどうなっていたかという「反事実」と「事実」を比較することです。でも反事実は観察できないので「もっともらしい値」で穴埋めするとかするんですけど、これが厳密にしようとすると難しいんですよね。
では例題を検証してみると、デンマークのランダム化比較試験によると、健診を受ける12000人と受けない約48000人を10年にわたって追跡したところ健診で用リスクの人は5年間で4回保健指導を受け多くの人の生活習慣が改善したにもかかわらず10年後の死亡率の差は統計的に優位ではなかった。複数の研究を見た「メタアナリシス」によっても健診と長生きの間には因果関係がないことが明らかになっている。日本のメタボ健診には巨額の税金が投じられているがその効果は如何?
ところで医療費の自己負担と健康の間について調べたランド医療保険実験によると医療費の自己負担割合と人々の健康状態の間には因果関係がないとか。医療費の自己負担割合の増加はコンビニ受信を防ぎ、国全体の医療費の抑制につながるのです。ただし貧困層に対しては別途手当てが必要みたいですけど。もう一つこれは日本の研究ですが高齢者の医療費の自己負担割合が増えても死亡率は変わらないとかで、自己負担率が引き下げられると病院に行く回数は増えても死亡率とか健康状態に影響が出ることがないんです。でも自己負担割合に手を付けるのは政治的に不人気な政策ですので実現には困難が伴いますね。
医師に性別と患者の因果関係を調べてみるとアメリカの研究では男性医師よりも女性医師が担当した患者の方が0.4%30日死亡率が低いとかで、今度入院する時には女性医師を出来たら指名したいものです。
アメリカではテレビ放送免許の関係で48年からテレビを見ることができた地域と52年以降しか見ることができなかった地域があり、両者を比較して子どもの学力を調べてみたら、幼少期にテレビを見ていた子どもたちは小学校に入学した後の学力テストの偏差値が0.02高かった。特に英語が母語でなかったり母親の学歴の低い子どもはテレビを視聴することによる成績アップの効果は大きいと。テレビを見た子どもは馬鹿になるんではなかったんだ。
ところでこれまたアメリカの研究ですが学力の高い友人に囲まれて高校生活を送っても自分の子どもの学力にはほとんど影響がないそうです。あんまり無理して有名高校に入ることもないみたいです。
アメリカの研究である大学に合格して実際に進学したグループと合格したけどその大学ではなくて別の偏差値の低い大学に進学したグループの卒業後の賃金を比較したところ統計的に有意な差はなかったのです。「問題は、どれが最高の大学かということではない。問題は誰にとって最高の大学かなのだ」
この本はあるジュエリー会社の広告宣伝の効果をどう判断するかということを具体的な簡単な数値とともに考えさせていきつつ因果関係をどう判断するかという言ことの手法について興味深い研究を引用しながら順に述べていっています。特に難しい統計学の数式が出てくることもなく、まあ重回帰分性なんかも最近はパソコンで数字を入れればできるの心配なくとスルーしつつ解説しているので文系の私でもスラスラ読めました。もっともらしい相関関係に騙されがちなので情報リテラシー能力を高めるためには是非一読を。
もう1冊有川浩の自衛隊ものラブコメも面白かったですし、ちょっと自衛隊にヨイショしすぎと思いつつ結構こういう胸きゅんとするようなもの好きなんですけど、内容を事細かに書いていくようなものではない。読みだすとやめられないので是非読んでください。
中室牧子と言えば「学力の経済学」が評判になった教育経済学者。まだ読んでいないのですが、内容は結構通説をデータによってひっくり返していると言うのでセンセーショナルだったとか。
この本は表題の通り、「原因」と「結果」をどう解釈していくかを論じたもの。もっともらしく二つも事柄を関係があるものとして原因と結果を判断している論が多いのですが、「因果関係がある」と「相関関係がある」を混同している場合も多い。結果、誤った判断をしてしまう。
ここで例を挙げているのは
・メタボ健診を受けていると長生きできるか
・テレビを見せると子どもの学力は下がるのか
・偏差値の高い大学に行けば収入は上がるのか
いずれもなり立ちそうなのですが、データをもとにした研究によると否定されている。
まず、因果関係を確認するためには3つのチェックポイントがある。
1.「全くの偶然」ではないか
よくあることですが、2つの事柄をグラフにプロットするとぴったり一致することがあります。ここでは「地球温暖化進むと海賊の数が減る」というグラフを出していますが、その他にもそういう例は多々あります。まずは偶然かどうか疑うってことです。
2.「第3の変数」は存在していないか
専門用語では「交絡因子」というのだそうですが、これが存在しているかどうか疑ってみることも必要です。「体力がある子供は学力が高い」というデータの陰には「親の教育熱心さ」という交絡因子があるかもしれない。そうだとすると無理やる体力だけつけても学力は上がらない。
3.逆の因果関係は存在していないか。
これはよくあることですが、どちらが原因でどちらが結果かよく検討しないと結論が反対になる。
ではこの3つが存在しないことをどう証明すればいいかというと仮に○○をしなかったらどうなっていたかという「反事実」と「事実」を比較することです。でも反事実は観察できないので「もっともらしい値」で穴埋めするとかするんですけど、これが厳密にしようとすると難しいんですよね。
では例題を検証してみると、デンマークのランダム化比較試験によると、健診を受ける12000人と受けない約48000人を10年にわたって追跡したところ健診で用リスクの人は5年間で4回保健指導を受け多くの人の生活習慣が改善したにもかかわらず10年後の死亡率の差は統計的に優位ではなかった。複数の研究を見た「メタアナリシス」によっても健診と長生きの間には因果関係がないことが明らかになっている。日本のメタボ健診には巨額の税金が投じられているがその効果は如何?
ところで医療費の自己負担と健康の間について調べたランド医療保険実験によると医療費の自己負担割合と人々の健康状態の間には因果関係がないとか。医療費の自己負担割合の増加はコンビニ受信を防ぎ、国全体の医療費の抑制につながるのです。ただし貧困層に対しては別途手当てが必要みたいですけど。もう一つこれは日本の研究ですが高齢者の医療費の自己負担割合が増えても死亡率は変わらないとかで、自己負担率が引き下げられると病院に行く回数は増えても死亡率とか健康状態に影響が出ることがないんです。でも自己負担割合に手を付けるのは政治的に不人気な政策ですので実現には困難が伴いますね。
医師に性別と患者の因果関係を調べてみるとアメリカの研究では男性医師よりも女性医師が担当した患者の方が0.4%30日死亡率が低いとかで、今度入院する時には女性医師を出来たら指名したいものです。
アメリカではテレビ放送免許の関係で48年からテレビを見ることができた地域と52年以降しか見ることができなかった地域があり、両者を比較して子どもの学力を調べてみたら、幼少期にテレビを見ていた子どもたちは小学校に入学した後の学力テストの偏差値が0.02高かった。特に英語が母語でなかったり母親の学歴の低い子どもはテレビを視聴することによる成績アップの効果は大きいと。テレビを見た子どもは馬鹿になるんではなかったんだ。
ところでこれまたアメリカの研究ですが学力の高い友人に囲まれて高校生活を送っても自分の子どもの学力にはほとんど影響がないそうです。あんまり無理して有名高校に入ることもないみたいです。
アメリカの研究である大学に合格して実際に進学したグループと合格したけどその大学ではなくて別の偏差値の低い大学に進学したグループの卒業後の賃金を比較したところ統計的に有意な差はなかったのです。「問題は、どれが最高の大学かということではない。問題は誰にとって最高の大学かなのだ」
この本はあるジュエリー会社の広告宣伝の効果をどう判断するかということを具体的な簡単な数値とともに考えさせていきつつ因果関係をどう判断するかという言ことの手法について興味深い研究を引用しながら順に述べていっています。特に難しい統計学の数式が出てくることもなく、まあ重回帰分性なんかも最近はパソコンで数字を入れればできるの心配なくとスルーしつつ解説しているので文系の私でもスラスラ読めました。もっともらしい相関関係に騙されがちなので情報リテラシー能力を高めるためには是非一読を。