非常に挑戦的な題名です。

アベノミクスの功罪はいろいろと言われていますが、日本経済には円安がよくてデフレは何とかして終わらせようという議論ばかりで、「円高」と「デフレ」を積極的に評価しようという意見はあまり目にしません。
そもそもデフレとは何かという議論があるのでしょうが、普通に考えて物価下落の負のスパイラルの中、経済がどんどん縮小して行くこと。
では現下の日本経済はデフレなのか?
失われた20年の間も名目成長率は下がっていても実質成長率は伸びていました。今の失業率はほとんど完全雇用状態。何としても対処しなくてはいけないデフレ状態とはちょっと違う。あえて言えば人口の高齢化が進む中で、それでも日本経済は順調に成長している、と言われると少し違和感があるのですが、成長率が低いのは日本経済の潜在成長率が落ちているのであって、デフレのせいではない。経済は低いながら成長しており失業率も低く物価も落ち着いて順調です。
無理やりインフレに持っていくのは日本経済に却って悪い影響を与える。しかもインフレにするために円安にすれば、輸出よりも輸入が大きい中、家計にはマイナスになるばかりです。もはや目端の利いた輸出企業は海外にどんどん工場なり事業所を移転、あるいは進出していて、だからこそアベノミクスで円安になっても輸出数量としては増えなかったのです。海外で儲けた利益は円安で日本円換算すれば大きくなりますし、当然株も上がりますが、中小企業や家計には円安は恩恵がなく逆効果しかありません。そう言えばトリクルダウンという言葉も聞かなくなりましたよね。
いつまでも昔のイメージで日本は貿易立国で輸出依存度が高いと思っている人が特に高齢者で多いと思いますが、日本の貿易依存度は先進国の中では低い方。エネルギーなどの資源は輸入せざるを得ないのですから円安の負の効果はしっかり見ないといけないのですが、今この効果が見えていないのは原油安があるから。逆に言えば日本経済は原油安という大変なボーナスを円安によって活かすことができないのが現状です。
リフレ派は今、日本経済がなかなか成長軌道に乗らないのは消費税増税の悪影響と言っていますが、原油安は消費税増税の負の効果以上の恩恵をもたらしているはずです。問題はアベノミクスの効果がなかったということなのです。
世にいうアベノミクスなるものの3本の矢ですが、実質的には黒田日銀総裁による異次元の金融緩和の一本足打法。結局国民のだれにも痛みを伴わない政策で乗り切ろうとしています。ですが少し考えただけでもその出口戦略は困難を伴うものとなりそうですし、長い目で見れば日本経済を大きく毀損する可能性があります。
一国の中央銀行の役割は、貨幣価値を守ることであって、貨幣への信任を守ることです。現在行われている異次元の緩和は全く逆のことをしています。利子率が低いのは投資効率が低いことを反映しているのであって、どんなに貨幣を供給し、マイナス金利にしようと投資リターンが期待できなければ企業は投資をしません。国債のファイナンスにはなるかもしれませんが、ご承知の通り政府支出は非効率かつ成長には貢献していない。
ここは異論が多いと思いますが、現在の日本経済は需要不足ではなくて供給不足。だから貯蓄より投資ではなくて消費より投資。う~ん、今の日本経済は消費し過ぎで消費を政策で刺激することは成長の阻害になる、必要なのは人的投資と実物投資と言われると問題なのは短期需要刺激に偏っている政府支出の方向であって、それこそ政府支出でないとできないのではと思うのですけどね。
日銀がどんどん現金を供給しても、銀行は借り手が出てこないので貸すことが出来ず結果として当座預金にブタ積みされている現実を見ると需要不足であって供給不足とはとても言えないし、低利と言えども利子率を上回る生産性向上が望める効果的な投資先がないということだと思うんですけど。
後半にはアベノミクスにドップリつかっている日本経済の現状を鑑みての処方箋を書いてありますが、私なりにその背景を理解すると現状認識として過去の高度成長の成功体験にいつまでもとらわれることなく、現下の潜在成長率なり高齢化なりの日本の姿をよく考えなさいと言うことなのでしょう。
指標として名目GDPや株価、物価指数だけを見るのではなく、一人当たり国民所得や失業率を見るべきということになります。政策判断をする際に何を根拠にするかということは非常に大きな論点で、今の安倍政権はとにかく「株価」さえよければ良しという感じですが、将来に大きな禍根を残すことになるのでしょう。そう思うとアベノミクスを評価しているのは金融系の人が多いですよね。でも出口戦略がにっちもさっちもいかなくなる頃にはアベノミクスを推進していた人はうまく逃げているかも。
それにしても政治の世界ではこんな本質的なアベノミクス論争というのはほとんど聞こえてこないのですが、これでは対抗軸がないですね。誰にも痛みがともなわずにうまくいくなんて言ううまい話はないはずなのに、みんなフリーランチを食べようとしているんですか。なんだかな~。
中身は固い本ですが難しい数式も出てこないし、やたらと強調する太字があったりして体裁は経済知識に疎い一般人向け。結構読みやすいですよ。

アベノミクスの功罪はいろいろと言われていますが、日本経済には円安がよくてデフレは何とかして終わらせようという議論ばかりで、「円高」と「デフレ」を積極的に評価しようという意見はあまり目にしません。
そもそもデフレとは何かという議論があるのでしょうが、普通に考えて物価下落の負のスパイラルの中、経済がどんどん縮小して行くこと。
では現下の日本経済はデフレなのか?
失われた20年の間も名目成長率は下がっていても実質成長率は伸びていました。今の失業率はほとんど完全雇用状態。何としても対処しなくてはいけないデフレ状態とはちょっと違う。あえて言えば人口の高齢化が進む中で、それでも日本経済は順調に成長している、と言われると少し違和感があるのですが、成長率が低いのは日本経済の潜在成長率が落ちているのであって、デフレのせいではない。経済は低いながら成長しており失業率も低く物価も落ち着いて順調です。
無理やりインフレに持っていくのは日本経済に却って悪い影響を与える。しかもインフレにするために円安にすれば、輸出よりも輸入が大きい中、家計にはマイナスになるばかりです。もはや目端の利いた輸出企業は海外にどんどん工場なり事業所を移転、あるいは進出していて、だからこそアベノミクスで円安になっても輸出数量としては増えなかったのです。海外で儲けた利益は円安で日本円換算すれば大きくなりますし、当然株も上がりますが、中小企業や家計には円安は恩恵がなく逆効果しかありません。そう言えばトリクルダウンという言葉も聞かなくなりましたよね。
いつまでも昔のイメージで日本は貿易立国で輸出依存度が高いと思っている人が特に高齢者で多いと思いますが、日本の貿易依存度は先進国の中では低い方。エネルギーなどの資源は輸入せざるを得ないのですから円安の負の効果はしっかり見ないといけないのですが、今この効果が見えていないのは原油安があるから。逆に言えば日本経済は原油安という大変なボーナスを円安によって活かすことができないのが現状です。
リフレ派は今、日本経済がなかなか成長軌道に乗らないのは消費税増税の悪影響と言っていますが、原油安は消費税増税の負の効果以上の恩恵をもたらしているはずです。問題はアベノミクスの効果がなかったということなのです。
世にいうアベノミクスなるものの3本の矢ですが、実質的には黒田日銀総裁による異次元の金融緩和の一本足打法。結局国民のだれにも痛みを伴わない政策で乗り切ろうとしています。ですが少し考えただけでもその出口戦略は困難を伴うものとなりそうですし、長い目で見れば日本経済を大きく毀損する可能性があります。
一国の中央銀行の役割は、貨幣価値を守ることであって、貨幣への信任を守ることです。現在行われている異次元の緩和は全く逆のことをしています。利子率が低いのは投資効率が低いことを反映しているのであって、どんなに貨幣を供給し、マイナス金利にしようと投資リターンが期待できなければ企業は投資をしません。国債のファイナンスにはなるかもしれませんが、ご承知の通り政府支出は非効率かつ成長には貢献していない。
ここは異論が多いと思いますが、現在の日本経済は需要不足ではなくて供給不足。だから貯蓄より投資ではなくて消費より投資。う~ん、今の日本経済は消費し過ぎで消費を政策で刺激することは成長の阻害になる、必要なのは人的投資と実物投資と言われると問題なのは短期需要刺激に偏っている政府支出の方向であって、それこそ政府支出でないとできないのではと思うのですけどね。
日銀がどんどん現金を供給しても、銀行は借り手が出てこないので貸すことが出来ず結果として当座預金にブタ積みされている現実を見ると需要不足であって供給不足とはとても言えないし、低利と言えども利子率を上回る生産性向上が望める効果的な投資先がないということだと思うんですけど。
後半にはアベノミクスにドップリつかっている日本経済の現状を鑑みての処方箋を書いてありますが、私なりにその背景を理解すると現状認識として過去の高度成長の成功体験にいつまでもとらわれることなく、現下の潜在成長率なり高齢化なりの日本の姿をよく考えなさいと言うことなのでしょう。
指標として名目GDPや株価、物価指数だけを見るのではなく、一人当たり国民所得や失業率を見るべきということになります。政策判断をする際に何を根拠にするかということは非常に大きな論点で、今の安倍政権はとにかく「株価」さえよければ良しという感じですが、将来に大きな禍根を残すことになるのでしょう。そう思うとアベノミクスを評価しているのは金融系の人が多いですよね。でも出口戦略がにっちもさっちもいかなくなる頃にはアベノミクスを推進していた人はうまく逃げているかも。
それにしても政治の世界ではこんな本質的なアベノミクス論争というのはほとんど聞こえてこないのですが、これでは対抗軸がないですね。誰にも痛みがともなわずにうまくいくなんて言ううまい話はないはずなのに、みんなフリーランチを食べようとしているんですか。なんだかな~。
中身は固い本ですが難しい数式も出てこないし、やたらと強調する太字があったりして体裁は経済知識に疎い一般人向け。結構読みやすいですよ。