怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「英国一家 日本を食べる」マイケル・ブース

2015-07-25 07:09:13 | 
ひょんなことから夫婦に6歳と4歳の息子たちの一家が日本へ来て、東京、札幌、京都、大阪、福岡と日本料理を食べ歩く。
初めての日本で日本文化と日本食を体験してどう感じどう思ったかイギリス人の目に映った食紀行です。

取材ということもあるのですが、一家4人での3か月余りの日本旅行。最初は東京(宿泊は青山のウイークリーマンション)で3週間過ごし日本になれてから、札幌を中心に北海道で10日間、そこから京都(宿泊は最近よくある町家を改造したホテル)へ飛んで3週間、そして食い倒れの街大阪に行き、新幹線で福岡へ。さらには沖縄で2週間過ごしてまた東京に戻って数日過ごすという、これっていくら掛かるのか。取材費をたくさん貰っているのか、羨ましい限りです。
それにしても外国人それもアジア系とかアフリカ系とかでなくて西洋人というだけで日本人はいかに歓待することか。子ども連れということもあってか厨房の中とか普通の日本人では決して入れないところにも案内してもらっています。
相撲部屋に行きちゃんこ料理を食べ、スマスマの収録スタジオに行き、菊乃井の村田料理長には歓待され、さらには服部栄養専門学校長の服部幸應とか辻調理師専門学校長の辻芳樹にも歓待され施設をくまなく案内され食事にも招待されるとは、この人そんなに世界的に有名なフードライターなの?私もというかほとんどの日本人も体験したことがないようなこともたくさん触れることができていたので、ちょっと妬みが出てきますが、ラーメン、たこ焼きから懐石料理まで、初めて出会った日本料理の評価は視点が違ってなかなか面白い。外国人にどうやって日本を売り込むべきなのかヒントがたくさんあるような気もします。
日本に来た際には固く守るべき誓約リストというのもあるのですが、これは結構今の日本文化の捉え方として笑ってしまいます。
で、日本料理の評価はというと
焼そば;日本に来て最初に食べたもの。新宿歌舞伎町で食べる。冷静に判断しても癖になる味
ちゃんこ鍋;とてつもなく熱いけど、素晴らしい料理
てんぷら;絶妙な味わいでカリッとしていて衣が油で光っているのに食べてみると全然油っぽくない。子どもたちの好物のトップに躍り出る。
クジラ料理;一通り食べたけどぜひもう一度食べたいというものではなかった
札幌ラーメン;最後のスープ一口まで飲み干し、あろうことかここからカニを食べ再度ラーメンを全部食べてから餃子を頼む。相撲取りか!
カニ料理;札幌のカニは最初は物足りない感じだったけど味覚倒錯しそうになるほど官能的。何故たらふく食べておかなかったかと反省しているけどラーメン食べすぎでしょう。
流しそうめん;わざわざ貴船神社近くの店まで行き食べたのだが、子どもたちには大人気。残念なことに一番下流の父親のところにはあまり流れてこなかった。
日本酒;著者の訪れた蔵元「玉乃光」のお酒は飲んだことありますが美味しかった記憶です。
お好み焼き;パンケーキとトルティーアのハイブリッド。半分くらいキャベツなのでヘルシーで世界に進出できるのでは。ちなみにたこ焼きはタコのぶつ切りが入った小さなドーナッツとか。
ところで最後に服部幸應に連れられて銀座の「壬生」というお店に行くのですが、ここは一見さんお断りというか看板も出していなくてネットにも載っていない電話帳にも載っていない。当然ながら予約もできずに誰かメンバーの紹介で一緒に行くしかないというから「美味しんぼ」の美食倶楽部みたいなお店です。そこの料理は当然ながら日本料理を極めた味なのですが、それはつまるところ「出汁」の味。65ぐらいのおじいさんが一人で作っているみたいなのですが、本当にこんな店があるんですね。
まだまだいろいろ消化されていますが、軽妙な文章でスラスラ読めます。
どうやら好評だったみたいで、続編も出ました。
「英国一家、ますます日本を食べる」です。ちょっと安易な題名ですが、内容が前作で書ききれなかったことなのでこんなもんでしょうか。

ここで取り上げられているのは、料理に限らず文化というか風俗というかということも多いのですが
築地市場:今外国人に人気の見学場所ですが、業務に支障が出ることも多くて制限しているとか。就学前の子ども連れはちょっと非常識でしょう。日本人なら許されないことですね。でも魅力的な場所には間違いありません。特に食通を自認する人にとっては。
焼津:カツオの日本で三本の指に入る水揚げ港(あとの二つはというと枕崎に高知?かな)です。鰹節の製造工程では本当にカツオを余すところなく利用しています。ここで最高級の鰹節を買っているのですが鰹節削りがなくて冷蔵庫で眠ったまま。
わさび:天城山で本物のわさびを体験。ここで病み付きになったのでサメ皮のわさびおろしを探さないといけないとかっぱ橋の道具街を彷徨うのですが、やっとの思いで買って、それを持って帰ってもわさびは手に入らない…
枯山水:京都のお寺では子供が枯山水のお庭に入ってしまいあわてて退散。
高野山:精進料理のことよりも奥の院に無謀にも?夜に出かけたときの感じた神秘的な雰囲気が印象的。
松阪牛:今でも和田金の牛は焼酎をかけてマッサージしてビールを飲ませているのですが、著者も実際に体験。でも肉質が軟らかくなるのは、マッサージの直接的効果ではなく、リラックスさせることで牛が喜ぶからとか。著者自身はとろけるような肉よりも西洋人らしくもう少し肉らしいほうが好きみたいです。
醤油:キッコーマンの工場を訪ねていますが、それには物足らないのか四国のかめびし屋という昔ながらの製法で醤油を作っているところにも行っています。ここでは50年熟成させるという醤油も作っているそうです。ちなみに10年物で1瓶9千円とか。
フグ:下関に行って恐る恐るフグを食べていますが、フグ刺しは期待はずれだったみたいです。白身のフグの味を分かるのは難しいのかな。でもフグの唐揚げには感激していました。
牧志公設市場:わたしも家族で行ったことあります。1階で食材を選んで2階で料理してもらって食べる。写真ではテーブル一杯になっていますが、ついつい買ってしまうんだよね。
エピローグには2014年に家族で日本再訪したことが書いてありますが、その時には名古屋にも来て「河文」で食事したみたいです。高級料亭なのでなかなか行けないんですが一度だけ行ったことがあります。料理もいいのですが、あれは雰囲気を愛でる店ですね。
ということでまんまと続編まで読んでしまいました。
コメント
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