カトリック社会学者のぼやき

カトリシズムと社会学という二つの思想背景から時の流れにそって愚痴をつぶやいていく

仏壇を祭壇に ー ポスト・コロナの五島列島巡礼の旅(2)

2020-10-17 18:10:40 | 教会

 五島列島の教会巡りをして一番強い印象に残ったのは、仏教式の「仏壇」がそのままカトリックの「祭壇」に使われていることだった。現代だけではない。キリシタン時代からの慣習の継続なのだろうか。
 カトリックに戻った潜伏キリシタンの家では幼児洗礼だから、家には普通の家庭祭壇があるだろう。
 だが、現在の日本で成人洗礼を受けた人のなかでほとんどの人は仏教的環境の中で育っており、家にいわゆる「仏壇」がある人も多いことだろう。仏壇の前で朝夕お祈りする人は少ないとはいえ、中には先祖の位牌が納められているだろう。洗礼を受けた後、この「仏壇」を「祭壇」に切り替える人が多いという。
 切り替えると言っても、仏壇には位牌とともに大日如来やお釈迦様の仏像が納められているだろうからこれは取り除かねばならない(1)。しかし実際には仏壇の中には位牌しかおかれてなくて、仏像もお札もないケースが多いとも言う(2)。つまり、切り替えはそれほど大変なことではないと言うことになる。

 新しい祭壇、キリスト教では「家庭祭壇」と呼ばれることが多いが、ではどういう形になるのか。あらたに購入する家庭祭壇は、いわゆる「現代仏壇」と外観などそれほど変わらない。昔からの「仏式仏壇」をそのまま使う場合には、教文館やサンパウロの説明を見ると、決まりはないがそれでも一定のパターンはあるようだ(3)。
 中央に十字架を飾る。御像(キリスト像)を飾ることもあるらしい(4)。左右にマリア様と蝋燭。お花を飾る花瓶(花立)もあればよいようだ。

 いずれにせよ、伝統的な仏壇をほぼそのまま祭壇にして使うことが普通になってきているようだ(5)。

 ついでに、お墓に関しても今回の巡礼の旅で学ぶことが多かった。まず、仏式、キリスト教式の墓地が多い。しかも街中に突然現れてくる。仏式の墓の墓碑の墓銘に「金文字」が施されているのもあまり見慣れないので驚いた(6)。

(頭ヶ島カトリック墓地)

 

 墓碑銘は洗礼名と氏名だ。カトリックでは個人墓が中心だが今では土葬はない。最近は(戦後は)墓地不足のせいか仏式と同じように「家庭墓」が増えているという。いわゆる「~家の墓」という形式だ。キリシタン墓地にも見られたのには驚いた(7)。

 キリスト教は日本社会では結婚式の世界には入り込むことに成功したが、まだ葬儀の世界には入り込めていない。クリスチャンではないけれど、お葬式は教会で、という時代が来るのだろうか。


1 取り除くと言っても、どのように処分するかは難しいようだ。私の知り合いのお坊さん(真言宗)によれば、頼まれれば引き取ると言うが、結構複雑な手続きが必要になるようだ。
2 つまり、仏壇の前でチーンとお祈りするのは、仏様に祈っているのではなく、位牌に(先祖に)祈っていることになる。また、お盆や命日にお墓参りに来て、本堂に立ち寄らずに(お祈りせずに)、そのままお墓に直行し、お線香を上げ、そのまま立ち去る姿は珍しくはない。日本の大乗仏教はここまで変質してきている。これは批判や評価ではなく、宗教(特に仏教)の土着化が最後にたどり着く姿のように思える。
3 キリスト教では教会での祈りが中心だから、重要度で言えば家庭での祈りは教会での祈りより重視される程度は低い。といっても家庭で家族みんなでお祈りする時にはどうしても必要になってくる。そのうえ、位牌があればさらに必要度は高まってくるだろう。
4 磔刑像と復活のイエス像のどちらが好まれるのかはわたしにはわからない。我が家は十字架だ。なお、プロテスタントでは十字架は飾っても御像は飾らないようだ。御像を拝むのは偶像崇拝に近づくという説明が多いが、議論しだしたらそれこと神学論争になってしまうので、止めておきたい。
5 カトリック中央協議会はこういう問題に関しても、歴史的経緯を考えて見解を表明しているが、抽象的であまりはっきりしない。あえて教義的に縛るより、暫くは信徒の判断と行動に任せておいた方がよいのかもしれない。
6 ガイさんの説明によると、理由にはいくつかあるようだが、結局は中国との交流の影響ではないかと言っていた。カトリックでも金文字を入れる墓もあるようだ。この習慣は九州に広く見られるらしい。
7 五島のキリシタン墓地では土葬された遺骨を掘り起こしてもう一度火葬して納骨する作業が続いているらしい。家庭墓にするためだ。私が所属する教区のカトリック墓地でも家庭墓は普通になりつつあるという。だがこれは家族全員が信者であるという前提の上で初めて可能になる話なのだろう。。

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