本にだって雄と雌があります 価格:¥ 1,890(税込) 発売日:2012-10-22 |
というのが岸本佐知子さんの煽り、確かにこれは奇書である
最初のうちはいささかダラダラしてる、退屈かも、ギャグを連発するがかなり滑ってるし書いてる本人もそれを認めてる、こいつが何者かというと普通のサラリーマン、まだ幼い息子にいつか読ませようとPCのキーボードを打っている、奥さんには読まれたくない、何せ彼女は毒舌で知られる書評家なのだ、なぜ故この二人が結婚したかというと、そこにはこいつの祖父さんが関与する奇想天外な事情(ネタバレ自粛)があるのだが・・・
祖父さんはちょっと知られたタレント学者で大変な蔵書家だった、四男二女の次男だが兄貴は戦後すぐ狂犬に噛まれて(こんなスサマジイ描写に必然性ありやと言えば・・・たぶんない)、一人の弟は生まれてまもなく(この弟の存在に必然性ありやと言えば・・・たぶんない)亡くなり、もう一人の弟は戦地で行方不明になったので(この状況に必然性ありやと言えば・・・これはなくもない)実家を継いだ、しょーもないジョークばかり言ってるノー天気なオッチャンだったが実は戦争中二等兵として南方へ送られ「バダン死の行進」から生還したという稀有なる経歴の持ち主、ここでの体験はとんでもなく悲惨でかつとんでもなくファンタスティックなものであったのだが、この悲惨きわまりない描写に必然性があるかと言えば・・・・実はない、全く作者(著者である)の趣味、どういう趣味かというと別に悲惨が好きなわけではなく、一番の笑いどころを提供するための壮大な下準備なのだ、いやホント、私は絶対そうだと思う、それまでの滑ったギャグにはほとんど笑わずに読み進んでたのがここへ来て大爆笑、久々に「通勤バスの不気味」を実現してしまったのである・・・・
言いたいことは実はこんだけ、奇書の奇書たるユエンはギャグではなく壮大なストーリー展開にあるのだが、それは他の方が書いておられるから屋上屋を架す必要はあるまい、またこの展開わからんことはないけど私の趣味からすればいささかホントらしくなさ過ぎ、ファンタジーがホントらしくなくて何が悪いかと言われても困るんだが、いかんせん私はミステリを実在だと思ってる人種なのだ、いやはっきり言おう、未来は不確定なのだからあんまし遠未来にお話の着地点を持って行くのは避けるべきだと思う、論より証拠、30年前の私たちは「コンピュータグラフィックス」がこんな短期間でここまでリアルに近づくなんて思いもよらなかったし、「電話」がこんな小さくなってみんなが持って歩くものになるなんて想像もしてなかった、幼い息子が老人になる頃(あ、ネタバレごめん!!)世の中がどうなってるか(そも印刷した本がまだ存在してるかどうかなんて)予測もつかないのだよ、わかるかな、著者殿?一行のギャグを書くために数十ページの悲惨を費やすアホらしさこそ私の良しとするところで・・・(上から目線)
とか言いながらもう一つ気に入ったギャグがあった、祖父さんの長男、つまり語り手の伯父さんは政治家、それも大阪で衆議院当選13回というヴェテラン議員(残念ながら大物とは言えない、ああよくわかるその感じ)、今は息子(つまりイトコ)が後を継いでるがこいつは政治家に向いてない、「正直でいい人なんだが」・・・アハハハ、確かにそら政治家に対するホメ言葉じゃないわね、といったお母さんの兄弟たちに関するこれまた長ったらしいジョーク(冗句)の連発に必然性があるかと言えば・・・これはまあなくもないよ、全部じゃないけど一部は(ああ、どこまで行っても上から目線)
とまあ言うわけでできたら買って読んでちょ、在庫切れらしいし、注文入れば喜ばれると思うよ