事件記者のページ

遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

犯人は男か女か

2009-05-10 14:48:43 | ミステリ
塔の断章 (講談社文庫) 塔の断章 (講談社文庫)
価格:¥ 600(税込)
発売日:2003-02

鮎川哲也のとある短編より

A「おい、しっかりしろ、誰にやられた、犯人は男か女か?」
B「犯人はお・ん・な」
C「私は男だよ、Bはそれを知ってたんだ、私が犯人だったらヤツは、犯人は男だと言ったハズじゃないか」

普通そんな訊き方せんと思うけど・・・でもこれ犯人当てクイズに出したら(犯人の性別を含めた)ホントの意味での正解者はゼロだったそうである(本人談)

さて乾くるみさんのこの長編、例によって(?)ブクオフでゲト、「マリオネット症候群」のシッチャカと違ってごくオーソドックスな犯人当てだが、作者が解説で思いっ切りネタを割ってるというルール違反なミステリである(何でもネット・レビュアが誰一人苦心の手がかりを読み取ってくれなかったとのことで・・・・・)

メイントリックは、とあるキャラの性別が不明なこと-というかホントは女性なのだが、男性と誤解されるよーな書き方をしてる-らしい、らしいというのは私にはどう読んでも女性としか思えなかったからで、ひょっとしたらホモの男性かもわからんけど、それがどーした、どっちだっていーじゃないかという感じ(いやもちろんミステリとしては手がかりが正しくならないからよくないが)

以下ネタバレ、読んでない方はご注意を
問題は性別よりも彼女の行動が不可解だということ、愛する男をかばうためにとんでもないことをやってしまうのだが、ラストになるまでその男のことを気にかけてる様子が全然ない、別の男に惹かれてる、もちろん自己申告だからホントのことを書いてないだけという言い訳はできるだろが、そらミステリとしてアンフェアだ
また被害者が彼女に勝つために彼女から男を奪おうとしたというのも変、被害者の方がその男とずっと深い付き合いだったのだ

遠い昔、我が敬愛する佐野さんが「色恋沙汰というのは殺人の動機としてどこでも使える万能接着剤みたいなもの、だからこそ使わないで家を建てるのが腕のいい大工だ」てなことをおっしゃった(ウロ覚えでゴメン)、接着剤だって正しく付けないと家は建たないよね

というわけ、このヒトの作品は本格よりシッチャカの方が圧倒的におもしろい、以上報告オワリ