日々雑感

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フイシャーデイースカウ7-4

2012年05月21日 | Weblog
フイシャーデイースカウ

もう何十年も昔の話になるが、一時期同氏に凝ったことがあった。と言ってもシューベルトが大好きで、未完成はじめ彼の歌はほどんど聞いた。夜中誰もいないところで、薄暗い電球を頼りに聞いていたが、その時の歌手が彼だった。
大きいところは大きく、か細いところはどこまでもか細く、同じ人間としてどうしてこんなに上品に歌えるのだろうかと思い思い、作品はほとんど聞いが、もうすでに忘れたものも大部ある。でもただ{冬の旅」だけは頭の中にのこっている。彼の曲は何時も深夜過ぎに聴くことにしていたが、どうしてこれだけ僕を引きつけるのだろうかとその魅力について考えたことがあった。新聞にも書いてあるが{冬の旅}とシューマンの「詩人の恋」を筆頭にドイツ歌曲の分野では完成度の高さと解釈の深さで並ぶ物がない。そうだろう。僕もドイツ人ではしらない。僕の場合つまるところ彼の持っていた歌唱哲学に魅せられていたのだろう。

彼は単なる美声の持ち主で,声のコントロールがうまいだけではない。彼の歌唱にはそれ以前に哲学がある。少なくとも芸術がある。洗練されたその知性の上に歌が載せられているのだ。シューマンは余り好きでないから聴かないが
シューベルトは僕の作曲の原点でもあるので、レコードはすり切れるほど聞いた。
ルイ・アームストロングのジャズも聞いたが、人間の叫びを地声で歌うジャズにくらべて、デイスカウの歌は数段上の格式があった。

彼は来日したが講演会で直接話を聞くチャンスは逃した。、朝日新聞にかれの談話が載ったのでそれを読んだ。思ったことは歌の前に作詞作曲があるので、それを如何に解釈して自分の声で表現するかと言う発言はその通りだと思った。声楽家の話としてでは無くて作曲家についての心構えを説かれているような気がして、彼を先生と呼びたかった。

今日の新聞に20世紀最高の歌手の一人とされるデイスカウさんの死が報じられていた。86才。安らかな死だとか。 ご冥福を祈る。