聖書のはなし ある長老派系キリスト教会礼拝の説教原稿

「聖書って、おもしろい!」「ナルホド!」と思ってもらえたら、「しめた!」

2022/1/9 Ⅰ列王記3-9章「賢い王ソロモン」こども聖書㊷

2022-01-08 12:48:47 | こども聖書
2022/1/9 Ⅰ列王記3-9章「賢い王ソロモン」こども聖書㊷

 ソロモン王の事を、イエスは
「栄華を極めたソロモン」
と言いました。ソロモンの時代、父王のダビデの時代よりも更に北に領土を伸ばしました。ソロモンは主のために立派な神殿も建てました。その経済力で、豪勢な生活をしたことも分かります。実に「栄華を極めたソロモン」でした。



 しかし、ソロモンの働きの中で最も注目したいのは、彼が神から知恵を授かったことです。王となったばかりの彼に、主は夢に現れて、

…主は夜の夢のうちにソロモンに現れた。神は仰せられた。「あなたに何を与えようか。願え。」 Ⅰ列王記3章5節

 こう問われて、何をソロモンは願ったでしょうか。それが、知恵でした。

善悪を判断してあなたの民をさばくために、聞き分ける心をしもべに与えてください。さもなければ、だれに、この大勢のあなたの民をさばくことができるでしょうか。」 3章9節

 これは主の御心にかなう願いでした。

11 神は彼に仰せられた。「あなたがこのことを願い、自分のために長寿を願わず、自分のために富を願わず、あなたの敵のいのちさえ願わず、むしろ、自分のために正しい訴えを聞き分ける判断力を願ったので、

 富や敵の命では無く、判断力を願った。そこで、

12見よ、わたしはあなたが言った通りにする。見よ。わたしはあなたに、知恵と判断の心を与える。あなたより前に、あなたのような者はなく、あなたの後に、あなたのような者は起こらない。13そのうえ、あなたが願わなかったもの、富と誉れもあなたに与える。あなたが生きている限り、王たちの中であなたに並ぶ者は一人もいない。14また、あなたの父ダビデが歩んだように、あなたもわたしの掟と命令を守ってわたしの道に歩むなら、あなたの日々を長くしよう。」

 こう言われて、ソロモンは大変賢い知恵をもって、民の問題を裁きます。遠くの国から質問に来た王たちの相談にも、賢く答えたソロモン王でした。私たちも、神様に何を願うかと考えたら、愚かな願いをしないように、賢い判断力、知恵を願いましょう。愚かな願いから救って、知恵を下さい、と願う。ソロモンから学びたいと思います。

 そしてソロモンは七年かけて神殿を建てました。それは、金で飾られた立派な神殿でした。しかし神が大きな神殿を建てなさいと命じたものではありませんでした。ですからソロモンも、この神殿を自慢するような祈りはしません。8章の奉献の祈りで27~28

…神は、はたして地の上に住まわれるでしょうか。実に、天も、天の天も、あなたをお入れすることはできません。まして私が建てたこの宮など、なおさらのことです。28あなたのしもべの祈りと願いに御顔を向けてください。私の神、主よ。あなたのしもべが、今日、御前にささげる叫びと祈りを聞いてください。

 どんな立派な神殿だって、神様を入れることは出来ません。だから、ただ神が憐れんでくださり、民がこの神殿に捧げる祈りに、どうぞ耳を傾けてくださいと祈ったのです。この日の夜、主はもう一度ソロモンの夢に現れました。その時の言葉で、

九6もし、あなたがたとあなたがたの子孫が、わたしに背を向けて離れ、あなたがたの前に置いたわたしの命令とわたしの掟を守らずに、行ってほかの神々に仕え、それを拝むなら、7わたしは彼らに与えた地の面からイスラエルを断ち切り、わたしがわたしの名のために聖別した宮をわたしの前から投げ捨てる。…

と言われたのです。ソロモンや後の子孫が、主の言葉に背いて、他の神を慕い求めるなら、いくらこの神殿が立派でもこの神殿を投げ捨てる、と言われたのです。そして、残念なことに、実際そうなってしまいました。ソロモンは後年、主の言葉に聞き従わず、偶像崇拝に走ってしまいます。
 いいえ最初から、ソロモンは多くの妻を娶り、贅沢な暮らしに走って、危うさをちらつかせていました。その心配が、晩年になって本当に当たってしまい、ソロモンは主から離れ、神の言葉よりも、多くの妻たちの言葉に聞き従ってしまうのです。



 後々まで、ソロモンは反面教師として引用されます。ネヘミヤは、

イスラエルの王ソロモンも、このことで罪を犯したではないか。多くの国の中で彼のような王はいなかった。彼は神に愛され、神は彼をイスラエル全土を治める王としたのに、その彼にさえ異国人の女たちが罪を犯させてしまった。(ネヘミヤ13:26)

 また、ソロモンの建てた立派な神殿やもっと立派な王宮、そして彼の贅沢な暮らしは、民の税金や重労働の上に成り立っていました。ソロモンは民に犠牲を強いていたのです。ソロモンの死後、彼の息子に民衆が訴えたのは、ソロモンの時代の苦しさでした。

12:4 「あなたの父上は、私たちのくびきを重くしました。今、あなたは、父上が私たちに負わせた過酷な労働と重いくびきを軽くしてください。そうすれば、私たちはあなたに仕えます。」

 ソロモンは主に知恵を願い、主はそれを喜んで与えてくださいました。でもソロモンがその知恵をえり好みして、富や繁栄を愛したのであれば、どうしようもありません。ソロモンの賢さや神殿建設の業績は、手放しで誉められるものではないのです。
 最初に言ったように、イエスはソロモンについて何度か触れています。その一つが、

ルカの福音書12:27 草花がどのようにして育つのか、よく考えなさい。働きもせず、紡ぎもしません。しかし、わたしはあなたがたに言います。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも装ってはいませんでした。

 栄華を極めたソロモンより、野の花の一つの装いは勝っている。どんなにお金や技巧を尽くすより、神が造られた目の前の花、この世界の美しさは遙かに勝っている。そう思う生き方へとイエスは私たちを招かれました。また、ソロモン神殿以上に大きく輝く当時の神殿を見ても、イエスは心を動かされる事がありませんでした。神は、立派な神殿にではなく、私たちとともにいてくださり、私たちの集まりを宮としてここに住んで下さるのです。こういうイエスの言葉も、ソロモンを理想化していませんし、逆にソロモンに問題があったかどうか以上に大事なことに私たちの目を向けさせてくれます。

南の女王が、さばきのときにこの時代の人々とともに立って、この時代の人々を罪ありとします。彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果てから来たからです。しかし見なさい。ここにソロモンにまさるものがあります。 (マタイの福音書12:42

 旧約聖書の知恵の書「箴言」は

「イスラエルの王、ダビデの子ソロモンの箴言」

と始まります。その箴言にあるのは、

「主を恐れることは知恵の初め。聖なる方を知ることは悟ることである」

という知恵の理解です。主を恐れること、聖なる主を知ること。その事は、ソロモンの問題がどうあれ、変わる事がありません。主を知り、主を正しく恐れましょう。お金持ちや王になるためではなく、この世界を創り、野の花の一つ一つも人の栄華が及ばないほどに装い、私たちの救いのため、低く人間になることも厭わなかった主を知り、主を恐れましょう。この主が、私たちに本当に賢い生き方を下さるのです。

「聖なる主よ、栄華を極めたソロモンより、知恵と富に満ちたあなたが、多くを得ようとするより、すべてを捨てて、私たちのために貧しくなってくださいました。あなたの愚かさは、人間の賢さに勝り、あなたの愛は世界の輝きに勝ります。どうぞ私たちに本当に賢い生き方をお与えください。愚かな願いから救い、人からは愚かと見えようとも、あなたの恵みに心を燃やされて、本当に尊い生き方をさせてください」
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