ワイル磁性体と言われる合金Mn3Snは私の元同僚であった、冨吉昇一さん(元愛媛大学教授)がその磁気構造を中性線で決定したという謂れのある物質である。その磁性体の中にワイル粒子を実験的に発見して、その量子力学的な特性から新しい機能をもった材料として期待されているということを最近知った。
研究会か何かに冨吉さんは招かれて、Mn3Snの磁気構造等について講演をしたと先週の土曜日に話してくれた。
ワイル粒子とは質量が0の粒子であり、ながらくニュートリノがそうではないかと思われてきたが、ニュトリノ振動の存在からニュートリノには質量があるということなり、その候補から外れたといういきさつがある。
ワイル粒子とは1921年にヘルマン・ワイルが提唱した方程式にしたがって記述される粒子であるとのこと。物質内でワイル粒子は異なるカイラリティ(右巻き、左巻き)をもつ対となって発生して、それぞれの磁石のN極とS極とに相当する点(ワイル点という)を形成するとのことである。2015年にヒ素化タンタル(TaAs)で半金属状態の物質中(ワイル半金属)でワイル粒子が発見された。
ワイル粒子については何十年も以前に「弱い相互作用」の本で読んだことがあるくらいの知識しかない。その本にだって、ちょっと触れているくらいだったような気がする。
要点は、小さな磁場で大きな電流とかをつくることができたりするようで、ワイル粒子を用いて駆動する新しい材料の開発がされると新しい大きな応用分野が開かれるということで注目を集めているらしい。
Mn3Snは廉価で毒性もなく、大型の単結晶も容易に作成が可能だということで、注目されている物質である。磁気構造は冨吉さんが探求して徹底して研究がされている。またその理論も磁気理論の大権威であった永宮武夫先生が関与された論文が出ている。
(2018.1.30付記) 愛知の S さんから添字の入力の仕方を教えてもらった。S さん有難う。これで添字がついた文字の入力ができるようになった。これはhtml言語の一部のコマンドである。私はhtmlを学んだことがなかったので、少し敷居が低くなった。
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