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ソロモンの偽証

2017年01月31日 | Weblog
分厚い本で3冊分もある内容でしたが、これも中々面白かったです。

少し前に映画?をテレビでやっていたのでそれを見て、是非小説でも読みたいと思いました。ハリーポッターもそうでしたけど、最初に映画でストーリーや登場人物が頭に入っていると非常に読みやすくなりますからね。宮部みゆきさんは母親がファンなので、たくさん本を出している人だということは知っていましたが、自分が読んだのは「ソロモンの偽証」が初めてです。「模倣犯」もドラマでやっていたのでそのうち読みたいと思っていますけどね。
どうやらこの作者の特徴として、章ごとに主人公というか登場人物の視点が変わっていくという独特の手法があるようです。普通の物語は、例えばハリーポッターならハリー視点で物語が動きますから、基本的にハリーが知りえない情報は何らかの方法で他の登場人物に語ってもらいそれを聞くしかありません。しかし彼女の手法だと犯人側の描写とかも容易なので、世界観の幅を広げる効果がありますね。まあ推理物としてそれでいいのかという問題はあり、慣れないと違和感を感じるかもしれません。
映画版のラストがちょっとあっさりしすぎていたので、小説版だともっと詳しい描写があるだろうと期待して読みました。まあ実際読んだのは夏休みなので細かいところは忘れましたが(笑)小説版はしっかり納得のいくラストになっていました。(ここからネタバレアリ)

「ソロモンの偽証」は、学校内で起きた変死事件の真相を明らかにするために、生徒達が卒業制作で模擬裁判を行うというのが大まかなストーリーです。一応推理小説に分類されるようですが、犯人を捜して糾弾するという内容ではなく、大人やマスコミに振り回され受身になっていた生徒達がいかに自分達の力で立ち上がり、裁判を成功させられるかどうかがメインとなっています。この場合の成功とは、全員で事実を共有することです。マスコミに面白おかしくかき回され、警察の捜査も学校の説明も何か隠されていて納得がいかない。本当のところはどうだったかを主人公達が裁判形式で証人に話してもらい、真実を紡ぎ上げていきます。もちろん証人には大人の協力も必要なので完全な自治活動ではありませんが、中学生とはいえリアルでここまでできたらこの先何でもできそうですな(笑)
まあ当然法的拘束力のない状況での裁判ですので、ある登場人物は平気で「偽証」をしてきます。これも教育現場では特に珍しくありません。明らかにおかしいと聞いている人が思っていても、法廷で話された以上それは真実として扱われます。まあそういう人は親にも何か問題があり、将来に渡ってそうなのでしょう。ただ最後は少し変わるきっかけになったのではないかなと思いました。
裁判の結論についてですが、映画では「被告人は無罪、以上」という感じでしたが、小説版では「変死した生徒は未必の故意による自殺であり、被告人は無罪」と明らかにされていました。ここに至る部分のエピソードは映画では丸々カットされており、それがモヤモヤの原因だったのですけど、ここを読んでようやくすっきりできました。まあ時間がなかったのかもしれませんが、これはちゃんとエピソードを入れて裁判長か陪審員の誰かがしっかり語るべきだったと思います。

で、偽証は良いとしてソロモンの説明がドコにも全くなかったのは謎ですな(笑)