北海道人からみた関西圏の鉄道事情

関西圏の鉄道・その他についての諸々の雑感

JR東海、リニアの大阪延伸前倒しと、中間駅は奈良とする事を表明

2016年06月18日 | JR
ほぼ3年前の平成25年8月19日の記事では、リニア中央新幹線の名古屋~大阪間の延伸や、それに伴う奈良・京都の動向などを具体的に紹介致しましたが、今回の記事はその続報に当たるもので、今月に入ってから報道されたリニア中央新幹線に関する大きな動きを紹介させて頂きます。



安倍晋三首相は今月1日の記者会見で、「新たな低利貸付制度によってインフラを整備する」とした上で、リニア中央新幹線の大阪延伸の前倒しを支援すると明言しました。首相のこの発言の背景には、大阪府・大阪市や、関西経済連合会などの経済界、関西選出の自民党議員などが大阪延伸の前倒しを強く求めていた事もありました。
そして、首相のこの表明を受けて、JR東海の柘植康英社長は「大変有り難い事と受け止めている。健全経営と安定配当を堅持しつつ、名古屋開業後、速やかに名古屋~大阪間の工事に着手出来るよう全力で取り組む」「大阪まで早く開業させたいという思いは同じ。日本経済の活性化に貢献出来る」とコメントし、JR東海としても、大阪延伸を当初計画の平成57年(2045年)から前倒しする方針を正式に表明しました。



JR東海の当初の計画では、まず東京(品川)~名古屋間を平成39年(2027年)に先行開業させ、大阪への延伸開業は、その18年後の平成57年(2045年)を予定していました。
JR東海では、東京~大阪間全線の建設費は約9兆円、そのうち東京~名古屋間の建設費は約5.5兆円と試算しており、長期債務残高を適正水準と見込む5兆円以内にとどめるため、東京~名古屋間を開業させた後、8年間は大阪延伸に着工せず、借金の返済に専念し、経営体力を回復した後の平成47年(2035年)に、大阪への延伸工事を始めるとしていたのですが、今後はその「借金の返済に専念する8年間」の期間を出来るだけ縮める事で、大阪延伸開業の前倒しを図る事になります。

政治新幹線とも揶揄される事がある程政治に翻弄され続けてきた整備新幹線の二の舞になる事を避けるため、JR東海は、リニア中央新幹線計画に対しては以前から政府や与党の介入を嫌がり、巨額な建設費についても国の支援を受ける事無く自社のみで負担するとしていましたが、今回政府から表明された低利貸付制度創設については、自社にデメリットがあるわけではないため、すんなりと受けれる事にしたようです。

具体的な前倒し期間は今後詰める事になりますが、最も早い場合、大阪開業は8年前倒しの平成49年(2037年)になりそうです。
国は財政投融資制度を使って長期の資金を低利で貸す方針で、この度の首相の表明を踏まえ、国土交通省とJR東海は、前倒し期間と共に融資額についても、今後本格的に詰めていく事になります。

また、これを受けて、日本経済団体連合会(経団連)の榊原定征会長は今月9日の記者会見で、リニア中央新幹線の大阪延伸が政府支援の低利融資制度により最大8年前倒しされる見通しについて、「歓迎したい。東京、名古屋、大阪件のスーパー・メガリージョン(超巨大都市圏)形成の原動力になる」と、期待感を表明しました。


そして、JR東海は、大阪延伸開業の前倒しを発表した数日後、名古屋~大阪間のルートについては、当初の計画通り奈良市付近を経由する事とし、京都の政財界が求める京都経由のルート案には応じないとする方針も固めました。
京都経由のルートにするとカーブがきつくなって走行速度が落ちるなどの弊害が出るためで、新たに国の低利融資の支援を受けても、JR東海としては奈良ルートの維持は譲れないようです。
奈良市付近とされる駅の具体的な場所については、JR東海では環境への影響を評価した上で決めていきたいとしています。

一方、京都府や京都市は、かねてより大阪への早期延伸を求めてきたため、大阪への延伸前倒しが決まった事については歓迎する意向を示したものの、中間駅の京都誘致については思うような成果を出せないばかりか、現行の奈良ルートが着々と現実味を帯びつつあるため焦りを示しており、京都府の山田啓二知事は今月9日の定例記者会見で、「京都は奈良市に接しているのに、ルート問題でヒアリングにも呼んでもらえない」と国に苦言を呈し、更に、「京都を通る方が経済効果が大きはい。40年前に決まった公共事業が何の協議もされないのはおかしい」と述べて、計画再検討の必要性を改めて強調しました。
なお、京都市の門川大作市長は先月26日の記者会見で、「東海道新幹線も当初は京都駅を通らない計画だった。引き続きオール京都で要望していく」と述べております。

現実には、東京~名古屋間の工事が難航し、大阪延伸以前に東京~名古屋間の開業が大幅に遅れる可能性もありますし(特に南アルプスルートの大断層帯を貫く長大トンネルは難工事が予想されます)、また、JR西日本が進める北陸新幹線の金沢から新大阪間への延伸との兼ね合い等もあるので、実際には今後もまだいろいろと紆余曲折はありそうですが、兎も角、東京~大阪間を最短67分で結ぶ予定の夢の超特急「リニア中央新幹線」は、この度、大阪への延伸開業前倒しが決まった事と、JR東海が中間駅を京都ではなく奈良とする方針を固めた事で、開業に向けて、また一歩大きく前進しました。
京都府や京都市は、京都へのリニア誘致はまだ依然として諦めてはいないようですが…。


ちなみに、山梨リニア実験線(将来、リニア中央新幹線の本線の一部となります)では今年もリニアの体験乗車が行われていますが、本年の7~9月にかけて実施される14日分についての申し込みは、明後日(今月20日)が最終日となります。
体験乗車の料金は1区画(2座席)で4,230円で、各開催日共6回の体験乗車が行われ、14日間合計で、約1万80人が乗車する事が出来ます。
JR東海のウェブサイトで明後日の23時59分まで受け付けておりますので、興味のある方は、申し込まれてはいかがでしょうか。私自身は、とても興味はあるものの、残念ながら日程の都合から申し込みは断然せざるを得ませんが…。

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