北海道人からみた関西圏の鉄道事情

関西圏の鉄道・その他についての諸々の雑感

汐見橋駅

2009年06月13日 | 南海
南海の全線はまだ制覇(乗車)していないので断言はできませんが、私が今まで利用した路線(なんば和歌山市、なんば~高野山、泉佐野~関西空港、岸里玉出~汐見橋)に限っていえば、南海の路線の中で最も“昭和”の雰囲気が色濃く残っているのは、岸里玉出~汐見橋間の4.6kmを結ぶ「汐見橋線」で、特にその終端駅の汐見橋駅は、昭和30年代の雰囲気が極めて濃厚でした。

汐見橋線という線名は実は通称で、正式には、同線は今でも高野線の一部で、実際、現在でこそ高野線の電車はなんば駅から発着していますが、昔は高野線の電車は汐見橋駅から発着していました。今の貧相(失礼!)な汐見橋駅の姿からは想像し辛いですが、昔は、汐見橋駅こそが高野線のターミナルだったのです。
しかし、天下茶屋付近の高架工事に伴い、汐見橋線と高野線との線路は分断され(但し岸里玉出駅構内に、汐見橋線と南海本線とを結ぶ渡り線は現存します)、そのため現在は汐見橋線と高野線とを直通する列車の運転は事実上不可能な線形になっており、そもそも直通列車を走らせる需要もないので、現在の汐見橋線は、高野線の一部でありながら運転形態は高野線とは完全に独立した路線となってしまっているのです。

その汐見橋線終端の汐見橋駅は、大阪随一の繁華街ミナミからは徒歩圏内に立地する街中にあり、そのため駅周囲の道路(千日前通や新なにわ筋など)は交通量が多く、また、駅に隣接して地下鉄(千日前線)や都市高速(阪神高速15号堺線)なども走っているのですが、汐見橋駅だけはそれらの喧騒から取り残され、古めかしいコンクリートの駅舎内は静寂に包まれており、人気も無くガラーンとしています。
同駅を発着する電車は、2両編成のワンマンカーで、30分毎に運転されていますが(岸里玉出~汐見橋間の折り返し運転のみで、前述のように南海本線や高野線への直通運転は行われていません)、車内はがら空きで、汐見橋駅の乗車人員は1日359人とのことですから、都心のすぐ近くを走っているにも拘らず朝夕のラッシュも全く存在しないようです。

下の写真が、今年の3月に汐見橋線の電車に乗った際に私が撮影した、同駅の駅舎です。
正直な所、大正モダン風のレトロな駅舎、というよりも、失礼ながら、半分廃墟と化している放置されたままの駅、という印象を受けます。
手前に工事用のフェンスが張られているのは、この時は、汐見橋駅に隣接する場所に阪神なんば線の桜川駅という地下駅が建設されている最中で、その桜川駅の地上入口の建設工事がそこで行われていたためです。



そして、下の写真が汐見橋駅の駅舎内です。
改札口が自動改札化されていることを除けば、本当に昭和30年代から時間が止まったままの雰囲気で、実際、改札口の上に掲示されている、風化が進んで塗料のひび割れが著しい鉄道路線図は、昭和30年代のものでした(淡路島にも鉄道路線が描かれています)。
駅舎内の天井が高いのは、かつてのターミナルの名残かもしれません。



下の写真2枚は、ホームから撮影した同駅構内の様子です。ホームは島式1面の頭端式で、ホームの長さは車両4両分程度しかありません。
とても、繁華街ミナミに隣接する場所の駅とはとても思えません。





しかし、現在の汐見橋線は(大変失礼ながら)その存在意義もよく分からない、ただのひなびたローカル線に過ぎませんが、今後、汐見橋線は、関空のアクセス路線として建設が予定されている「なにわ筋線」(大阪市を南北に縦貫して新大阪駅と難波方面を結ぶ計10.2kmの路線で、新大阪から南下した場合、難波付近で二股に分岐し、南海の汐見橋駅とJRの難波駅にそれぞれ線路が連結されます)との直通運転が予定されているので、なにわ筋線完成の際には、汐見橋駅は地下駅化され、現在の汐見橋線を、新大阪と関空とを結ぶ特急ラピートや空港急行などが走るようになります。

建設されてから、ずっと中途半端な“盲腸線”のような扱いを受けてきた阪神西大阪線が、終端の西九条駅と近鉄難波線のターミナル大阪難波駅(当時は近鉄難波駅)とを結ぶ新線の完成により、阪神なんば線として生まれ変わって、奈良と神戸を結ぶ直通列車が走るようになり大幹線となったように、汐見橋線も、なにわ筋線が完成し同線との直通運転が実現するようになると、関西屈指の大幹線となります。
現状ではほとんど需要のない、はっきり言って赤字運営として思えない汐見橋線が廃止されずに現存しているのは、こういった事情が一番大きいのかもしれません。

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