鴨着く島

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”絶望”は希望へ!

2022-02-16 14:09:04 | 日記
北京冬季オリンピックも終盤に差し掛かり、今日16日は女子フィギュアスケートの個人種目が行われている。

1週間前に行われたフィギュアスケート国別団体では、ロシアオリンピック委員会(ROC)が優勝したのだが、その中に参加していたフィギュアスケーターのカミラ・ワリエラという15歳の女子選手が、検体(尿)の中に禁止されている成分が含まれていたということが分かり、物議をかもし、IOCがスポーツ仲裁裁判所に訴えたが、16歳以下であり保護の対象であるという理由で彼女の「出場資格はく奪」という訴えは却下された。

不可解なのが、この検体自体は去年のロシア選手権に提出されたものであり、何を今さら今度のオリンピックで陽性云々が持ち出されなければならなかったのかということである。

その当時、ロシアオリンピック委員会はいったんはカミラ・ワリエワ選手の出場を取り消したそうだが、結局は出場できることになったらしい。つまり12月の選手権での陽性反応は無いことになり、それを隠して出場したわけである。

誰かの後押しがなければ・・・、ということだが、それが誰かはおおむね察しが付く。カミラ・ワリエワを「国家的スケーター」として国威発揚のアイテムにしたいのだ。

旧ソ連を含む共産圏はおおむね「国家主義」でもあるから、日本なら「国民的女優」「国民的スケーター」などというのはすべて「国家的女優」「国家的スケーター」と言われ、国威発揚の手段として称揚されるのが常で、日本の戦前・戦中を思わせる扱いである。

カミラ・ワリエワはまさにそれを地で行く存在で、かの国の期待の大きさは想像以上だろう。彼女はニックネーム”絶望”を進呈されているという。その意味は「ワリエワと同じ競技で競う選手は、彼女のハイレベルさにはどうしても歯が立たないので、”絶望するしかない”」ことから付いた愛称(というには語呂が悪すぎるが)ということである。

そのワリエワは今日のフィギュア個人のショートプログラムで、予想通り首位に立った。明日行われるフリーでもおそらく問題なくトップに立つだろうから、金メダルを手にしよう。

ただ、団体戦後の表彰式(メダル授与式)は行われなかったから、この個人戦でも表彰式はカットされるだろう。何しろワリエワ自身が「祖父の飲んでいた薬が自分の口に入ってしまった」と弁解がましく、陽性を肯定してしまっているのだから・・・。

しかし金メダルを取れば、陽性云々などお構いなしに、まさしく「国家的女子フィギュアスケーター」(北朝鮮なら国家的スポーツ英雄)となり、国から様々な特権を付与される。一夜にしてシンデレラガールになるのだ。

(※アメリカの選手だと、もし金メダルを取ったら放送局の取材やスポーツ関連のメーカーなどの広告に引っ張りだこになり、一夜にしてというわけではないが、かなりの金銭的収入が入る。国家からではなく民間からだが、結果的にはそう変わらない。)

”絶望”というニックネームを奉られたロシアのカミラ・ワリエワ選手も、スポーツ仲裁裁判所の同情的な裁定のおかげで、「国家的スターになれるという希望」にいま胸を膨らませていることだろう。


カミラという名で連想するのが、イギリス皇太子チャールズの愛人から、あのダイアナ妃の死後に妻になったカミラ夫人のことだ。

「カミラ」という名が何に由来するのだろうか。二人のカミラの語源が同じだったら面白い。

向こうのカミラは、今年即位70周年を迎えるエリザベス女王から直々に「王妃になって欲しい」と言われたようなのだ。

カミラという女性の氏素性は知らないが、一般家庭の生まれだったとしたら、こっちもシンデレラガール、いやロシアのカミラ以上の本物のシンデレラガールではないか。

今さら遅すぎる気もしないではないが、エリザベス女王が今日という時代の流れを巧みに取り入れた結果であり、カミラ夫人も希望を胸にしていることだろう。


(追記)
番狂わせが発生!

フィギュア女子個人フリーが終わり、カミラ・ワリエワ選手は何と総合4位に沈んだ。

その結果4位だろうと思われた日本の坂本花織選手が3位のままに残り、銅メダルを獲得した。浅田真央選手のバンクーバー大会(2010年)の銀メダル以来12年ぶりの日本人メダリストとなった。

優勝はROC(ロシアオリンピック委員会)に属するアンナ・シェルバコワ、二位は同じくアレクサンドラ・トルソワ。もしカミラが回転で転倒を3回しなかったら、優勝していたかもしれない。そうだったらROCの独壇場だったのだが、ドーピング疑惑のカミラに関しては順位保留となり、表彰式がまた開かれないという異例の事態を2度迎えたことになる。

まぁ、女子フィギュアに関してはこれで一件落着か。

スピードスケート女子1000mでは日本の高木美帆選手が金メダルだったが、これも大した記録だ。日本人の女子初の金メダルという点もだが、最後の最後にオリンピック新記録をたたき出したのだから、こっちの方が一段上だろう。努力のたまものというしかない。

カミラ選手については気の毒というしかない。結果論だが、そもそもオリンピックに出場させたのが悪い。これで彼女の希望は打ち砕かれ、本当の”絶望”になってしまった。