鴨着く島

大隅の風土と歴史を紹介していきます

兵器オリンピックの様相

2023-01-29 21:02:15 | 専守防衛力を有する永世中立国
高射砲のジャベリンから始まってハイマースから、トマホークミサイルまで、次々にウクライナへ供与される兵器群。

今度は先端を行く高性能の戦車が供与の対象になった。

ウクライナには旧ソ連時代に配備されていた旧式の戦車しかなく、新たにロシアが支配地域を拡大しようとして戦場に投入する新式の戦車に対抗するため、ゼレンスキー大統領は最先端を行く戦車の提供を欧米に求めていた。

戦車の供与についてはアメリカもヨーロッパも慎重な姿勢を見せていたが、ここへ来てドイツがそしてアメリカが自国産の最新鋭の戦車の供与を容認し、ウクライナへ送ることになった。

地対空ミサイルの供与については比較的簡単に供与して来たアメリカが、戦車の供与には慎重だったのはおそらく軍事機密が詰まった戦車だからだろう。

つまり戦場でロシアに「生け捕り」されて持ち帰られては困る技術上の機密が多いせいではないかと思われる。

事の真相は明確ではないが、とにかくドイツ製の「レオパルト2」という戦車と、アメリカ製の「エイブラムス」という戦車が供与されることになった(イギリスも自国製戦車「チャレンジャー2」を提供するそうだ)。

ゼレンスキー大統領は「300両は欲しい」と言っていたが、そこまでは無理なようだ。

ロシアは「どんな戦車が来ようと、戦場で燃えるだけだ」と強気の声明を出している。

しかしそんなやり取りをしている間にもウクライナ市民に対する無差別の攻撃は続いており、年が明けてから「ロシア正教の元旦から3日ばかり停戦しよう」というトリッキーなロシア側からの提案の陰で、市の中心部にミサイルが落とされたりしており、もうこの11か月で無辜の市民約8000人が命を落としている。

ロシアの(戦時)国際法違反には甚だしいものがあり、とても容認できるものではない。

※今日のテレビニュースで、IOC(国際オリンピック委員会)が、ロシアとベラルーシの選手の個人参加を認めるような見解を発表したが、これに対してウクライナの教育相は「それを容認するなら、ウクライナはオリンピックをボイコットする」と声明を出した。

オリンピックのアマチュア精神(オリンピック憲章)からすれば、所属はいかなる国であれ、参加するのを拒むわけにはいかない。

しかし現実には国家単位のオリンピック委員会があり、国家単位で参加するのが常道である。

ただ問題はその国家単位の内容がピンからキリまであり、おおむね共産圏の国家では選手個人への関与が大きく、その反対にアメリカのように関与が非常に緩い国もある。

ロシアなどは共産主義からは離脱したものの、相変わらず「ステートアマ」が普通で、特にお家芸と呼ばれる体操などでは金メダリストは特別待遇を受ける。

そのように国家に管理された選手は果たしてアマチュアと言えるのかという疑問が涌く。もし金メダルを取れば、個人の栄誉はさて置いてその国の名誉という宣伝材料にされるのがオチだ。

オリンピックはスポーツのアマチュア精神に則った世界平和の祭典である。

開催国が大金を使って施設を造り、興行的に行うようになってからこの方、オリンピック精神は蝕まれてきたようだ。この際、ギリシャで常時開催する方向に舵を切るべきだと考える。




とんでもない出土品

2023-01-27 21:10:30 | 古代史逍遥
奈良県奈良市の日本最大と言われる円墳(直径109m)「富雄丸山古墳」のわずかに付属している造り出しの部分から未だかってない出土品が現れた。

ひとつは「盾形銅鏡」であり、もう一つは「蛇行剣」である。

後者の蛇行剣はこれまでも日本各地で見つかっているが、今度の発掘品は長さがなんと2.3mもあるという代物であった。日本で見つかった最も長い物が83㎝というのだから、実に約3倍の長さである。


発掘調査をした橿原考古学研究所の所員もびっくりしたという。

しかしもっと驚くのは「盾形銅鏡」の方だ。


銅鏡と言えば円形なのが普通であり、これまで発掘された何万という数の銅鏡でその例外はない。

ところが、ところがである。角張っているのだ。それで「盾形銅鏡」。

長さは64㎝、幅は31㎝で、半分に割れば円形の銅鏡が2枚作れそうな大きさである。

専門家はこれらは国産で、共に「僻邪」(魔除け)のために埋納されたという。

さらに専門家は前方後円墳ではないことから、被葬者は大和王権の王族クラスではなく「秘書官クラス」だろうという。要するに大王の腹心の部下が被葬者ではないかという。

具体的には誰かという指摘はなかったが、この円墳のある富雄は、富雄川の流域にあることから推理すると、平群氏の一族だろうと思われる。

4世紀の後半という築造年代だとすれば、平群氏の始祖の可能性が考えられる。

平群氏は武内宿祢の後裔とされており、そうであるならば武人の系譜であり、武人であるならば鏡が「盾形」だったり、考えられもしない長大な蛇行剣を作っていてもおかしくはない。

私見では平群氏の始祖と言われる「平群木菟宿祢(へぐりのづくのすくね)」の墳墓ではないかと思う。

平群木菟宿祢は応神天皇の16年に新羅に行ったまま帰らない葛城襲津彦を迎えがてら、新羅を攻撃し、襲津彦とともに弓月君たちを連れて帰ったという。勲功極めて大きなものがあった人物である。

私見では平群氏の墳墓だが、奈良の考古学者や歴史家の意見はどうだろうか?

これまでの常識を覆す前例のない副葬品なので、どんな見解が示されるか固唾を吞んで待ちたいと思う。

1か月ぶりの大寒波(2023.01.24)

2023-01-24 19:39:17 | おおすみの風景
昨日から気象庁の会見が行われ、今日から明日・明後日にかけて、列島にこの冬一番の寒波が押し寄せ、大雪になると警告を発していた。

今朝の気温は7℃くらいあり、そんな寒波の到来をうかがわせる様子は全くなかったが、昼過ぎから急に冷たい西風が強くなった。

昼食時、『徹子の部屋』を観ていたら、居間の向こうのガラス戸越しに見える庭に、ちらほら雪が舞っているのが見えた。

ほんのちらほらと雪が風に舞う「風花」だろうとしばらく様子を見ていると、かなりの雪が降り始めた。

しかし30分もすると、一転して空に青空がのぞかれるような塩梅になった。

その後しばらくは雪が舞ったり舞わなかったりで過ぎたが、4時過ぎになって突風のような西風に変わり、その風に乗ってまるで地吹雪のように雪が降った。

地面は十分に冷やされていたに違いなく、雪はあれよあれよと言う間に積もり、一面が雪の原になった。


我が家の南側に広がる畑地帯は真っ白。わずか30分ほどの間に雪は土を完全に覆ってしまった。

南側に連なる横尾山系の山々は、強い西風に吹きさらされてはっきりは見えないが、おそらく木の間に雪がかなり積もっているはずだ。

今晩のうちにさらに雪が降り積もり、明日の朝は文字通り一面の銀世界になるだろう。

予報では明日の朝の最低気温は-6℃と出ていた。今日降った雪が0℃以上の気温にあえば溶けて道路がアイスバーンになるが、夕方6時現在の気温はちょうど0℃で、これ以降明け方に向けてさらに気温は下がるばかりだから、つるつるの氷状態にはならないだろう。

しかし道路を車が走るようになると、タイヤの摩擦熱で雪が溶け、それが氷結したらアイスバーンほどではないが、急ブレーキや急発進した場合にはタイヤが横滑りしたりするから細心の注意が必要だ。

※窓越しに初雪が降り出したのを確認した時に観ていた『徹子の部屋』のゲストは、笑点でおなじみの三遊亭好楽だった。好楽は昨年72歳で亡くなった落語家の三遊亭円楽(楽太郎)とは同じ師匠に付いた兄弟弟子だったそうだが、生前の円楽についていろいろな思い出を語っていた。
 笑点では「腹黒」という悪役の役回りだったが、決してそうではなかったこと、また円楽が落語の団体の垣根を取り払おうとしていたことが、大きかったという。(合掌)

大相撲の異変

2023-01-22 18:39:28 | 日記
大相撲の初場所が終わり、大関貴景勝が12勝3敗で3回目の優勝を飾った。



結びの一番で琴勝峰(ことしょうほう)と勝ち星が同じ相星決戦となり、立ち会って琴勝峰が強く当たりながら左下手を取りに来るのを見透かしたかのように、左からのすくい投げで仕留めた。

貴景勝は大関、琴勝峰は平幕の13枚目という普通なら有り得ない千秋楽結びの一番であったが、それよりも二人は埼玉栄高校相撲部の先輩と後輩の争いであったことの方に注目した。

場所中もテレビのアナウンサーが「○○関と○○関の埼玉栄高校出身者同士の闘いです」という場面が何番もあって、気になっていた。

調べてみると埼玉栄高校の相撲部は大相撲に送り出す部員の多いことでは有名で、貴景勝はじめ現在の幕の内には6人の同高校出身者がいるという。十両以下まですべての大相撲在籍者では何と40名を数えるそうである。

今場所は唯一の横綱の照ノ富士が全休し、大関も貴景勝ひとりという大混戦で、10日目くらいまでは星のつぶし合いで、4敗の力士までが優勝候補になった。

しかしその後、小結・関脇陣が脱落し、今日の千秋楽の大関対平幕の決戦、しかも結びの一番までもつれたわけで、これはこれで今場所は実に面白かった。

そのもう一つの要因に、日本人力士同士の熱の入った相撲が多かったことが挙げられる。

今場所休場した横綱の照ノ富士や平幕の逸ノ城など巨漢のモンゴル出身力士がいなかったことで、小粒ながら小粒であるが故の多彩な決め伎が見られ、大いに楽しませてもらった。

別にモンゴル出身の力士を嫌うわけではないが、何しろ横綱朝青龍以降のモンゴル勢力はすさまじいものがあった。幕の内の上位半分くらいはモンゴル出身かと思うくらい多かった。

横綱に白鵬・日馬富士・鶴竜が揃って並んでいた時期、「これじゃ、日本の大相撲ではない。モンゴル大相撲だ」と揶揄したものだ。

もっともモンゴルにも独自のモンゴル相撲があり、日本の大相撲でやって行ける下地はあった。

事実、優勝41回の大横綱白鵬の父親はモンゴル相撲のチャンピオンだったと聞く。

だから大相撲のしきたりに習熟すれば土俵に上がってもさほどの違和感はない。

さらに、例えば金星を挙げた時には必ずインタビューを受けるけれども、彼らモンゴル人の日本語は発音・アクセントともに完璧であり、こっちにも違和感は感じない。

だが、それでも大相撲の歴史からして「郷土出身力士」へのひいきは、観戦する上で無視できないのも事実だ。

大相撲の起源は宮中で行われた「相撲の節会(せちえ)」だが、平安時代の初期にはすでに行われており、日本各地から相撲の健児を集めて闘わせていた。

この伝統を受け継いで開催される大相撲はスポーツというより宗教性を帯びており、日本文化の一つの形でもある。世界に誇る一大イベントであるから大切にして行きたいものだ。

※相撲の起源については、垂仁天皇の7年(西暦300年の頃)、出雲出身の野見宿祢(のみのすくね)が大和に上がり、力士当麻蹴速(たいまのけはや)と闘ったのが最初だ、という説があるが、野見宿祢は蹴速のあばら骨を砕き、腰を踏み折って勝ったとあり、それからすると今の相撲ではなく格闘技だったと思われる。天武天皇11年(683年)の7月に大隅隼人と阿多隼人が朝廷に赴き、そこで相撲を取ったというのが文献上では一番古い記事である。



聞く力

2023-01-19 13:39:59 | 日本の時事風景
一昨年の9月に新総理になった岸田氏のキャッチフレーズは「聞く力」だ。

人と会うとメモ帳を取り出してその人の言い分を記録するのが通例――と件の小型メモ帳を記者団の前で見せたことがあった。

なるほど、よく人の意見に耳を傾ける宰相なのだなと期待するところがあった。

しかしそのことが崩れたのが、国内ではあの安倍元首相殺害事件があってからだ。

即時に「故安倍氏の葬儀は国葬で行う」と閣議決定の前にそう宣言していた。誰の意見も聞かなかったようなのだ。

国論は二分され、国葬派と自民党葬派に分かれ、ニュースにならない日はなかった。

それと並行して大臣に任命された議員の不祥事が次々に取り沙汰されたが、決して「任命責任があるのではないか」という意見にまともに応えようとしなかった。

国外では無論、ロシアのウクライナ侵攻に関することである。

昨年の2月24日にロシアがウクライナ攻撃を始めたのは「大規模軍事演習」という名目であり、似たようなことをロシアとは準同盟国である中国が台湾周辺で行ったことで国防論議に火が付いた。

中国が台湾を、ロシアがウクライナに対してやったようなやり方で侵攻した場合、台湾一国の防衛力で防ぎ切ることは到底不可能であろう。

それを見越した上で、アメリカはウクライナに対するのと同様の「武器援助」を台湾に対して行うはずだ。

ただ問題は武器の援助だけでは済まないことだ。

沖縄の米軍が出動する事態になる可能性は大きいだろう。だがその前に、台湾に近い八重山地方に展開する自衛隊が「敵基地攻撃」に当たる役割を負わされるかもしれない。日米同盟あるがゆえにである。

その時点で日本は実質的に中国との戦争状態になる。

いま岸田政権はそのことを踏まえて、巨大な軍事費の上積みを次々に発表し、そのための増税を唱えているが、国民にとっては寝耳に水的なあれよあれよと言う間の防衛力増強論である。

いったい国民に対する「聞く力」はどうしたのと言いたいのだが、この防衛力強化については「アメリカの言い分を聞く力」が発揮されたと言っていいだろう。

秋の終わりから岸田首相は今年の広島サミットに向けて外遊に忙しい日々を送って来たが、新年には欧米各国(イタリア・フランス・イギリス・カナダ・アメリカ)を回って、ウクライナ問題の意見の共有を図った。

最後のアメリカではバイデン大統領に「日本の防衛力強化への取り組みは大変結構」と賛辞を贈られ、気を良くしている。

中国はアメリカにとって、自由主義と民主主義を採用していない最大の敵国であり、経済力においても最大のライバルであり、不倶戴天の敵というとややオーバーだが、とにかく台湾問題を中国を潰しにかかるチャンスと思っている節がある。

ウクライナ同様、台湾に兵器を援助して戦わせれば、台湾もだが中国も相当な痛手を負う。さらにもし日本が「敵基地攻撃」という役割で加担したら、中国のミサイルが飛んできて南西諸島は大変なことになる。

いずれもアメリカはほぼ無傷のまま、台湾と中国が戦い、中国と日本が戦うというシナリオである。

中国を最大の敵国(ライバル)としてその国力を貶めたいアメリカにとって、何とも美味なシナリオだ。だが、日本がそのお先棒を担がされては元も子もないではないか。

岸田総理の「アメリカの言い分を聞く力」が優れていることはよーく分かった。

それよりも「日本国民の声を聞く力」を最優先して欲しいものだ、日本の総理なら・・・。誰も中国との戦争など望んではいないのだ。