鴨着く島

大隅の風土と歴史を紹介していきます

モグラと立春(2022.02.04)

2022-02-04 14:22:58 | おおすみの風景
今日は立春。旧暦では正月節(春節)に入る。5月の唱歌『茶摘み』の「夏も近づく八十八夜」は今日を起点にした数え方で、冬季北京オリンピックも春節初日の今日が開会式だ。

日本は遣唐使以降、中国王朝のいわゆる「漢籍」を学び、暦も大陸暦を取り入れて来た。暦に見られる季節感(行事や草木の成育)は西日本ではかなり合致している。

特に南九州はその感が深く、端午の節句や十五夜の行事などに共通点が多い。もちろんそのままの形で取り入れるのではなく、地域の気候風土に合ったやり方に変化している。

もともと行われていた古来からの行事は新しい行事によって駆逐されたかというとそうではなく、うまく共存して残っている場合が多い。とにかく各地域で祭礼や年中行事の多いことでは、日本は世界のどの国にも負けないだろう。

それが日本の良さというか本質というか、この2年間のコロナ禍によって自粛を余儀なされているのがまことに残念である。


立春の日の今朝は最低気温が2℃とやや低目で、ウメとの散歩で家から北へ県道を渡って300メートルも歩くと、黒の綿の軍手だけでは指先が痛くなった。

指先をこすり合わせたり、覚えたての歌を口ずさみながら歩いて行くと、とある畑の土手に点々と黒々した土が、ふんわりと小山のように盛り上がっているのが目に入った。土手の草は枯れて薄茶色なのでその黒はよく目立つ。

モグラの仕業だ。
この畑は和牛の飼料畑で、去年の晩秋に刈り取った牧草の後に蒔いた種がもう10センチくらいに伸びてきており、畑全体は目に優しい緑一色になっている。

牧草畑の中は新しく種をまく前にトラクターで何度も耕耘するので、さすがの地下暮らしの達人モグ公もそこを根城にするわけにはいかず、トラクターでは絶対に撹拌されない土手を我が家とし、地下宮殿と通路を掘りまくる。

その結果がご覧の通りの掘り上げ残土である。地下何十センチかは分からないが、とにかく混じりけの無い黒土で、しかもほくほくサラサラしている。植木鉢に入れたらすぐにでも花の苗でも何でも植え付けられそうな土だ。(※そこまで図々しくやったことはないが、ウメの散歩用の「うんこキャッチャー」に入れておくには最上の土である。)

モグラが土手を掘りまくるのは以上のようなわけだが、田んぼの稲作では最も嫌われている。土手(田では畦という)は田んぼに水を貯めるための堤防の役割をしているので、そこに穴をあけられた日にはお手上げなのだ。

田んぼをよく見回る篤農家は、気が付くとすぐに穴をふさぐのだが、今日では「畦波(あぜなみ)」という屋根に使う波板の極く幅の狭いのを田んぼの土手(畦)の内側から張り巡らすことが多い。

しかしモグ公よ、ここの畑の土手はいくら掘っても農家に実害はないから、安心して掘るべし。