鴨着く島

大隅の風土と歴史を紹介していきます

吾平山上陵の桜は見頃

2020-03-30 09:21:24 | おおすみの風景
天気はいまいちだったが、吾平町の吾平山上陵の桜の様子を見に行った。

山陵入り口の駐車場から山陵前の川に架かる橋までの間に、ソメイヨシノを中心に30本ほどもあるだろうか、個体差はあるものの、大方は6分から7分咲きとなっていた。
人の出は桜の咲いた日曜日にしては少ないものの、それでも20人くらいの親子連れの団体やアベックなど5~60人は来ていただろうか。

いつもより少ないのは例の新型コロナ感染対策による外出自粛がこちらにも及んでいるためだろう。駐車場に続くちょっとした公園内の東屋の近くで、小学生の兄弟らしい数組が嬉しそうにはしゃいでいたが、家に閉じこもってばかりいないでこういう空気の澄んだ場所にはどんどん来てほしいものだ。

川沿いに見える桜は本来川の流れに映えて見事なものだが、あいにくの曇り空できらめく姿は見せなかったが、三々五々歩いて愛でる人々にはこれで十分だったかもしれない。

木によってはもう散り始めているのもあったが、それにしても鹿児島の標本木(鹿児島市内の地方気象台の庭にある)はまだ蕾らしい。予想では開花宣言は4月1日だそうだから、その頃こっちでは花吹雪になっているだろう。

昨日は東京で季節外れの積雪となったようだが、3月14日という異常に早い開花だったから、すでに散り終えた桜に雪の花が咲いている(?)ニュース画面を見ていて何か夢のようなというか、滑稽感さえ覚えてしまった。

東京と言えば、息子が一昨年から単身赴任で中央区にある会社の事業所にいるのだが、聞いてみるとやはり新型コロナ感染対策の影響で特に海外事業部とやらは動きが取れないらしい。

リーマンショックのほとぼりの冷めない2010年に入社し、翌年には東北大震災、そして今度の新型コロナショックと12年の間に3回起きた世界的な規模の災害に影響を受けたことになるが、この先どうなることやら、本人の意思とかかわりなくやって来るものには「忍」の一字しかないか。

せめて怠りなく向上心を発揮し、この感染災害が終息した後の対策への準備に目を向けるようにと祈るばかりだ。

鹿児島県で初の感染者が出る

2020-03-27 13:53:11 | 災害
ついにと言うべきか、やっとと言うべきか、鹿児島県内で初めての新型コロナウイルス感染者が出た。

一週間前に九州では長崎・佐賀・鹿児島の三県が感染者無しだったのに、佐賀・長崎に続き、昨日、県内初の感染者が出たと報道された。

感染者は英国在住の40代女性の会社役員とかで、故郷の姶良市に帰って来てから体調不良を訴え、「帰国者・接触者センター」に連絡後の検査で陽性と判明したそうだ。

佐賀にしても長崎にしても海外渡航者もしくは都市部からの移入者に感染者が出たが、今度の鹿児島の例も海外からの移入者であった。

鹿児島は沖縄や大阪で流行初期に感染した旅行関係者(タクシー運転手やバス運転手・ガイドなど)と同じ条件の関係者が多かったにもかかわらず、一人も感染者が出なかったのが不思議だったが、今回もそういう濃厚接触による感染者ではなかった。

その意味では相変わらず不思議さは続いている。だが、その女性の濃厚接触者(県内在住)が感染したら、そうも言ってられない。


今度の発症者がそうであるように、海外からあるいは他県からの移入者の圧倒的に多い東京の小池知事は、一昨日、東京への人の流入を防ぐため近郊各県とともに「移動の自粛」を表明した。

折しも昨日は一日としてはこれまで最も多い41人の感染が判明しており、小池都知事の杞憂は一層深まった。

一昨日の会見では集団感染の危険性を避けるために「首都封鎖」なる用語まで使って苦境を吐露したが、たしかに人々が、過密のため好むと好まざるとにかかわらず時々刻々濃厚接触をせざるを得ない東京圏では、クラスタ―感染が発生した場合、感染者が一瞬のうちに飛躍的に増えるだろう。

首都圏の過密は今に始まったことではなく、古くから言えば江戸の昔からだが、明治以降、その密度は増す一方で、大正関東大震災と米軍による大規模空爆(空襲)の時期を除いて、戦後も一貫して増え続けた。

30年近く前にあった空前の好況(バブル経済)で最高潮に達した後、バブルがはじけてからは瞬間的に「首都分散」のような動きも見られたが、阪神淡路大震災で関西圏が危うくなるとその考えは薄れていった。

今はメディアや情報というデジタル産業が首都圏にひしめき合い、東京一極集中はとめどもなく進んでいる。若者の動向もそういったデジタル産業への指向のためか、以前に増して地方を離れて東京圏に集まるようになって来ている。

地方は高齢化・少子化とともにそのような青年層の地方離れで、高齢化・少子化に拍車がかかっているのが現状だ。

自由社会であるから青年層のそういった動きを止めることはできないが、今度のような疫病の流行や、今後そう遠くない時期に来るであろう「大震災」が、人口の集中した首都圏で起きた時の人的・社会的損失を考えると恐ろしくなる。

私は日本維新の会を積極的に支持しているわけではないが、「大阪都構想」による首都機能分散にはおおいに期待している。今秋再び府民投票に掛けるそうだが、多くの大阪府市民の賛意を願っている。

日本の首都東京の機能マヒは国内のみならず世界的にも大変なロスを生む。首都機能の分散に早過ぎるということはない。もはや「杞憂で終わればいいが・・・」などと悠長なことを言っている場合ではないとさえ思う。

オリンピックは延期の公算

2020-03-23 13:44:00 | 災害
安倍首相がついに東京オリンピックの延期を言い出した。

外国の参加アスリートの間ではすでに1ヶ月も前からオリンピックは延期すべきとの声が出始めていたが、そのたびにIOCは通常の開催のほかあり得ないとか、通常の開催すべく努力をしていくとか、コメントを出し続けてきた。

しかしこの数日でIOCのバッハ会長自身が「いくつかの選択肢を考慮している」などとトーンダウンした。そこへもってきて、アメリカのトランプ大統領が「安倍首相の判断一つだ」と声明を出した。これが決め手だったろう。

シンゾーはドナルドの言い成りなのだということがよく分かるタイミングだった。

昼の時間帯の民放各局ではこのオリンピック延期の話題で持ちきりだったが、アスリート経験者のゲストコメンテーターは自分と同じ秋にずらしての開催を主張していたが、多くのコメンテーターが1年後(の夏)に言及していた。

1年も後になると今年の夏に照準を合わせてきたベテランアスリートにとっては酷な選択であろうし、また若手選手の下克上もあるはずだから当然出場選手の選考をゼロからやり直すことにもなるだろう。

秋なら選手選考のやり直しは考えなくてよいし、何よりも気候的には最上だ。また、せっかくアテネから到着した聖火も、3か月先なら十分絶やすことなく持ちこたえるだろう。

意外なのがあの陸上短距離・リレーで7冠を達成したアメリカのカール・ルイス選手の提案した2年後だ。二年後の冬季北京オリンピックと同じ年なら、2022年は「オリンピックイヤー」として祝祭の年になる――という。

なるほどそういう考えもあったか、だが、そうなると東京オリンピックは完全な「新規まき直し」となり、1年後と同様かそれ以上にやり直さなければならないことが多くなる。

第一、2年後だと安倍首相は任期を外れ、ただの衆議院議員になるし、元総理の森会長も命が持つか危うい。そして東京都知事の小池さんもその前に選挙があるからその座にいるかどうか分からない。

新型コロナウイルス感染も日本では終息に向かいつつあり今夏開催でも間に合いそうだが、世界の現状を考えると7月開催はもう100パーセント不可能だ。

それやこれや考えると2年後よりは1年後というのが一番現実的だろう(ただし春か秋にやってくれよ)。

「東北復興」を開催の意義に掲げた今度の東京オリンピックだったわけで、1年後ならまだまだ東北は「復興途上」だから、おおいに名分は立つ。東北頑張れ!

WHOがパンデミック宣言

2020-03-19 09:50:37 | 災害
1週間前の3月12日、WHOがついにパンデミック宣言を出した新型コロナウイルス感染症は、全世界の150か国に広がり、感染者数が発現地の中国の8万余りを上回った。世界全体では間もなく20万の大台に乗るだろう。

感染による致死率は各国によってばらつきがあり、当の中国では3300人が死亡しているので約4パーセント。ところが中国より5万人も少ない3万2000人のイタリアでは2300人の死者を出しているので7パーセントを超えている。

また最も小さいのがお隣の韓国で、感染者8000人余りに対して60人余りだから致死率は0.75パーセントでしかない。

日本はクルーズ船ダイアモンド・プリンセス号内での感染者を除く国内感染者数は850人ほどだが、34人の死者を出しているので致死率4パーセントと、中国のそれとほぼ変わらない。これが平均というところだろうか。

韓国の致死率が飛びぬけて低いのは、PCR検査が徹底していて感染者の発見数が多いからだという。

向こうは当初から一日当たり1万人規模で監査を行っており、対する日本は最近やっと5000人規模になったというが、初期段階の検査体制の不備は免れず、検査数そのものが少なかったので、陽性者がこれまでは850人くらいしか見つかっていなかった――というべきだろう。

検査数が飛躍的に高まれば陽性者数もそれなりに増えるはずだ。

鹿児島では昨日の段階で193名を検査したがすべて陰性だったという。この193という検査数が多いのか少ないのか他県と比べようがないのだが、やはり少ない気がする。検査数がこの10倍に増えれば必ず見つかりそうな気がするが、それでも鹿児島は今のところ感染者の無い8県の一つだ。

九州では3、4日前までは鹿児島と長崎、佐賀が無感染だったのだが、それぞれ発見が相次ぎ、ついに九州では鹿児島だけになり、全国では現在、他に島根・鳥取・岡山・富山・山形・岩手・青森だけということになった。

鹿児島にはダイアモンドプリンセス号が停泊し、乗客が4ルートの遊覧バスで観光に出ているのに、またおそらくタクシーを使って個人客が市内を巡ったであろうはずなのに、関係者は誰も感染していない。不思議なことである。

もう一つ不思議なのが沖縄だ。沖縄では2月の半ばにタクシー運転手が件のプリンセス号の乗客を乗せたのが原因で初の感染者となり、ついで同じくタクシー運転手が罹り、同じころに別の男性が罹患しているが、この3名のままちょうどひと月の間、感染者が増えていないのである。

ダイアモンドプリンセスにかかわらず、沖縄では恒常的に中国本土からの観光客が多いはずなのに無感染なのだが、これは北海道とは全く対照的である。

北海道は1月下旬から雪まつりが開催されており、これを目当てにわんさかと春節休暇の中国人が訪れていた。スキー場も人気があって足を延ばす中国人も多かったのだろう、スキー場のゲレンデ以外では寒さのため密室化しており、同じころにやって来ていた道産子が多く感染したようだ。

中に小学生の感染者が2名も出たので、これが北海道知事の「緊急事態宣言」による小中学校の休校の決め手になった。(※この3日後に政府も全国規模での休校措置を宣言した。)

沖縄で感染者が最初に発見された時期と北海道で報告された時期とはほぼ変わらなかったのにその後の足取りは全く違うものになった。両者の極端な差を考えると、最も大きな違いを生んだ原因は「密閉された空間における飛沫感染」だろうか。

最近、政府(文科省・厚生省)は休校措置による自宅待機に関して、「密集を避けるのであれば、公園などに出て適度な運動するのは構わない」という見解を発表したが、遅きに失したきらいがある。

カラオケルームやグラウンドゴルフ場では大人がいつもと変わらずがやがやと遊んでいるのに子供たちはダメというのはおかしいではないか。

『パラサイト―半地下の家族―』を観る

2020-03-16 10:01:42 | 日記
カンヌ映画祭とアカデミー賞の最高賞を獲得した韓国映画『パラサイト―半地下の家族―』を観た。

鹿屋市のリナシティで、1月の半ばくらいからか、トイレに用足しに入ると男子トイレの真ん前の壁にポスターが貼ってあったので興味はあったのだが、いずれと思っているうちに今度はアメリカのアカデミー賞の何部門かを独占したというので、早目に観ることにした。

リナシティの3階にあるリナシアターに足を運ぶと、一日4回上演するという中で13時開演という真昼間のせいか、観客は自分以外に6名ほどが満席で70あるという観覧席の思い思いの場所にパラパラと腰を下ろしているだけだった。

若い頃、映画を観る方ではなかったので、往年の全盛期の混雑ぶりとは比べられないが、それでもヒットした映画があった時に繁華街の映画館の前に長蛇の列ができたりしていたのは知っている。

映画上映での興行料支払いがどのくらいなのかは知る由もないが、リナシアターは半官半民なので観客動員数一日二十名でも何とかやって行けるのだろう。過疎が進んで映画館が一軒もなくなった町に住む身にはありがたいシステムだ。

10名に満たない観客なら映画館という密閉された場所でも「濃厚接触」の可能性は極めて低く、したがって新型コロナウイルス感染の危険性も著しく低いはずだ――などと思っているうちに映画が始まった。

パラサイトが「寄生・寄生虫」だとは知っていたが、「半地下」というのは見当がつかなかった。最初の画面から飛び込んできたのは確かに窓の半分の高さに道路が見える住まいに暮らすキム一家だった。

全員が職を持たず(主人公は浪人男子学生。父母と妹の4人家族)、内職の宅配ピザのケース組み立てをしている。そこへ主人公の友人で一流大学に入っているのが訪ねてきて、友人が今やっているセレブの家の女子高校生の家庭教師の代役を依頼する。友人はアメリカへ2年ほど留学するという。

一流大学の在学証明書を偽造して持参し、そのセレブの家「パク家」に主人公がうまく雇われたところから「パラサイト」が始まる。

パク家の主人は社長で、世界的な建築家が建てたという二階建ての豪邸を購入してまさにセレブな生活をしている。素直この上ない奥さんと高校生の娘そして小学校の問題児だが絵の上手な息子の4人家族。さらに世界的建築家が住んでいた時からの家政婦が一人。

突飛な絵を描く息子を心配しつつも絵の才能を伸ばすため絵の家庭教師を探していると知った主人公は、妹を「絵画療法指導士」に仕立ててパク家に連れてくる。素直な奥さんはすぐに受け入れる。

次は社長のお抱え運転手を色仕掛けで問題を起こして社長の怒りを買わせ、まんまと解雇させ、その後任に運転歴20年のベテラン運転手と吹聴して父親を滑り込ませる。

最後の仕上げのパラサイトが母で、前の建築家の代からいるという住み込みの家政婦が「桃のアレルギー」だと知ったうえで、わざと桃の皮についているうぶ毛を削って集め、家政婦の首筋に背後からそっとまき散らすことで激しい咳を誘発させ、彼女が口を押えてゴミ箱に捨てたナプキンに赤インクをにじませる。

「家政婦は結核ではないか」とその「血の色に滲んだナプキン」を奥さんに示して信用させ、ついに家政婦を解雇させることに成功する。そしてその家政婦に代わって主人公の母が新たな家政婦になる。

ここまでの展開は非常に面白い。四人が四人ともそれぞれの騙し方で雇用されていくという筋書きには予測がつかない面白さがあった。

このまま「高級な手当」で4人がパク一家を騙しつつ何食わぬ顔で暮らして(パラサイトして)いけばよかったのだが、パク一家がキャンプに行くと言って家を空けた時から話はある意味お決まりのコースをたどる。

パク家の高級ワインやブランデーを勝手に飲みながらのキム一家の宴会の最中に、辞めたはずの家政婦が「忘れ物をした」とやって来る。何とこの家には地下室があり、そこに事業に失敗した夫が借金取りから逃れるため住んでいるという。(※豪邸には必ず北朝鮮の核攻撃に備えて地下室があるのと、家政婦に言わせている。)

当然二つのパラサイトチームが並び立つわけがなく、いさかいが始まるが、キャンプ地が豪雨のため早めに切り上げて帰って来たという奥さんの連絡で、一応は休戦となる。

翌日は上天気で、知人たちを中庭に呼び、キャンプ地でできなかった息子の誕生パーティが開始された。その賑わいの中、地下室にいた家政婦の夫が乱入し手にしていた出刃包丁で主人公の妹を刺殺し、今度は主人公の母親がその夫をバーベキューの串で刺し殺す。最後に主人公の父親が、パク家の主パク社長をナイフで殺害する。

パラサイト同士の殺害事件は相殺されたが、パク社長の下手人である主人公の父親は行方知れずとなった。しかし主人公は父親があの家政婦の夫が潜んでいた地下室にもぐり込んだことを外灯を利用したモールス信号で知った。

殺されたパク社長一家が出て行った後の住人に気付かれないよう、地下室からそっと出ては食物をあさっている姿を想像しつつ、主人公は最後にこうつぶやく。

「俺が金持ちになって豪邸を買うから、それまで・・・」

最後はブラックユーモアの類だろう。半地下の住人が今度は本当の地下室の住人になったわけなのだから。

パラサイトしていく前半もユーモラスな場面が多く、見どころはむしろそっちではないだろうか。

また、パーティ会場に男が乱入してから次々に起こる殺傷の場面は実にリアルで、ここがよく日本の「映倫」をパスしたなと思ったが・・・。


ー閑話休題―
パラサイトと言えば、今全世界で流行の新型コロナウイルスも人へのパラサイトには違いない。ウイルスの中間寄生宿主はコウモリにせよ何にせよある意味共存共栄的な関係にあるのだろうが、人の方はパラサイトされても抗体ができていないのでウイルスが増殖して死に至る。

高齢者が多く亡くなっているが、抗体を作る力いわゆる「免疫力」が低下しているためだろう。人間の「パラサイトシングル」は父母に寄生するらしいが、父母も高齢化したら困り果てるに違いない。