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メキシコの隅っこ
メキシコの遺跡や動物、植物、人や風景などを写真で紹介してます
 



今日は色気も食い気もない、遺跡の話です。
といってもこれは、マヤ遺跡ではなくてアステカの遺跡。

大江健三郎は昔メキシコに半年ほど講師として住んでいたということで、
著作にもそのときの体験と思われるものがあちこちに出てきます。
マリナルコ Malinalco という地名を初めて読んだのは
『人生の親戚』だったような気が。

これは、まり恵さんという女性が息子二人を無惨な事情で失ってからの
フリーダ・カーロを思わせる(ただし苦痛は肉体的より精神的なものですが)困難の末
最後にはメキシコに至るお話ですが、
その中の一節、引用します。

「僕もまたメキシコ滞在中、地形的にもメキシコ・シティーからの位置をいっても、まり恵さんの農場のあるカコヤグヮと似ている、マリナルコという村に出かけたことがある。ドライヴはいったんメキシコ・シティーからそこをかこむ高原に昇り、あらためて降下してゆく道すじのものだった。こちらがあくまで晴れわたっているのと矛盾せず、向うはグレコの絵の空のように悲劇的な嵐が吹き荒れ、そのさらに向うはカラリと晴れている。徹底して広大な空のもと、深い谷から谷へと辿るドライヴは、まさに冥界への下降のような気がした。運転してくれたアルゼンチン人の助手は、--この峠で、いつもプラトンの神話的な異界の道程を思い出す、と話しもしたものだ。」

というわけで、私もシティの知人に連れられて車で行ったわけですが、
なるほど途中のうっそうと茂る針葉樹の水底を抜けるような山道は、迫力でした。

ところで、ここにカコヤグヮという、これは確実に架空であろう地名が出てますが、
これは日本からの移民団が初めて入った、cimaちゃんのアカコヤグアから作った名前でしょうね。

さて、その村マリナルコは、高みから眺めると、確かに



谷底~、という感じです。
ただ、この日はもっとお天気がよかったはずなのに、
現像してもらった写真では空が真っ白にしか出ていなくてすごく残念。

で、この高みは、遺跡マリナルコです。
村をぐるっと半周する感じで行ったところに入り口があり、
移民局の書類を持っていればタダになるはずの日曜だったのに、
日本人5名、ひとりもそれを携帯していなかったという不用意さ。
でも、私たちが声をそろえて、ええ~~っ!? というと、
受付のおじさん、苦笑して、「そんじゃ今回だけ」
とタダで通してくれました。

そこからいやはや、くねくねくねくね、
山道を歩きます。ひたすら歩きます。
しかしさすがに自然が自然のまま残っている地域で、
歩いていても気持ちがいいです。
そこらじゅうの木に、野生のランが咲き誇っていたり。

そしてようやく到達した高みから見下ろす村が、上の写真。
その右手には、巨大なゾウがうずくまったような山。



見ていると、中腹辺りに洞窟があり、人が出入りしてました。
な、何をしてるんだ、あんなところで~~!
財宝でも隠してあるんじゃないか!?
ってのがけっこう現実的なのがメヒコですね。

さて、遺跡のど真ん中にはこんな台座があって



写ってる皆さんごめんなさい、顔見えないから勘弁してね。
写真撮ったのは、同行のカメラマンです。

この台座ピラミッドの正面に、こんな神殿があって、



この藁葺き屋根は、その下の神殿を保護するために作ったものだと思いますが、
中を覗くと、こんなん。



観客が無体なことをしないよう監視してるらしい兄ちゃんが、
ワシとオセロットだと言うんですが、
同行の友人は、「え~、あれ、亀でしょ? 亀にしか見えないよ、ほら、亀でしょ?」
うーん、よくわかりませんが。

ところでさっき、公式サイトを見つけまして。
こちらのページに遺跡案内がありますが、
この内部をちゃんと中から映したのがあります。
一番奥の真ん中のがオセロットの頭で、
その両端にワシの頭、
そして中央の、友人が亀だ!と主張したのも、こうやって見ると
確かに、平べったくなったワシのようです。



マリナルコの写真、他にもあったように思うんですが、
今のところ見つかりません。
めぼしいのが出てきたら、またアップしますね。

で、帰りにはマリナルコの郊外にあるレストランに寄りました。



ここは、連れていってくれた知り合い(もともとレストランをしていた人)が、
ここのシェフに和食の手ほどきをしたという曰くつきの、
上品な静かなレストランです。

そのシェフのお父さんというのが、
東ドイツ人で、日本文学研究者で、アメリカに亡命して、
さらにメキシコに来て、ミスインディオの美しい女性と結婚した、
という複雑な経歴の持ち主でして、
有名人だから写真載せちゃいますが、



なぜ有名人かというと、これまた大江健三郎の
『同時代ゲーム』に登場するから。
まあ名前は変えてありますし、描かれている状況も、
実際にはどこまで本当に起こったことかはわかりません。
書かれているのが本当だとすると、大江はこの遺跡で
虫歯を抜こうとして石斧を口に突っ込んで血を噴き、
このドイツ人はじめ、友人たちを愕然とさせたことになってますし、
またこの穏やかな笑みを浮かべるレストランシェフ(次男)の兄貴は
当時とんでもない悪がきで、大江に食べかけのマンゴーをぶつけたことになり、
またこの年老いたドイツ人はその大騒ぎに堪忍袋の緒を切らして、
ドイツ語で罵り喚いて屋敷を飛び出したそうです……

ですが、とりあえず私が知りえた情報では、
『同時代ゲーム』に書かれているこまごまとした事柄に嘘はほとんどないです。
興味のある人はぜひ読んでみてください。
冒頭部第一章に、かなり入り組んだ形ではありますが、
いろいろと書かれてます。

で、このアルフレート(作中の仮名)さんも、ご自分でおっしゃってました、
『同時代ゲーム』に出演していると。
日本文学の研究者なんですから、当然ご存知ですわな~。
あ、ちなみに、私は少しだけドイツ語も話してもらいましたが、
日本語、やや堅苦しいながらも、やはり達者です。

マリナルコの遺跡もですが、こちらの出会いも印象的な一日でした。
もう何年も前になりますが。
このレストラン、まだあるのかな~。
誰か行くチャンスがあったらぜひどうぞ。

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コメント
 
 
 
亀鷲 (忍者)
2006-07-20 11:16:19
亀もどき鷲を広場に出しました
 
 
 
やっぱり亀に似てますね ()
2006-07-21 07:13:03
>忍者さん

うーむ、何だかそちらの写真、

私より高いところから撮ったように見えますが。

当時は別の建物でもあったんでしょうか?

神殿内部もきちんと撮っておられますね。

なるほど、その角度だと、亀に見えたものも、ちゃんとワシだとわかります。



ちなみに、『同時代ゲーム』ではやっぱり「亀」という記述があって、

大江氏も誤解していた模様です。

ジャガーは、公式サイトではオセロットと書いてますね。

監視の兄ちゃんもそう言っていたような気がします。

ジャガーかピューマじゃないの?と同行者が訊ねてました。

いずれにしても、マリナルコはメキシコではやや特殊な遺跡のようですね。
 
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