140億年の孤独

日々感じたこと、考えたことを記録したものです。

風の又三郎

2013-03-30 00:05:05 | 宮沢賢治
新潮文庫の宮沢賢治「風の又三郎」を読んだ。以下に示す短編が入っている。
やまなし・貝の火・蜘蛛となめくじと狸・ツェねずみ・クンねずみ・蛙のゴム靴
二十六夜・雁の童子・十月の末・フランドン農学校の豚・虔十公園林・谷
鳥をとるやなぎ・祭の晩・グスコーブドリの伝記・風の又三郎

解説者によると飢饉に襲われた世界を出発点としているところは同じだが、
「グスコーブドリの伝記」は「蜘蛛となめくじと狸」のはるかな延長上に位置する
作品ということである。
私は「グスコーブドリの伝記」もよいけど「蜘蛛となめくじと狸」もお気に入りだ。
「さて蜘蛛はとけて流れ、なめくじはペロリとやられ、そして狸は病気にかかりました」
なんて書いてある。「ペロリとやられ」というところが良い。

どういうわけか今まで宮沢賢治の作品に入っていくことができなかったが
不思議なことに今回は、すっと入っていくことができた。何事もタイミングというものがあるらしい。
それが理解できるまで成熟していない場合には入っていけない。
何時、何に対して成熟しているかは人によって違うのだと思う。
それに何か難解なこと、高尚なことがわかるようになったというわけでもない。
ただそこに書いてあることを読んでおもしろいと思う。
それだけのことだ。