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『孟子』巻第十四盡心章句下 二百四十八節、二百四十九節、二百五十節

2019-10-12 10:16:37 | 四書解読
二百四十八節

孟子は言った。
「墨子の誤りを知った者は、必ず楊朱の学派に入るが、その誤りを悟った者は、必ず儒家の門下にやってくる。そうすれば、それを素直に受け入れてやればよいだけの事である。ところが今の楊・墨の学派と論争する者は、逃げ出した豚を捕らえようと追いかけまわしているような態度であって、囲いの中に入ってしまえばそれでよいのに、さらに逃げ出さないように足を縛りつけるようなことをする。それはかえってよくないことだ。」

孟子曰、逃墨必歸於楊、逃楊必歸於儒。歸斯受之而已矣。今之與楊墨辯者、如追放豚。既入其苙、又從而招之。

孟子曰く、「墨を逃るれば必ず楊に歸し、楊を逃るれば必ず儒に歸す。歸すれば斯に之を受けんのみ。今の楊・墨と辯ずる者は、放豚を追うが如し。既に其の苙に入れば、又從って之を招ぐ。」

<語釈>
○「墨・楊・儒」、服部宇之吉氏云う、「墨翟は兼愛を説いて親疎の別を立てず、楊朱は愛身利己を主義とし、儒道は親を親とし尊を尊とし、天子より庶人に至る迄禮に等級あり。」○「放豚」、逃げ出した豚。○「苙」、趙注:「苙」(リュウ)は、蘭なり。蘭とは、おり、囲いなどの意。○「招」、朱注:其の足を羈ぐなり。「羈」は、つなぐの意なので、「招」は“つなぐ”と訓ず。

<解説>
帰依した者が又逃げださないように、無理矢理につなぎ止めようとすることは、反って逆の結果を招くことになるので、ありのままに受け入れるのがよいということである。

二百四十九節
孟子は言った。
「民から取り立てる税はには、布や糸を納めさせる布縷の税、穀物を納めさせる粟米の税、労力を提供させる力役の税の三つがある。君子が政治を行う場合は、時宜にかなった税を一つ取り立て、他の二つは猶予する。もし二つの税を同時に取り立てたら、民に餓死者がでるし、三つの税を同時に取り立てたら、一家離散ということになる。」

孟子曰、有布縷之征粟米之征力役之征。君子用其一、緩其二。用其二而民有殍。用其三而父子離。

孟子曰く、「布縷の征・粟米の征・力役の征有り。君子は其の一を用いて、其の二を緩くす。其の二を用うれば、民に殍有り。其の三を用うれば、父子離る。」

<語釈>
○「布縷之征」、趙注:「征」は、賦なり。布は軍卒以て衣を為り、縷(ル)は鎧甲を縫うの縷(いと)なり。○「殍」、音はフ、餓死者のこと。

<解説>
この三つの税は後世の調・租・庸に該当するものであるが、この時代、このような税制が整えられていたかどうかは分からない。趙岐は、「國に軍旅の事有れば、則ち此の三賦を横に興すなり。」と述べ、臨時の税で、民の負担が増加したものとみている。

二百五十節
孟子は言った。
「諸侯にとっての宝は三つある。それは土地・人民・政事である。宝玉の類を宝だと思っている者は、必ず禍がやってきて国を亡ぼすことになるだろう。」

孟子曰、諸侯之寶三。土地人民政事。寶珠玉者、殃必及身。

孟子曰く、「諸侯の寶は三あり。土地・人民・政事なり。珠玉を寶とする者は、殃必ず身に及ぶ。」

<解説>
国家理論の要素を明らかにした節である。