日本庭園こぼれ話

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伊豆に春の風物詩と歴史を訪ねる(1)・稲取のつるし雛(改編)

2022-01-17 | 歴史を語る町並み

伊豆の東海岸を南に下った伊豆稲取。稲取は昔から、東伊豆屈指の漁港として知られていましたが、近年「雛のつるし飾りまつり」(今年は、1月20日~3月31日とのこと)が、春の観光の目玉になっています。

これは桃の節句の雛壇の両側に、ハギレで作った小さなぬいぐるみを吊す風習で、この地に江戸時代から伝わるものとか。現在では、本家の雛人形よりも、こちらの「つるし飾り」の方が有名になっていますが・・・。

街並みをぶらぶら歩き始めると、通りに面した商店の店先や、ショーウインドウなどにも、様々な「つるし飾り」がぶら下がっていて、早速、目を楽しませてくれるのでした。(下の写真)

雛のつるし飾りは、江戸時代、豪華な雛飾りを買える家は少なく、代わりに、手作りの雛人形を飾ったのが始まりで、次第に和裁工芸細工に発展していったということ。紅白の竹ひごの輪に5本の赤い糸を吊し、その糸にいろいろな形の飾りが、ぶら下げてあります。

 

色とりどりの布で作った綿入れの飾りは、人形、果物、動物、遊び道具など、形が実に多彩。それぞれに、なるほどと、頷ける謂われがあります。たとえば、桃の実には「霊力があるとされ、邪気、悪霊を退治」し、猿は「厄が去る」。赤い目のうさぎは「呪力を持ち、神様のおつかい」。

 

(上: 町中に可愛い「雛のつるし飾り」がお目見えする稲取の春)

這い子人形は「這えば立て、立てば歩めの親心」。唐辛子は「虫除けの効力があるところから、娘に虫がつかないように」、柿は「滋養があり、長寿の木」。巾着は「わが子がお金に不自由しないように」などなど、ユーモラスな中にも、一つ一つに願いを込めた、子を思う親の愛情が窺われます。

いくつかあるメイン会場は、とにかく、すごい人出。観光バスも次々にやって来ます。その人気の秘密は、愛らしさと、手作り品のぬくもり感なのでしょうか。

まつりの期間中は、メイン会場の他にも、町のあちこちの商店や民家で、幟を目印に、つるし飾りが見学できるようになっていて、「まちおこし」としても、成果をあげているように思われるのでした。

そんな中、つるし飾りを公開していた一軒の土産物店の玄関の両脇に、2つの巨石が置かれているのを発見。「畳石」と名付けられた巨大な切石です。

(上: 民家の庭先にあるのは、江戸城修築用に切り出された石)

説明を読むと、江戸時代の初め、徳川幕府を開いた家康と秀忠が、全国の諸大名に命じ、江戸城の石垣用の石材を集めさせた際、江戸に近く、良質の石材が確保できる伊豆からは、多くの加工石が、石積み船で運び出されたということ。

その運び残しの石材の一部がこの巨石。稲取の歴史の一端を物語る石です。

このお宅では、「畳石」をかたどった和菓子「きんつば」が販売されているそうです(雛まつりの期間限定)。後で知ったので、残念!

 

* 本文は最新情報ではありません。ご訪問の際は、公式HPなどでご確認ください。

 

 

 


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