前回、毛越寺庭園をご紹介したら、『作庭記』について触れたくなりました。
『作庭記』は、日本最古の造園秘伝書で、平安時代後期に書かれたといわれ、著者については諸説ありますが、関白・藤原頼通の子、橘俊綱というのが一般的な説です。
ここには、作庭の心得から、細部の技法のノウハウまで、庭造りに関する必要事項がすべてが網羅され、現在に至るまで、最高の造園書の地位を保っています。
それは「石を立てる(庭を造る)には、地形や池の形に従って、自然風景を思い出しながら立てるべきである」と始まっています。
『作庭記』の語る手法に則ったと思われる名園は数多く、毛越寺庭園にもその記述に一致する景色が随所に見られます。例えば、リアス式海岸を思わせる「荒磯」の景。
『作庭記』には、「荒磯は岸のほとりには不恰好に尖った幾つかの石を立て、水際を基礎として立ち上がった石を、たくさん沖の方へ立て続け、その他に離れ出た石も少々あるのがよい」とあります。その様子が、上の写真で、見ていただけるでしょうか?
上は遣水、つまり流れの景です。写真ではよく分かりませんが、護岸や流れの中の石の位置や役割など、『作庭記』の語る手法が再現されています。
そして海に望んだ断崖絶壁の景。自然風景から着想を得よ、という『作庭記』の精神が、見事に表れています。
このように、毛越寺庭園を拝観すると、『作庭記』が編まれて間もない時期に、都から遠く離れた奥州の地にまで、すでにその存在が伝わっていたらしいことに驚かされます。
※文中、『作庭記』の現代語訳は【NHKブックス(カラー版)、「作庭記」の世界、森蘊著】を参照
知りませんでした。貴重な本の紹介、
ありがとうございました。
話はかわりますが、称名寺の庭園は、お寺の
庭園としては小さいですが、なかなかいいと
私は思います。ぜひ、行ってみて下さい。
『作庭記』は、現代語訳や図解入りの
ものも出版されているので、機会が
あったら、読んでみてください。
そして私も、称名寺のことを思い出させて
くださって、ありがとうございます。
暖かくなったら拝観に行こうと思って
います。