映画日記(ためし)

映画の印象を、悪い、ふつう、よい、の三段階で表現したいと思います。
コメントのところをクリックするとコメントできます。

『転々』

2008年05月30日 | Weblog
よい

三木聡 監督
オダギリジョー、小泉今日子、吉高由里子、岩松了、ふせえり、松重豊、広田レオナ、津村鷹志、宮田早苗、石井苗子、横山あきお、平岩紙、ブラボー小松、麻生久美子、笹野高史、鷲尾真知子、石原良純、才藤了介、風見章子、岸部一徳、三浦友和 出演

大学8年生の文哉は、家族もなく、孤独で自堕落な生活を送っていた。いつの間にか作った借金は84万円。返済期限まで残すところ3日という時に、借金取りの男、福原がやってきて、吉祥寺から霞ヶ関まで歩くのに付き合ったら、借金をチャラにすると提案される。返すあてのない文哉は福原の条件を呑むしかなかった。井の頭公園の橋から、男二人の奇妙な旅が始まった。調布の飛行場に着いた時、福原は妻を殺したことを告白する…。

三浦友和がよい。『松ヶ根乱射事件』の彼もすばらしかったが、それにつぐよさである。
散歩の魅力は出ているが、東京の距離感がでたらめなのですこしとまどう。なにせ初日が井の頭公園(東京の西側)だと思ったら、翌日はオーギョーチーの店(行ったことはないが、たしか東京の東側のはずである)に行っているのだ。
音声も細かいところまで気を使われていて、ところどころに猫の鳴き声や石膏仮面(月光ではない !)が着地する直前にパリンという音が入れられている。

三浦友和がわざとらしく具合の悪さを強調しているので、想像通りのエンディングだったらいやだなぁ~と思っていたが、見事に裏切られてしまった。

『サイボーグ2』

2008年05月30日 | Weblog
ふつう

マイケル・シュローダー 監督
アンジェリーナ・ジョリー、イライアス・コティーズ、ビリー・ドラゴ、ジャック・パランス、カレン・シェパード、アレン・ガーフィールド、リック・ヤン 出演

ライバル会社を蹴落とすために自爆装置を内蔵した高性能サイボーグが開発された。それは外見も感情も人間そのものであった。

アンジェリーナ・ジョリーのメジャー初主演作らしい。おっぱいも見られる。

前半は『ブレードランナー』の二番煎じ風でそこそこ楽しめるが、後半がよくない。もったいつけていた「口だけ男」の正体もなんで前半あれだけかくれていたのかわからない。船上での戦いはとってつけた感じがありすぎる。

『SAMURAI』

2008年05月24日 | Weblog
よい

ジョルダーノ・ジェデルリーニ 監督
倉田保昭、シリル・ムラーニ、メイ・アンリー、サイード・セラーノ、ダラ・インド・オーム 出演

侍の時代に四方を敵に囲まれたフジワラの一族の武将が、いくさの悪魔コデニを地獄から呼び出した。翌朝、コデニを地獄にもどそうとした武将は、コデニに戻る気がないことを知る。

B級アクションちょびっとSF風味。

アクションシーンが引き締まっているので、最後まで楽しむことができる。

登場人物は多いのだが、主人公が不在というのがよくない。
倉田保昭先生もその娘役もその恋人役も見せ場はあるのだが、最後までもたせる魅力に欠ける。強いていえばコデニが主人公になりえたのかもしれないが、その割には残酷さが足りない。

処女懐胎シーンでパンツをはいているコデニ、マイクロプロセッサのすばらしい能力、なぜゲームと関連があるのかなど、つっこみどころ満載だが、笑って楽しもう。

『ラストワルツ』

2008年05月23日 | Weblog
よい

マーティン・スコセッシ 監督
ザ・バンド(リック・ダンコ、レボン・ヘルム、ガース・ハドソン、リチャード・マニュエル、ロビー・ロバートソン)、ボブ・ディラン、ニール・ヤング、ニール・ダイアモンド、ジョニ・ミッチェル、ポール・バターフィールド、マディ・ウォーターズ、 エリック・クラプトン、ヴァン・モリソン、リンゴ・スター、ロン・ウッド 出演

60年代のロック・シーンに足跡を残したグループ『ザ・バンド』の16年間の総決算ともいえる、さよならコンサートをドキュメント仕立に捉える。1976 年11月25日、感謝祭にわく西海岸サンフランシスコにおいて、一大コンサートが開かれた。ロック・グループのザ・バンドが、今後一切コンサート活動は行なわないという名目で開かれた『ラスト・ワルツ』がそれだ。

世代的にはわたしよりもひとつ上だと思うが、いいものはいい。
音楽に詳しくないが、上品な音楽を楽しむことができる。
マーティン・スコセッシの映画作品としてじっくり観るのもよいが、気楽にBGM代わりに流しっぱなしにしておいてもいい。

今となってはアイツはイヤなやつだったとかノイズも聞こえてくるが、ジャンルもあまり気にせずに音楽映画として楽しもう。

DVDのほうが当然音がいい。

『プロヴァンスの贈りもの』

2008年05月21日 | Weblog
ふつう

リドリー・スコット 監督
ラッセル・クロウ、アルバート・フィニー、フレディ・ハイモア、マリオン・コティヤール、アビー・コーニッシュ、ディディエ・ブルドン、トム・ホランダー、イザベル・カンディエ、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ケネス・クラナム、アーチー・パンジャビ、レイフ・スポール、リチャード・コイル 出演

ロンドンで剛腕トレーダーとして名を馳せ、リッチなシングル・ライフを送るマックスのもとに南仏プロヴァンスに住むヘンリーおじさんの訃報が届く。子どもの頃、夏休みを共に過ごしたヘンリーが教えてくれた生きる知恵があればこそ、今の成功があるのだったが、ここ10年はすっかり疎遠になっていた。それでも一番近い親戚であるマックスがシャトーとブドウ園を相続することになり、20数年ぶりに懐かしい土地を訪れるのだった…。

デート映画もしくは、雰囲気を楽しむムード映画としては合格だが、わたしはこんなものをリドリー・スコットに求めていない。

『ブレードランナー』、『エイリアン』、『ザ・ハンガー』シリーズから進化したリドリー・スコットを求めているのだ。それはSFでなくてもかまわないし、リドリー・スコット本人でなくてもかまわない。しかし、だからといってこんな作品を彼が撮ったのかと思うと、失意の念は隠せない。

色男役のラッセル・クロウが恋に落ちる理由が弱い。気の強い女性に惹かれたというのならば、株トレードの助手役の女性のキャラクターはアレンジすべきだ。
アビー・コーニッシュの突然の背中の日焼けはなんだ。唐突過ぎる。

ラッセル・クロウはともかく、ほかのキャストのスケジューリングがキツキツだったような印象を受けた。

『ゲットー・ボーイズ』

2008年05月16日 | Weblog
わるい

ローレンス・ペイジ 監督
ローレンス・ペイジ、レッドマン、モブ・ディープ、ロスト・ボーイズ、ヨシップ・クーハン 出演

幼い頃に両親を亡くし、スラム街で仲間達とドラッグの売買で生計を立てていた黒人の青年フーティー。極悪非道なギャングの道へと足を踏み入れていく彼の物語を描く。

暇なときにアクションでがんがん銃を撃つようなやつを……、と思って借りたのだがひどすぎた。
人気ラッパーが出演しているらしいのだが、音がよくない。話はありがち。意外な展開はない。演技もダメ。
ラップ好きの人以外はほかの作品を探したほうがいいだろう。

『追悼のざわめき』

2008年05月16日 | Weblog
ふつう

松井良彦 監督
佐野和宏、隅井士門、村田友紀子、大須賀勇、日野利彦、白藤茜、皆渡静男、高瀬泰司 、仲井まみ子 出演

誠は仕事もなくブラブラしていたが、ある日矮人の兄妹に雇われて下水道の清掃をすることになった。仕事ぶりは真面目だが、彼はマネキンを菜穂子と名づけ、若い女性を殺してはその肉を人形に埋め込んでいった。

性衝動のダークサイドをクローズアップし、それを2時間半の作品にしたような印象。
しかし退屈で、おもしろくなかった。

1988年の作品で、今でもある(おそらくDVD作成時にできたのだろう)公式サイトを見ると作成時の事情が書いてあるが、素人の言い訳っぽくてつらかった。おそらくまともなプロデューサーがいなかったのであろう。なんたって見切り発車でクランクインしたのだから、結果を予想できる。

作品にもどると、若い兄弟、こびとの兄妹、誠、大須賀勇演じる人形の股間だけをひきずる人がおもな登場人物だが、性格がわかりやすいのはこびとの妹くらいだ。

「火葬」シーンは迫力があったが、最後の検証シーンがはいったことでプラマイゼロ。

音楽はけっこうよかった。

『ノーカントリー』

2008年05月14日 | Weblog
よい

ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン 監督
トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ウディ・ハレルソン、ケリー・マクドナルド、ギャレット・ディラハント、テス・ハーパー、バリー・コービン、スティーヴン・ルート、ロジャー・ボイス、ベス・グラント、アナ・リーダー 出演

メキシコ国境に近い砂漠でハンティング中に、偶然、死体の山に出くわしたルウェリン・モスは、大量のヘロインと現金200万ドルが残されているのを見つける。危険を承知で大金を奪ったモスに、すぐさま追っ手がかかる。必死の逃亡を図るモスを確実に追い詰めて行くのは非情の殺し屋アントン・シガー。そしてもう一人、厄介な事件に巻き込まれたモスを救うべく老保安官エド・トム・ベルが追跡を始めるのだった。

原題は『No Country for Old Men』。老人の住むべき国はない、という意味。

ひとつの作品で重層的な世界を描くのが得意なコーエン兄弟らしく、裏世界の金を奪った男と殺し屋の話、個人・世代のルールの話、そしてそれらを運命と死が結びつける。

以上すべてに関係してくる登場人物が、強烈な個性の殺し屋役のハビエル・バルデムで、彼が主人公と考えていいだろう(アカデミー賞では助演男優賞だが)。トミー・リー・ジョーンズは狂言回しでしかない。

運命と死とは、金であり、水であり、殺し屋であり、コイントスである。

金を奪った男と殺し屋だけに着目してしまうと肩透かしをくらってしまう人もいるかもしれないが、原題からもわかるようにそれだけがこの作品の主題ではないのだ。

夢の話が納得できない人は、

ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20080320

が参考になるだろう。
あそこは死を思っているんだな、とわかれば日本人としてはいいのではないか。

嫁さん役のケリー・マクドナルドもよかった。

『街のあかり』

2008年05月12日 | Weblog
ふつう

アキ・カウリスマキ 監督
ヤンネ・フーティアイネン、マリア・ヤンヴェンヘルミ、マリア・ヘイスカネン、イルッカ・コイヴラ、カティ・オウティネン 出演

警備会社で働く男コイスティネンは、その朴訥とした性格から会社の中でも浮いた存在だ。私生活では友人も恋人も家族もいない、孤独な生活を送っている。売店の女性アイラだけがそんな彼を見つめていたが、コイスティネンはその思いに気づく事もなかった。そんな彼に目をつけたギャングがいた。ギャングは自分の情婦ミルヤをコイスティネンのもとに送り、誘惑させる。恋に落ちたコイスティネンは、彼らの犯罪に利用されてしまう。

間とか照明にかなり気を使った作品。
負け犬三部作とか、チャップリン作品とか気にせずに観るように。
頭は悪くはないように見えるが、ぶっきらぼうで不器用なものだから損な目にばかりあう男の話。

最後までぶっきらぼうな性格は変わらないが、あのエンディングは不要ではないか。あれで希望を提示したと言われてもなぁ。

『バベル』

2008年05月04日 | Weblog
ふつう

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 監督
ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司、菊地凛子、二階堂智、アドリアナ・バラーザ、エル・ファニング、ネイサン・ギャンブル、ブブケ・アイト・エル・カイド、サイード・タルカーニ、ムスタファ・ラシディ、アブデルカデール・バラ、小木茂光、マイケル・ペーニャ、クリフトン・コリンズ・Jr、村田裕子、末松暢茂 出演

壊れかけた夫婦の絆を取り戻すために旅をしているアメリカ人夫婦のリチャードとスーザン。バスで山道を走行中、どこからか放たれた銃弾が、スーザンの肩を撃ち抜く。なんとか医者のいる村までたどり着くが、応急処置がやっと。彼は英語がなかなか通じない村の住人たち、対応が遅いアメリカ政府に苛立ちを露わにするが…。同じころ、東京に住む聴覚に障害を持った女子高生のチエコは、満たされない日々にいら立ちを感じていた…。

冒頭の何かを踏みしめるような音が先行して、そのあと明るくなり乾いた土地を歩くシーンは、これは名作の予感……、と思ったのだが……。

日本人の目から見て、菊地凛子が出てきたときの友人との手話は完全なアメリカのノリであったし、幼くてかわいいこどもふたりを残してあんなところに旅行に行くなよバカ、救急車呼んでるならバスがそこにいる必要性がないだろ二次被害を広げているだけじゃん、と思った。

そして、日本のシーンを全カットしたほうが短くまとまってよかったのではないかと思ってしまった。

メモに関しては、書く時間と書かれた量のバランスが納得いかないが、これまでどういうことがあったのかの真相が書かれていたのだろう。伝わりにくさを主題にしているとはいえ、あれはたしかに伝わりにくい(笑)。

『NEXT-ネクスト-』

2008年05月01日 | Weblog
よい

リー・タマホリ 監督
ニコラス・ケイジ、ジュリアン・ムーア、ジェシカ・ビール、トーマス・クレッチマン、トリー・キトルズ、ピーター・フォーク、ホセ・ズニーガ、ジム・ビーヴァー 出演

「2分先の未来」が見える予知能力を持っている男クリスだが、その能力を隠し、ラスベガスで二流のマジシャンとして目立たないように暮らしていた。そんな彼の能力に気づいたFBI捜査官カリーは、テロリストによるロサンゼルス核攻撃を阻止するため、クリスの協力を得ようと考える。一方、クリスはいつもダイナーで見かける女性リズに密かに恋心を抱き、声をかける機会を狙っていた。自分の「能力」を使い、リズと知り合ったクリスだが、そのことが彼女を事件に巻き込むことになる。

原作がフィリップ・K・ディック、監督が『007/ダイ・アナザー・デイ』のリー・タマホリということで観た。
ディック得意のどれがほんとでどれがうそだかわからない……、という苦悩や哲学的な問題は扱われずに(笑)、観客にどれがほんとでどれが予知したビジョンかを悩ませる。

2分先までしか予知できないのに、彼女に関してだけはかなり先まで知ることができるという反則技を許せるかどうかでこの作品の評価が分かれる。

しかし、作品前半に見せてくれるふたつの逃走劇が気持ちよく痛快で、敵を追い詰めるときもそこそこ楽しめる。

敵であるテロリストとFBIのジュリアン・ムーアの扱いが少々雑だが、アクション映画として観るとおもしろい。